タイポグラフィーガール
結局プリントを後ろの人に配れないという実務的な理由から、止むなく通常のベタ送りに戻した。游の転入は森沢にとって、クラスの版面が元の秩序を取り戻したという意味でも嬉しいニュースだった。(8話に続く)
2011-02-18 14:03:55「タイポグラフィー・ガール」第8話 「よろしくな。」久美子の右隣の座席に着席すると、游はぶっきらぼうに挨拶した。朝の事件で聞こえた游の独特の訛りは、ネイティブ発音じゃなかったからなのか。。。久美子は今更ながらそんなことに気づく。
2011-02-18 16:00:50「ねえ、ねえ、すでに知り合いだなんて凄いね。後でくわしいこと教えてよ。もしかしてもうフラグ立ったんじゃないー?いいなぁ」楓(かえで)が左の席から冷やかす。 「静かにしなさい。」私は慌てて楓の口を塞ぐ。楓も負けてはいない。「私にもそんな恋愛運、分けて欲しいよ」。
2011-02-18 16:01:47だけど、私は楓が凄くモテることを知っているのだ。ちょくちょく男子が彼女を気にいっているという噂は聞く。ときには男子が「楓をインストールしてみたい」などと破廉恥な事を言っているのも聞いた。裏でうじうじしないで堂々と本人に言えばいいのに。男子って子供。
2011-02-18 16:04:44先日も、隣のクラスのタベヨコ(本名;田部横太 たべよこ・ふとし)に、楓のことを紹介してくれとせがまれた。タベヨコはみんなから頭文字を取ってTB横太と呼ばれている。大相撲中継を見るのが趣味の親父キャラ。恋愛にガツガツしたタイプに見えないのに、そのときは相当食い気味にツメていた。
2011-02-18 16:08:49私も面倒くさくなって「自分で告白したら」とその要望はトルツメしてしまった。とにかくかえでは自分のエレメントの愛らしさをあまり自覚していないタイプだったし、人見知りも激しかった。そう、彼女はオープンタイプではなく、トゥルータイプなのだ。
2011-02-18 16:09:50私達がそんな小さな騒ぎを起こしているところへ森沢の注意が飛んだ。 「おい、お前ら、転校生が来たからってベースライン上がるのも程々にしろよ。」珍しく森沢の冗談が受けたらしく、クラスはどっと沸いた。 神経質のクライアントから帰って来た校正紙のように、私は真っ赤になった。(9話に続く)
2011-02-18 16:10:27