意識の低い就活生花宮のED(下)

就職決まった結果がコレかよ。
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意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

「これは第42代アメリカ大統領ビル・クリントンの言葉で云々〜」 ハァ…オレの話クソ長ぇ。コイツらこんな抽象的な作り話よくマジメに聞いてんな。 「他人を出し抜いたり陥れたりするからこそ成功できると世間では信じられているかも知れません。しかし実際には、成功者ほど常に相手を思いやり〜」

2015-10-05 19:05:04
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

「僕は現在フリーランスとして活動しています。助け合いの輪に入っていれば、属する場所を持たずとも恐るるに足りません。手が空いたとなれば、その情報をどこかで聞きつけた誰かが、“これを機に一緒に仕事していただけませんか”と誘ってくれるからです」 「せやな」

2015-10-05 19:10:09
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

!? 暗がりで顔が見えなくても声だけで心臓が跳ねる。 「言うてることは間違ってへん。ただなぁ、」 階段教室の後ろの扉から一段一段声が降りてきた。何?誰?と会場がざわめく。 「嘘吐きはラフプレーの始まりやでー」 今吉さんじゃね?という声がちらほら聞こえてきた。奴もかなりの有名人だ。

2015-10-05 19:15:02
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

舞台から降りて招かれざる客(サプライズゲスト)へ歩み寄る。 「仕事はどうしたんですか」 社畜、と口の動きだけで悪態をついた。ニート、と即座に返ってくる。 「辞めてきたわ」 「…は?」 「これから人間も辞めたる」 細めた目とは裏腹に腹を据えた声だ。 「今日はお前を迎えにきたんや」

2015-10-05 19:20:08
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

ごほん、と今吉はオヤジ臭ぇ咳払いをして背筋を伸ばした。ガラにもなく緊張してんのかゆっくりと口を開く。 「十年間、慎重に選考を重ねました結果、花宮さんを採用させていただきたいと考えています」 頭を下げながら茶封筒を渡された。 「弊社の一員として、二人で一緒に夢を実現しませんか」

2015-10-05 19:25:05
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

ワケわかんねぇ。 突然の公開スカウトに学生達からは歓声が上がる。戸惑いながらも封筒を受け取った。こんなときどんな顔すればいいかわからない。今吉さんと目を合わせると「開けてみ」と促された。恐る恐る封を開く。中には三つ折りに畳まれた1枚の紙が入っていた。 「これ…」 内定通知書だ。

2015-10-05 19:30:11
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

あの頃のように髪を短くした今吉さんは、ニヤリと口の端を吊り上げた。オレにだけ聞こえる小さな声で付け足す。 「弊社はあなたの悪夢を全力で支援します」 「ふはっ…」 ようやく堕ちてくる気になったか。いいぜ、どこまでも引き摺り下ろしてやる。もう泣いても引き返せねぇから覚悟しろよ。

2015-10-05 19:35:05
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

「で? 返事、聞かせてほしいんやけど」 オレの心を読んだのか、今吉さんはしたり顔で片目を開けた。 「御採用いただき、誠にありがとうございます」 とうに諦めていた──

2015-10-05 19:40:05
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

第一志望からの内定だ。 「はい、」 断る理由はない。 「謹んで内定をお受け致します」

2015-10-05 19:45:04
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

「私の持つ能力を最大限に発揮いたしますので、今後とも末永くよろしくお願い申し上げます」 入社を承諾した瞬間、クラッカーの音が鳴り響いた。驚いて音の方を振り返るとニヤついた原の顔があった。それを合図に呼応するように会場が生温かい拍手に包まれる。体中ムシズが走るような妙な感覚だ。

2015-10-05 19:50:07
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

「つか、株式会社ICTって何の会社だよ」 通知書を社長の顔の前でひらひらと振った 「せやなぁ、今吉コンサルティング…」 「登記前に考えとけよ。Tはタクティクスがいいです」 「ま、何でもええわ。お前なら何でもできるやろ」 pic.twitter.com/2YOGytBwj2 「ふはっ、」

2015-10-05 19:55:06
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意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

「バァカ、間違ってますよ。“オレ達”だろ」

2015-10-05 20:00:10

 
 
 

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意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

原作 平林さわこ 『黒子のバスケ -Replace V- ふぞろいのエースたち』 第6G 欺きの"悪童"

2015-10-05 20:10:10