恋愛考

6/3〜7/2の成果です。
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未仁真夢 @i_62012

「恋愛が世界の彩度を上げる、というのは本当ですね。私の、或いは私が傷付けた人たちの、流した血の色がよく見えます。 私は、恋愛なんて大嫌いです。恋愛は、人間を消耗させるだけの無駄な行為です。それでも人々が恋愛せざるを得ないのは、ひとえに生殖本能と、承認欲求のせいなのです。」

2016-07-02 02:49:29
未仁真夢 @i_62012

「と、これだけ言いながら、実は私には想い人がおります。今から数えて七年前より、お慕いしている方でございます。そのために私は、私自身と、その方と、それから他の人々とを、鮮やかな朱に染めて生きてきたのです。 その朱の美しさ。許されないと知りながら、私はあの人を愛しているのです。」

2016-07-02 02:51:26
未仁真夢 @i_62012

「嗚呼、私は恋愛が嫌いです。嫌いです。だからこそ、このタッタひとつの恋愛だけを、ただ追い求めていたかったのです。だから、他の人間との接触を、できるだけ避けようとしているのでございます。 私の身はひとつのみ、ひとつの道を征くしかございません。私はあの人を追う道を選びたいのです。」

2016-07-02 02:51:53
未仁真夢 @i_62012

「……さて、我が想い人は、『男女間の友情など成立しえない』というのを口癖にしております。 私はそれに賛同しようしようと思いながらも、脳裏にチラチラと顔を出す『男友達』ないし『悪友』、『糞野郎ども』のことを思っては、『イイヤ男女間の友情は成立する』と訴え続けてまいりました。」

2016-07-02 02:52:14
未仁真夢 @i_62012

「しかし、どうやらその言い訳は、どうしても通用し続けられないもののようでございます。私は気付いてしまいました。『男女間の友情は成立しえない』、そちらがどうやら真実のようだと。 ……いいえ、本来は認めたくないことでございます。悪友の笑顔を思うと胸が苦しゅうございます。」

2016-07-02 02:52:44
未仁真夢 @i_62012

「しかし、タッタひとりでも『男女間の友情』を裏切る者が在るならば、私は私の想い人のために、すべての交友を絶つほかないのでございます。 私の身はひとつのみなのですから。」

2016-07-02 02:53:03
未仁真夢 @i_62012

「……などということを、私はズット考えておりました。すべての交友を打ち払い、想い人のみを愛しぬくことに、私は疑問も不満も感じませぬ。 ……と、言い切ることができずに、私はこうして貴方を呼びつけて、こんな話をしているのですから、全く矛盾の女でございますね。」

2016-07-02 02:53:21
未仁真夢 @i_62012

「ところで、本日は何の話を聞かせてくださるのでしたかしら。」 女は以上のようなことをツラツラと述べ終えると、話し疲れたような溜息とともに口を閉ざしてしまった。僕は自分の頭が重く熱くなっていくのを感じた。女も僕も黙っていた。静寂の中に、僕の用意してきた言葉が沈んでいくのが見えた。

2016-07-02 02:53:38
未仁真夢 @i_62012

――作者はここまで書き上げると、万年筆を机の上へ投げ出した。それから思い直したようにもう一度万年筆を握って、以下のような一文を原稿用紙に書き留めた。 「以上が私の小説作品である。」 そして作者はそれを隠すようにして先ほどまでの原稿用紙の束の下へ押し込むと、漸く吐息を漏らした。

2016-07-02 02:54:20

できればやりたくない「作者の言及」。

未仁真夢 @i_62012

文学部生から見ると陳腐すぎるかな、という感じ。一応、「登場人物のうちの誰に『書き手・ミニマム』を当てはめてもしっくりこない」というテクストのつもりです。

2016-07-02 03:25:26