ガントレット事件(国籍不存在確認請求)について

維新の馬場幹事長による二重国籍禁止法案検討のニュースから派生した連続ツイート。 「ガントレット事件」に関する検索で出てくるもの http://law.webcrow.jp/gyouseihou/gyouseihou20.html http://pbs.seesaa.net/article/110854329.html http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1258948637
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ガントレット事件(奥田安弘の著作より要旨引用)

ジョン・オーエン・ガントレットは、明治39年に、エドワード・ガントレットと妻恒子との間に日本でイギリスの子どもとして生まれ、イギリス国籍を取得した。しかし、第二次世界大戦が勃発して、日本とイギリスが戦争状態にあった昭和17年5月頃、日本の帰化を申請し、翌18年2月6日、帰化が認可された。
この帰化の審査にあたっては、イギリスの1914年の国籍法により、他国に帰化した者は、自動的にイギリス国民ではなくなるから、ガントレットは、当時の日本の国籍法7条2項5号における重国籍防止条件を充たしていると考えられたようである。
ところが、イギリスの1903年の判決によると、イギリス国民は「敵国」に帰化することによって、イギリス国籍を失うことはできないとされており、この判決は、1914年法施行後も、判例法として認められていた。そして、ガントレットが帰化を申請した1942年(昭和17年)頃、日本とイギリスは戦争状態にあった。
そこで、ガントレットは、イギリス国籍を失っていなかったのであるから、本件帰化の許可処分は、旧国籍法7条2項5号に違反しており、無効であるとして、日本国籍の不存在確認の訴えを提起した。
東京地裁では敗訴、東京高裁では勝訴であったが、昭和31年7月18日の最高裁大法廷判決は、「その違法が重大且つ明白である場合は、これを法律に当然無効となすべきではない」として、事件を東京高裁に差し戻したのである。この最高裁判決は、重国籍防止条件に違反する帰化の許可が違法であるとしながら、外国の判例まで調べることが、きわめて困難であることに配慮したものであった。


最高裁判決文

もうれつ先生 @discusao

通称:ガントレット事件 国籍不存在確認請求/昭和31年7月18日/最高裁判所大法廷/判決/破棄差戻(東京高等裁判所) courts.go.jp/app/hanrei_jp/… 主文pdf courts.go.jp/app/files/hanr… pic.twitter.com/N1cYiVRApS

