告訴と被害届の違いについて

「警察に動いてもらいたいのであれば被害届で十分」か?
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自家製パンチェッタ @jikapan

てらやさん先生(イケメン・偽装非モテ)の被害届と告訴状の違い、法的効果の違いや実際の扱われ方などがとても有益な内容だと思うので、どなたかてらやさん先生(絶世の美男子・腹の中で非モテを笑ってるんだ…)の一連のツイートをまとめてもらえないかしら。

2016-06-13 12:29:06
てらやさん☆ @terayasan

『警察に動いてもらいたいのであれば被害届で十分です。』 …ほんとだな?動けよ? 警察は本当に捜査怠慢で動いてくれないのか 元警官が明かす「犯罪から安全に身を守る法」 | - 東洋経済オンライン toyokeizai.net/articles/-/121… @Toyokeizaiさんから

2016-06-13 09:24:11
てらやさん☆ @terayasan

①告訴と被害届の違いは,告訴は法律上の手続であり,捜査機関に種々の法律上の義務が発生するのに対し,被害届は法律上の手続ではない,という点にあります。 原則として警察には告訴状を受理する義務があり,受理した告訴を検察官に送付しなければいけないので捜査せずにほったらかしにできません。

2016-06-13 10:40:24
てらやさん☆ @terayasan

②文言上,「送付」と「送致」は異なっていますが,実務上,告訴を受けた警察は被疑者の身柄をとって「送致」するか,検察が起訴・不起訴の判断が可能になる程度になるまでは捜査を遂げた上で「送付」するので,告訴を検察官に「送付」するとは,ほぼ捜査義務があるのと同義になります。

2016-06-13 10:50:00
てらやさん☆ @terayasan

③また,法律ではないものの,犯罪捜査規範67条では,「告訴または告発があつた事件については、特にすみやかに捜査を行うように努める」ことになっています。

2016-06-13 10:55:46
てらやさん☆ @terayasan

④また,告訴事件について,検察官が被告訴人を起訴したり不起訴にしたときは,検察官はこれを告訴人に通知する義務がありますし,不起訴の場合に告訴人から請求があった場合にはその理由を告げる義務があります。

2016-06-13 10:58:02
てらやさん☆ @terayasan

⑤他方,被害届は,法律上の受理義務があるわけではありませんし,捜査するかどうかは警察のさじ加減(犯罪捜査規範には,③記載の告訴,告発について捜査しろという規定はありますが,被害届について同様の規定はありません。)ですし,起訴・不起訴の結果について通知義務もありません。

2016-06-13 11:00:53
てらやさん☆ @terayasan

⑥ただし,逆に言うと,被害届を受理しても警察には特段の法的義務的な負担がかかるわけではないので,警察は気楽に受け付けます。そのため,告訴には受理義務があるくせに,被害届なら受け付けるけど告訴はちょっと受理できない,みたいな逆転現象が起きます。

2016-06-13 11:03:06
てらやさん☆ @terayasan

⑦告訴や被害届というのは「捜査の端緒」と呼ばれるスタート地点です。つまり,一般人が被害にあったので,捜査をして犯人又は事実を明らかにして(処罰して)くれ,というものです。ところが,警察は,告訴の場合,告訴時点でほとんど捜査しなくてもいい程度の証拠が揃ってない限り受理を嫌がります。

2016-06-13 11:07:11
てらやさん☆ @terayasan

⑧それは警察が無駄働きを嫌がるからです(ある意味当たり前ですね)。 告訴受理後,警察としては,人員を使って検察官が起訴・不起訴の判断をすることが可能になる程度には捜査をしなければならないので,「捜査してみても藪の中」は避けたいわけです。そこで,スタート時点で排除するわけです。

2016-06-13 11:11:01
てらやさん☆ @terayasan

⑨もっとも,警察には告訴の受理義務がありますので,正面から告訴の受理を拒否することはできません。ではどうするかというと,告訴状のコピーだけとって告訴状は受け取らず,「ちょっと提出を待ってくれ。」などと言って追い返すのです。

2016-06-13 11:13:42
てらやさん☆ @terayasan

⑩これについては,警察内部たとえば警察庁の通達(H24警察庁丙刑企発第103号等)でも,「告訴・告発の相談をしても、疎明資料が十分にそろっていない、…などの理由により、受理を保留したり、他所属を紹介して受理を拒む例があるなどの苦情が依然として寄せられている。」と問題視されています

2016-06-13 11:19:34
てらやさん☆ @terayasan

⑪つまり,警察が,告訴状を見たけど証拠があまりなさそうだから告訴は受理でない,などと言い出したら,「おいおい,通達を知らんのかね。」と言えばいい「はず」なのです。

2016-06-13 11:29:43
てらやさん☆ @terayasan

⑫逆に言えば,「証拠があるかないか」とか「事件として立件できそうかどうか」は,告訴の受理・不受理の理由にできないわけですから,「今日は告訴状写しで中身を検討させてくれ。」というのも,その場ですぐに告訴を受理しない理由にはならないはずですね。だって,要件さえ確認すればいいんだから。

2016-06-13 11:32:55
てらやさん☆ @terayasan

⑬というわけで,警察が告訴の受理を頑なに回避しようとすることからわかるように,告訴と被害届では警察の動きは全然違います。そうでなければ,告訴しようとする度に警察が「告訴じゃなくて被害届にしてくれ。」なんて言ってくる必要も理由もないはずですもんね。

2016-06-13 11:45:50
てらやさん☆ @terayasan

⑭結局,先の記事の『元警察官』の言う「被害届も告訴も変わらない。」の,その裏に隠れた文意は,「警察がすんなり告訴を受理するようなキレイな筋の事件ならば告訴も被害届も変わらない。」ということですね。

2016-06-13 11:47:57
てらやさん☆ @terayasan

⑮もっとも,以上の建前論は,告訴人にとってのよりどころであってかつ最後に出てくる伝家の宝刀でもあります。本来,告訴人からしてみれば,警察官は「こちら側の味方」のはずですから,味方と無駄に戦って心情的に険悪になってもよろしくない。 その辺りが,実務のさじ加減ですね。

2016-06-13 11:59:22
てらやさん☆ @terayasan

⑯まあ,いずれにせよ,先の記事における『元警察官』の,「弁護士に相談すると告訴を勧めてくるのは告訴状を書くことで報酬を得るためで,被害届で十分」なんてのは,軽々に言って欲しい話じゃないですね。

2016-06-13 12:12:39