笑顔で朝の占いを読み上げてくのは、今年からアナウンサーになった大坪サンの元・推しメンの…マミリンだ。蟹座の順位とラッキーアイテムが発表されるのを固唾をのんで見守る。 きっと真ちゃんも見てる。 オレも見てる。 オレ達は今日も繋がってる。
2015-07-07 06:30:07(ガチ鬱だから嫌な人は見ない方がいーぜ。苦笑)
「君みたいな若い人に多いんだよね、オーバーワーク」 思いのほか軽い調子で告げられた。ライトボックスに次々とレントゲン写真が貼られてく。 ウソだろ…? あれっ、もしかしてオレ全身ボロボロな感じ? 白黒のモヤモヤのイミはわかんねーけど、痛めた箇所が多いことはわかった。 「あのっ、」
2015-07-07 17:30:08「このままバスケ続けてヘーキっすよね? 秋には大会が控えてて…オレ、スタメンなんすよ」 不安をふり払おうとムリに笑顔を作ったら声がうわずった。 「大丈夫、すぐどうこうなることはないよ」 医者の笑顔にほっと胸を撫で下ろす。 「なーんだ。驚かせないでくださいよ、せんせー」 「ただ、」
2015-07-07 17:35:02「このまま激しい運動を続けていたら危険だ。後遺症が残ることもある」 「……」 「今の調子で続けたら、の話ね。就職して趣味で続ける程度なら全く問題ないよ」 医者はオレの手を取り力強く握った。 「あと半年、部活に励めるようサポートするから心配しないで」 それじゃ全然足りねーっつの!
2015-07-07 17:40:07一応お礼を言って、後ろ手に診察室のドアを閉めた。 ……全然実感湧かねー。え? マジで『高尾のバスケ』大学生編で打ち切りのお知らせ? ウソだろ? プロチームからスカウトの話もきてんだけど。進路とかどーすんの、コレ。つーか、親に何て言お。妹ちゃんには? ……真ちゃんには?
2015-07-07 17:50:19落ち着け。落ち着け。落ち着け! まずは目の前の問題を何とかしねーと。スグそこに真ちゃんがいる。こんなぐちゃぐちゃなままじゃ何も話せねぇ。相談すんのは心の整理ができてからでいい。とりまアイツを心配させねーように自然な笑顔を作る! 頬を両手でバチンと叩いて、待合室へと一歩踏み出した。
2015-07-07 17:55:07目が合った瞬間、長椅子に座っていた緑間が立ち上がった。その拍子に手に持っていたビックリ箱も開く。もちろんオレは吹き出す。 「人を見るなり吹き出すとは失敬なのだよ」 「だって! 真ちゃんバネとシンクロしてw」 肩を掴まれ睨むように目を覗き込まれた。 「それでケガはどうだったのだよ」
2015-07-07 18:00:16「ネンザだって。しばらくはゆっくり休みましょーって。なに真ちゃん、オレが心配でいてもたってもいらんなかった?」 「お前に何かあれば…その、プレイの幅が狭まる。それだけなのだよ」 「へーへー」 OK、いつもどーりツンデレ。真ちゃんはアレで人の心には敏い。ボロを出せばソッコーバレる。
2015-07-07 18:05:02「帰るぞ、高尾」 「部活戻んねーの?」 「問題ない。帰って自主練をするのだよ」 「ははっ。監督また怒るぜ?」 真ちゃんのワガママは今日も健在だ。 高尾、と前を歩く緑間は振り向いた。 「捻挫をしたのだったな」 「おー」 「ならば、今日はオレが運転する。じゃんけんはナシでいいのだよ」
2015-07-07 18:10:09「何今のレアすぎっしょ! 録音しときゃ良かったわ」 「寄りたい場所があるだけなのだよ」 黄瀬に座席蹴られたあの車な。togetter.com/li/579196 真ちゃん大学の入学祝いに買ってもらったんだとー。なのに運転はほとんどオレだし。庶民にはわっかんねーわ。バブルかよ。
2015-07-07 18:15:09_
「人事を尽くしてくるのだよ。付き合え、高尾」 真ちゃんは商店街の前で車を止めた。入り口には大きな笹の葉が飾られてる。その下で買い物帰りの家族連れが短冊を書いていた。そこへ真ちゃんは問答無用で突っ込んでいく。子供ビビってっからw 家族団らんを押しのけ捥ぎ取った短冊に筆を滑らせる。
2015-07-07 18:30:08「なーに書くんだよ?」 「秘密なのだよ」 手元を見ようとすると鉄壁のDFで隠された。 「真ちゃんのケチ!」 なおも覗き込もうとすると、短冊はオレの届かない高い枝へ結ばれた。 「あ。ズリーぞ!」 「ふん」 子供達が羨ましそうに真ちゃんを見上げていた。ちくしょう。オレだって羨ましい。
2015-07-07 18:35:06「高尾、お前も願い事を書くのだよ」 「オレもっ?」 「当然だ」 どーやら尽くす人事にオレも組み込まれてるらしい。こうゆうときはさっさと折れるに限る。 今日は雨。きっと天の川は見えない。織姫と彦星も会えない。この笹に飾られた沢山の願い事はどれも叶わない。 「んじゃっ、」 それなら、
2015-07-07 18:40:05_
「真ちゃん」 授業が終わるなり、真っ直ぐ部室へ向かおうとする緑間を呼び止めた。 「今日はオレ先帰んね」 「…む。何かあるのか」 今日もオレが部活を見学して、その後の自主練まで付き合うと信じて疑ってなかったらしいエース様は露骨に顔を顰めた。 「オ・ン・ナ♡…って言ったらどーする?」
2015-07-10 16:10:05「ジョーダンだって! 母ちゃんと買い物行くだけだしw こんなときくれー親孝行しねーとな」 「高尾の母親ならば十分、立派な女性なのだよ」 「熟女好きな真ちゃんでも流石にウチの母ちゃんはムリだろ!?」 「先日22歳になったオレの射程圏内(シュートレンジ)は、そんな手前ではないのだよ」
2015-07-10 16:15:07_
今日はもっかい親と一緒に病院に行ってきた。 泣き出す母ちゃん見て、医者もオレの場合は死活問題って解ったみたいで急に神妙な面持ちになった。まるで不治の病でも先刻されたみてーだ。ドラマとかでよくあるヤツ。確かに、バスケばっかやってたオレがバスケできなくなったら、死ぬのに近いのかもな。
2015-07-10 17:15:05