「ストローク・オブ・フェイト」♯5まとめ

ニンジャスレイヤーの二次創作 前:https://togetter.com/li/1028951 次:https://togetter.com/li/1031878
0
ひたちえぼ @EVO_Hitachi

*これからしばらくタイムラインに二次創作小説が流れるので、何となく眺めて面白そうだったら #owl_nj のタグをつけてツイートして貰えるととてもとても嬉しいです。また、これは10月9日のニンジャ万博で頒布する本のお試し版も兼ねております*

2016-09-30 20:13:15
ひたちえぼ @EVO_Hitachi

「ストローク・オブ・フェイト」♯5

2016-09-30 20:19:40
ひたちえぼ @EVO_Hitachi

((これまでのあらすじ:ノビドメ運河へヤクザ抗争の手打ち交渉に出向いた、アオショーグン・ヤクザクランのオヤブン親子と、ソニックブーム、シルバーカラス。しかし彼らを待っていたのは、何者かによるオヤブン襲撃という返答であった))

2016-09-30 20:22:22
ひたちえぼ @EVO_Hitachi

プラチナ・レジデンシャル・ディストリクト。カネモチ・ディストリクト程ではないが、静かな高級住宅街である。生け垣や高い塀が家々を仕切り、奥ゆかしいボンボリライトが連なる。ここに、アオショーグン・ヤクザクランの別邸があった。個人的な催しや保養、いっとき姿を隠す為に利用される。 1

2016-09-30 20:26:28
ひたちえぼ @EVO_Hitachi

その奥座敷が、今や集中治療室じみた設備で別邸の主を命の淵にしがみつかせていた。チューブや何らかの計器を至る所に張り付け、ベッドに横たわるはアオショーグン・ヤクザクランのオヤブン、チクゼン・コバカワその人である。しかし、彼はもはや自力で呼吸することがままならぬ。 2

2016-09-30 20:31:33
ひたちえぼ @EVO_Hitachi

シンジケート系列の病院へかつぎ込み、緊急手術、心臓に達していた傷を処置できたものの、脳に酸素が届かない時間が長すぎたのだ。病室より安全な別邸へ、医療スタッフごとチクゼンを移送したものの、誰もが途方に暮れていた。 3

2016-09-30 20:35:13
ひたちえぼ @EVO_Hitachi

報せを受けて集まったヤクザ幹部らも、奥座敷の隣でチャブを囲み、ノボリドラゴンへの報復か恭順かで割れている。そんな面々を、ソニックブームは苛立ちを隠さぬ顔で睨む。自分主導で、抗争に勝つ為に来たのだ。それが、蓋を開けたら弱体化し統制がとれぬクランの尻拭い。堪忍袋も暖まっている。 4

2016-09-30 20:42:17
ひたちえぼ @EVO_Hitachi

その焦げ付きそうなアトモスフィアに、今まで黙っていたシルバーカラスがついに割って入った。「旦那がた。あれこれ言い合うのは結構だが、まずキンゴ=サンから話を聞いたらどうだ。流石に話せる程度には落ち着いた筈だ。おい、キンゴ=サン呼んでくれ」 5

2016-09-30 20:48:37
ひたちえぼ @EVO_Hitachi

フスマの前で直立姿勢だったレッサーヤクザが、心得たとばかりにオジギし退室する。キンゴは、あれから結局まともな言葉を発さぬまま、部屋に籠もってしまった。ソニックブームが恫喝しようが、シルバーカラスが宥めようが、ただ貝にでもなったように青ざめた顔で何も言わぬままだ。 6

2016-09-30 20:52:49
ひたちえぼ @EVO_Hitachi

ソニックブームはそんなキンゴを信用していない。ノボリドラゴンとの交渉について詰め寄った時。失禁しかけながらも、その目は終始、弱気な狡猾さでソニックブームの怒りが静まるのを待っていた。より強い相手の顔色を窺い、我が身可愛さに全力で擦り寄る者の不愉快な目だ。 7

2016-09-30 20:57:51
ひたちえぼ @EVO_Hitachi

じりじりした時間がどれほど経ったか。ターン! スズメの絵が描かれたフスマが勢いよく開かれた。レッサーヤクザが戻って来た。「大変す! どこにも坊ちゃんいません!」「アァ?!」ソニックブームは嫌な予感にかき立てられるように、携帯IRC端末でキンゴを呼び出した。 8

2016-09-30 21:01:50
ひたちえぼ @EVO_Hitachi

だいぶ待たされてから繋がる。『も、モシモシ。キンゴです』「オイ! テメェどこほっつき歩いてやがんだ!」通話の向こうでキンゴが細い悲鳴を上げた。 9

2016-09-30 21:05:19
ひたちえぼ @EVO_Hitachi

『あ、あ、あの、い、いま、いまですね? ハイ。その、いまはその、の、ノボリ……、べ、べつのヤクザクランさんに』「……アァ? テメェ今なんつった?!」『ス、スミマセン、そ、その、そういうことなのでスミマセン。しつ、失礼します』「モシモシ! モシモシ!」通話が切断された。 10