2016-09-15 20:04:47
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判決文引用
主文
原判決を破棄する。
本件を東京高等裁判所に差戻す。
理由
上告人指定代理人石井良三、同堀内恒雄の上告理由について。
記録によれば、被上告人の本訴請求の要旨は、被上告人は明治三九年三月一日岡山市において英国人Fの長男として生れ英国籍を取得し爾来引続き日本に居住するうち、昭和一六年一二月八日太平洋戦争の勃発に遇い、その本国である英国と日本とが戦争状態にあつた同一七年五月頃、内務大臣に対し帰化の申請をなし、その翌一八年二月六日これが許可を与えられたものであるが、この許可処分は原判決事実摘示掲記の(一)の(イ)乃至(ホ)の五事由により法律上無効であり被上告人は形式上許可処分あるに拘わらず日本国籍を取得しなかつたのであるから、その日本国籍を有しないことの確認を求めるというのであつて、これに対し原判決は「本件帰化申請並にその許可処分のあつた当時施行されていた国籍法(明治三二年法律六六号、以下旧国籍法という。)七条二項五号の規定によれば、帰化の申請を許可せんとするには、その申請人が無国籍者であるか又は日本の国籍を取得することに因つて自動的に従来そのものの有した外国籍を失うべきことを、必須の条件としている。それは旧国籍法を貫く二重国籍禁止の精神に基ずくものであつて、この条件の充足は帰化申請に対する許可処分の有効要件をなすものと解するのを相当とする。
従つてかゝる条件を具備しないものの帰化申請を許容しても、かゝる許可処分はその有効要件を欠き法律上当然無効といわざるを得ない。然るに英国においては判例法上戦時中英国人が敵国に帰化しても英国籍を失わないものとせられているのであるから、太平洋戦争中になされた本件帰化の許可処分は、被上告人をして英国籍を喪失せしめることなく、従つて前示旧国籍法七条二項五号の要請するその有効要件を欠缺することゝなり法律上当然無効たるに帰着し、被上告人は結局日本国籍を取得し得なかつたものである」旨判示して、被上告人の本訴請求を認容したのである。
しかし、旧国籍法七条一項によれば、「外国人ハ内務大臣ノ許可ヲ得テ帰化ヲ為スコトヲ得」たのであり、同条二項の規定はこの内務大臣のなすべき許可処分につき通常の場合における帰化の条件を定めているのである。すなわち内務大臣は法律に別段の定めのない限り(同法八条、九条、一〇条、一一条、一四条等参照)同条項一号乃至五号所定の条件を具備するか否かを審査し、その条件を具備すると認めた者に対してのみその帰化を許可すべきものであることはその法文に照らして明白である。
しかしながら、一旦内務大臣がかゝる条件を具備するものと認定してその帰化申請を許可した以上、仮りにその認定に過誤があり、客観的には該条件を具備しない申請人に対して帰化を許したことゝなるような場合においても、かゝる瑕疵を理由として取消の問題を生ずるか否かは格別少くともその許可処分を目して法律上当然無効となすべきいわれはない。
けだし国家機関の公法的行為(行政処分)はそれが当該国家機関の権限に属する処分としての外観的形式を具有する限り、仮りにその処分に関し違法の点があつたとしても、その違法が重大且つ明白である場合の外は、これを法律上当然無効となすべきではないのであり、そして前示認定上の過誤の如きものが、こゝにいわゆる重大且つ明白なる違法といゝ得ないこと勿論だからである。(まして仮りに認定上の過誤ありとしても外国判例法上の解釈問題を包含する本件許可処分については、これを当然無効たらしむべき明白な違法ありとなし得ないこと一層明白であろう。)
旧国籍法七条二項五号の規定が二重国籍の関係の発生を抑制せんとする法意に出でたものであることは多言を要しないところであるけれど、同法は必ずしも二重国籍の成立を絶対的に排除していないことは同法一一条の規定の存することによつても窺い得るのであるから、二重国籍関係の発生を理由として、法文上単に併列的に掲記されているに過ぎない一号乃至五号所定の条件中特に五号掲記の条件のみを捉えてこれを許可処分の有効要件と解することはできない。
それ故原審が前説示のような見地に立つて、たやすく被上告人の請求を認容したことは違法であり、原判決は全部破棄を免れない。論旨は理由がある。
よつて民訴四〇七条一項に従い主文のとおり判決する。
この判決は裁判官田中耕太郎、同栗山茂、同小谷勝重、同斎藤悠輔、同谷村唯一郎、同本村善太郎の少数意見がある外その余の裁判官全員一致の意見である。
裁判官田中耕太郎、同栗山茂、同小谷勝重、同斎藤悠輔、同谷村唯一郎、同本村善太郎の少数意見は次のとおりである。
帰化の申請を許可せんとするには、旧国籍法七条二項五号の規定により、その申請人が無国籍者であるか又は日本の国籍を取得することに因つて自動的に従来その者の有した外国籍を失うべきことを許可処分の有効要件と解するを相当とする旨、竝びに、本件では控訴人は原判示のごとく英国籍を失うものではなく、従つて、右の有効要件を欠き帰化の許可は当然無効である旨の原判決の判示は正当であると考える。
最高裁判所大法廷
裁判長裁判官 田中耕太郎(以下略)


もうれつ先生 @discusao

二重国籍禁止法案を検討 jiji.com/jc/article?k=2… 維新の馬場伸幸幹事長「制度の不備があれば、それを正していくよう法改正する」。 ↑重国籍は、自国と他国の国籍法の違いに由来し、他国の国籍法変更は自国の努力では不可能(だから国籍選択は「強制」になっていない)

2016-09-08 20:44:26
もうれつ先生 @discusao

王京香事件/京都地裁&大阪高裁判決 rikkyo.ne.jp/web/naokiwa/pa… 日本人女性が中国人と結婚し中国籍となった。後に離婚し日本国籍に戻ろうとしたところ、中国籍を失うことが国籍回復の前提となっており申請。ところが国家間の事情により離婚判決が無効、離脱も不能となった事件

2016-09-08 21:01:51
もうれつ先生 @discusao

ガントレット事件:在日英国人が、英日が戦争状態にあった昭和17年日本に帰化。日本側は自動的に国籍離脱が行なわれたと考えていたが、実は当時の英国籍法は「敵国」に帰化することで国籍を失うことはできないとされていた。戦後英国人が、帰化処分は無効であり日本人国籍不存在の訴えを起こした。

2016-09-08 21:13:26
もうれつ先生 @discusao

この裁判は、東京地裁で英国人敗訴、東京高裁で勝訴、最高裁で「その違法が重大且つ明白である場合の外は、これを法律上当然無効となすべきでない」とし、差し戻しとなった。 twitter.com/discusao/statu…

2016-09-08 21:20:18
もうれつ先生 @discusao

日本が国籍を認めた者については、重国籍状態であっても「その違法が重大且つ明白」でなければ五月蠅いことを言わない、という判決。他国の国籍法についてまでいちいち参照していられないという現実的認識であり、また自国の国籍法が他国の国籍法の如何によって影響される他律性を排除する意味もあるか

