「ストローク・オブ・フェイト」♯4
- EVO_Hitachi
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*これからしばらくタイムラインに二次創作小説が流れるので、何となく眺めて面白そうだったら #owl_nj のタグをつけてツイートして貰えるととてもとても嬉しいです。また、これは10月9日のニンジャ万博で頒布する本のお試し版も兼ねております*
2016-09-25 21:56:58これまでの振り返りはこちら ♯1 togetter.com/li/1017676 ♯2 togetter.com/li/1021370 ♯3 togetter.com/li/1026897
2016-09-25 21:58:48((これまでのあらすじ:ソニックブームとシルバーカラスは、ジャノミチ・ストリートを巡るヤクザ抗争で、同一ヤクザクランに雇われたニンジャとして知り合う。彼らを襲撃した相手クランのニンジャを返り討ちにしインタビューしたところ、相手クランのオヤブンがニンジャだと判明した))
2016-09-25 22:02:50((構図がシンプルになったことを歓迎するソニックブーム、ニンジャを有する割に相手の動きが鈍い事を訝しむシルバーカラス、両者の思惑とは全く別の所で、敵対クラン同士の手打ち交渉が始まろうとしていた))
2016-09-25 22:04:04「本気で乗るのか」キンゴがソニックブームから失禁寸前まで怒鳴りつけられる声を聞きながら、シルバーカラスはチクゼンとショーギに興じていた。「ソニックブーム=サンにゃあ、悪いことしたと思っとりますけどね。キンゴがクランの事考えてンなら、器を計る良い機会ってもんで」 1
2016-09-25 22:06:06チクゼンは、キンゴにとっては父であり、またヤクザのセンセイでもある。シルバーカラスは、憧憬混じりの眼差しで彼らの関係を捉えていた。「言っちゃなんだが、キンゴ=サンにそこまでの仕事は、まだ早いんじゃ無いかね」シルバーカラスを盤上で追い詰めながら、チクゼンは口の端を吊り上げる。 2
2016-09-25 22:09:49「なに。ダメならその時は、ソニックブーム=サンが何とかしますよ。話はつけてある。私はケジメでもして、引退しまさァ」チクゼンは、指が三本の左手を振って見せた。「引退?」シルバーカラスは、あと数手で負けそうな盤面から顔を上げた。「そりゃあ、また……」 3
2016-09-25 22:13:39チクゼンは駒を手の中で転がしながら言う。「……疲れちまった、って言うのが、本音さなァ。クランの抗争も、昔ほどシンプルじゃなし。ニンジャなんて訳の分からん奴らも出て来て、跡目を育てるのも失敗した」チクゼンは苦いチャを啜る。 4
2016-09-25 22:15:52時流に残された男が、部外者にこそ言える弱音だったのかも知れぬ。「お前さんのワザマエもな、随分長いこと腐らせちまって、済まんかった」「頭上げてくれチクゼン=サン。あんたが謝ることじゃない」食客同然で雇われていることに甘えているのは、他ならぬ自分だ。 5
2016-09-25 22:18:10そこに、ひとしきりストレス発散したソニックブームがやって来た。「時間だ」「左様で」紋付き袴姿のチクゼンは立ち上がり、シルバーカラスに向かって真剣な面差しで、頭を下げた。「シルバーカラス=サン。よろしく頼ンます」シルバーカラスは頷いた。 6
2016-09-25 22:19:29ノビドメシェード・ディストリクトの運河に浮かぶ屋形船が、歓談や商談や密談を乗せ、しめやかに夜を泳ぐ。波打つ水面は猥雑ネオン文字を美しい光のオブジェクトとしてぼかし、風流に照り返す。そんな川を往来する屋形船のなかに、ひときわ物々しい警備の船があった。 8
2016-09-27 20:57:23甲板や船縁で直立姿勢を取る、ヨロシサン製薬のクローンヤクザ。クランとしての経済力やパワーを誇示するアイテムとして、クローンヤクザはリアルヤクザの世界にも広がりつつある。そうした製品で外を固めたこの屋形船の客が、一般人でも遊興目的でも無いことは明らかだ。 9
2016-09-27 21:02:04屋形船は防音かつ防弾効果のあるフスマで二間に仕切られ、片側には生きたままサシミにされたタイと上等なサケを並べた宴席が設けられている。ここでは、間もなく一つのストリートを巡る二つのヤクザクランの手打ち交渉が行われる手はずとなっていた。 10
2016-09-27 21:05:29会談場所の船はアオショーグン・ヤクザクランで用意する。会談の席にニンジャを同席させぬという取り決めも交わされた。しかし、二重防音フスマで隔てられた隣の小さなタタミ部屋には、シルバーカラスとソニックブームが詰めている。 11
2016-09-27 21:13:00彼らは交渉が決裂した際、速やかにアオショーグン・ヤクザクラン側の安全を確保する手はずだ。キンゴを経由してここまでこの場を整えたのはソニックブームだった。それでも彼は甚だ不機嫌で、オーガニック大吟醸を水のように流し込んでは愚痴をこぼしている。 12
2016-09-27 21:18:29「俺様が仕切るって言ってンのに、どいつもこいつも勝手すぎるンだよ」「旦那、飲み過ぎだ」「……約束の時間からだいぶ経ってるじゃねえか。ホントに来るんだろうなァ?」「丸くおさまりゃ旦那の手柄なんだから」「言ってろツジギリ屋め」ソニックブームはトックリをシルバーカラスに向ける。 13
2016-09-27 21:23:03オチョコでサケを受けながら、シルバーカラスは抗議じみて呟く。「ツジギリは、食い詰めちまってやむなく手を出しただけだ」その反応に、ソニックブームは気を良くしたようだった。 14
2016-09-27 21:32:13いい加減不機嫌な酔っ払いの相手も面倒なので、もう一つ持ち上げておこうかとシルバーカラスは続ける。「そうだ。旦那のカラテ、あれは一体何だ? えらい威力だったが」ソニックブームは自慢げに鼻を鳴らす。「カラテ動作で衝撃波を起こす。ソニックカラテよ」 15
2016-09-27 21:34:58シグナルロケットの煙幕を一瞬吹き飛ばしたのは、そういう理屈か。「そっちのカラテも、まあそこそこだぜ。イアイドーっつうのか?」「いや。俺のはもうイアイじゃない」シルバーカラスは自嘲した。 16
2016-09-27 21:45:48「ただ、カタナが他より得意ってだけだ」どうにも自分にとって渋い話になっている。ソニックブームが気づいていないのは、有り難いのかどうか。「それでも、実際ソウカイ・シンジケートでイイ線行けると思うぜ。この際ツジギリなんざ辞めちまえよ」「からかうなよ旦那」 17
2016-09-27 21:52:11ところが、ソニックブームはやや親身なアトモスフィアで続けた。「近いうち、この街は俺様達の天下だ。フリーで食ってくのは難しくなるぞ」シルバーカラスは苦笑いしながら手酌でサケをそそいだ。 18
2016-09-27 21:59:17