2016-09-30 21:08:57
ひたちえぼ @EVO_Hitachi

「アッコラー! テメェザッケンナコラー!」ソニックブームは怒りにまかせてレッサーヤクザを殴り飛ばした。「グワーッ!」哀れなヤクザを一瞥したシルバーカラスが、何かを察したのか問う。「なあ旦那、まさか」「そうだ! あの野郎! 寝返りやがった!」 11

2016-09-30 21:13:16
ひたちえぼ @EVO_Hitachi

「あの手打ちのセッティング、旦那、どこまで噛んだ? 例えば、あの場にキンゴを同席させたのは旦那か?」「いや。ノボリドラゴンと最初に交渉したキンゴがあの場に居ることが、最低条件……」言いながら、ソニックブームは気づいた。シルバーカラスの一言が、気づきを確信に変える。 12

2016-09-30 21:17:57
ひたちえぼ @EVO_Hitachi

「あの時、俺達はニンジャに『気づかなかった』わけじゃないのかもしれんな」「そもそも、ニンジャなんざ居やしなかった。俺達はあのニボシ野郎にまんまとやられちまった。そういうことか」怒りを奥歯ですりつぶすように、ソニックブームは言った。 13

2016-09-30 21:22:29
ひたちえぼ @EVO_Hitachi

シルバーカラスは何かを考えるように、煙草に火を点けた。「……どうするんだ」「前に言った通りだ。ノボリドラゴンのオヤブンを取る。そうすりゃキンゴだってラット・イナ・バッグだ。こうなりゃ早い方が良い。今夜にでも行くぞ」煙草から灰の塊が落ちる程の黙考の末、シルバーカラスは言う。 14

2016-09-30 21:25:29
ひたちえぼ @EVO_Hitachi

「ダメだな。俺は降りる」「……アァ?」ソニックブームは唸る。「チクゼン=サンは実際九割死体だ。用心棒の仕事はここまでだろ」シルバーカラスは庭まで出で、タバコを飛び石に叩きつけ、踏みにじった。「これ以上、アンタに付き合う義理がない」ソニックブームの堪忍袋が、遂に暖まりきった。 15

2016-09-30 21:31:19
ひたちえぼ @EVO_Hitachi

意に沿わぬ輩、ほとんど死体のオヤブン、裏切り者、遠のく手柄。「ワドルナッケンナグラー!」爆発する怒りは大音声の上級ヤクザスラングとなって発せられた。周囲のヤクザたちさえ腰を抜かす中、しかしシルバーカラスはそれを物ともせずに、フードを被り、コートの前を閉じる。雨が降り始めた。 16

2016-09-30 21:34:42
ひたちえぼ @EVO_Hitachi

「どうしても、って言うなら、 やるかい? 俺は構わないぜ」フルメンポに覆われたシルバーカラスの声は、ことさら挑発的に響いた。ソニックブームは肩を怒らせ、エンガワから庭へ飛び降りた。かくて、喧噪届かぬ広いヤクザ屋敷、山水を模した庭で、両者は向かい合うかたちとなった。 17

2016-09-30 21:37:34
ひたちえぼ @EVO_Hitachi

「ザッケンナコラー……テメッコラー」ソニックブームの威嚇を、シルバーカラスは向かい風をいなす鳥めいて受け流す。「生憎、俺はツジギリ風情なもんでね。ヤクザの仁義なんざ守るつもりはない」ソニックブームは拳を握る。ぎしり。レザーグローブが鳴り、油断なくカラテが構えられる。 18

2016-09-30 21:41:30
ひたちえぼ @EVO_Hitachi

対するシルバーカラスの右手は無造作に、しかしいつでも腰のカタナを抜けるように構えられている。両者の間にある張り詰めたアトモスフィアが満ち、溢れ、竹の高らかな音が響く。――はたして、相対するふたりが動いた! 19

2016-09-30 21:43:57
ひたちえぼ @EVO_Hitachi

先に動いたのはシルバーカラスだ。カタナに手をかけたまま直線軌道でソニックブームを狙う。性急な、と、ソニックブームは嘲笑を浮かべる。小さく肩を回し、ソニック・カラテで迎撃。「イヤーッ!」 20

2016-09-30 21:46:48
ひたちえぼ @EVO_Hitachi

「イヤーッ!」シルバーカラスは両脚で踏み切り跳躍して衝撃波圏外へ脱しようとするが、そこを二撃目のソニック・カラテが襲う。「グワーッ!」衝撃波を真っ向から食らったシルバーカラスだが、キリモミ回転して地面に叩き付けられる直前、猫めいて姿勢制御、落下ダメージを軽減させる。 21

2016-09-30 21:51:49