2016-09-08 21:25:31
もうれつ先生 @discusao

@LibraTS 文意がよく分かりませんが、仰っていることは「他国がどうするか」という話のようなので、法律論的にも実務的にも、そういった他律的な要素を自国の国籍法では援用しないだろうという趣旨です。 pic.twitter.com/vpIbtKR17K

2016-09-10 09:53:21
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もうれつ先生 @discusao

戸籍手続の標準仕様書P.23 「国籍選択届」には「国籍選択宣言」という項目があり、そこは「日本の国籍を取得し、外国の国籍を放棄します」という文言が固定的に印刷されている。 moj.go.jp/content/000112… pic.twitter.com/is3HBhj3gY

2016-09-10 10:00:14
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もうれつ先生 @discusao

息子のジョン・オーエン・ガントレットじゃなすか?裁判(1956年7月)直後にエドワードは亡くなってますし…。 RT @TakeYoshida このエドワード・ガントレットの妻恒子は山田耕筰の姉であった。 twitter.com/discusao/statu…

2016-09-10 13:32:03
もうれつ先生 @discusao

@Mattun_ ガントレット事件における最高裁判決の「その違法が重大且つ明白である場合」という条件についてのことでしたら、例えば重国籍であることを利用し他国の公務員なり議員なりになった場合等がこれに当てはまります。 twitter.com/Mattun_/status…

2016-09-14 18:13:52
スズネ💉💉💉 @mattun_

@discusao @LibraTS つまり、重国籍状態を解消しようと行動をしないという、重大な過失が有る場合には適用されるのですよね?

2016-09-14 08:02:19
もうれつ先生 @discusao

@Mattun_ つまり、重国籍であることを利用し他国の公務員なり議員なりになった場合、日本国籍は剥奪抹消される、と最高裁判決は述べているのですが、ちなみにアルベルト・フジモリの場合、日本国籍を持ったままペルー大統領になっています。 shugiin.go.jp/internet/itdb_…

2016-09-14 18:18:35
もうれつ先生 @discusao

@Mattun_ 「フジモリ氏がペルーの大統領に就任した時点においては、フジモリ氏の日本国籍の有無を確認していない。/なお、その時点で、フジモリ氏の国籍の確認を必要とする事情は存在しなかった。」ということなので、重国籍で他国の総理大臣になっても問題なしというケースもあるということ

2016-09-14 18:23:16
もうれつ先生 @discusao

質問本文も付けといた方がいいか。 ペルー共和国前大統領アルベルト・フジモリ氏に関する質問主意書(2001年3月 辻元清美) shugiin.go.jp/internet/itdb_… 別紙答弁書を送付(森喜朗) shugiin.go.jp/internet/itdb_…

2016-09-14 18:37:07
もうれつ先生 @discusao

特に一貫した理屈もなく(蓮舫もしくは他国に対する)情緒的問題に論点を集約させようとしてるようですね。下らないのでブロックします。 RT @LibraTS だけどこの問題は韓国の方が圧倒的に多いんだろうね。 pic.twitter.com/SQVUVjQE58

2016-09-15 08:12:54
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もうれつ先生 @discusao

@Mattun_ ?起きてもいない裁判を想定してあれこれ仰ってるんですか? twitter.com/Mattun_/status…

2016-09-15 08:21:09
スズネ💉💉💉 @mattun_

@LibraTS @discusao 裁判で否決されなければ、問題が無いという事にはならないのでは? この問題に関して裁判上で、直接の判決が出てないのでは?

2016-09-15 03:23:01
もうれつ先生 @discusao

ガントレット事件の最高裁判決のことでしたら以前連ツイしたこのつながり(twitter.com/discusao/statu…)で既に説明は終わってますね。 RT @Mattun_ 問題無いというのは、どの裁判結果から導きだされたのですか?

2016-09-15 19:14:40
もうれつ先生 @discusao

@Mattun_ 「二重国籍を意図して継続しようとした場合」というのは貴方の主観的判断で間違いです(そういう問題の立て方を裁判所はしていない)。ガントレット事件の最高裁判決は以下リンク courts.go.jp/app/files/hanr… pic.twitter.com/U3AZCdVS0V

2016-09-15 19:51:52
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もうれつ先生 @discusao

@Mattun_ ついでにもう一つ貴方の間違いを指摘しておくと、「重国籍状態を解消しようと行動しないという、重大な過失がある場合」という考え方は、他国の大統領になりながら日本国籍を喪失しなかった実例を考えると、適用は困難と言えます。 pic.twitter.com/M3SgV3A7X6

2016-09-15 20:00:57
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もうれつ先生 @discusao

@Mattun_ 私がガントレット事件の判例を連ツイした流れで貴方が絡んできたわけですから、貴方がそれに言及していないというのなら、貴方は話を何も分かっていないということでしょうね(何度も「ガントレット事件」って繰り返してますし)。 pic.twitter.com/d4HiexkWWq

2016-09-15 20:14:01
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