トーメント・イーブン・アフター・デス ＃１
-
- いいね！0
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
かつて世界を支配していたのは、半神に等しい力を持つニンジャ達だった。時代と共に彼らの力は衰え、定命者の時代が幕を開けた。二度の世界大戦、電子戦争……。動乱の中でニンジャの時代は忘れ去られていった。
2016-10-02 22:02:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
◆◆◆◆◆ NINJA ENTERT@INMENT ◆◆◆◆◆ ◆◆◆◆◆ BRADLEY BOND ◆◆◆◆◆ ◆◆◆◆◆ PHILIP NINJ@ MORZEZ ◆◆◆◆◆
2016-10-02 22:06:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
「あの後何が起こったと？」薄汚い老人は片目を開き、もぐもぐと口を動かした。崖向こうに連なる山々に、巨大なニンジャの影が蠢いていた。「2038年。世界のタガが外れ、ケオスが世界を再分断した。磁気嵐が失せて鎖国は解け、日本は世界の標的となり、ネオサイタマに新たな勢力図が引かれ直した」
2016-10-02 22:07:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
「だがそれはほんの始まりよ。数年後、邪悪なる太古のカラテが世界全土を覆った。真に恐るべきはそれら……蘇りしカツ・ワンソーの子らだ。最初に蘇ったのは、ギザのピラミッドの棺を内側から押し開けた暗黒のファラオニンジャ、セト」
2016-10-02 22:10:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
「以後、何かに呼応するように、世界のあちこちで彼らは立て続けに目覚めた。まるで連鎖反応だ。天を衝くガルガンチュア。焦土の徘徊者ペイルライダー。ロンドン塔から英国を睥睨するケイムショ。オキナワ海底都市を我がものとしたリヴァイアサン。オセアニアを血と呪いの闇に閉ざしたシャン・ロア」
2016-10-02 22:12:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
「黄昏の時代か？あるいは、古事記に予言されし、あるべき世界の始まりなのか？最終戦争マッポーカリプスの時か？答えは問う相手によりて変わるだろう。ただし、まずワシらが知るべきは、極東のネオサイタマの更に東、辺境のシャッタード・ランドに出でし、新たなるナラク・ニンジャの憑依者よ」
2016-10-02 22:15:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
BRATATATA！ BRATATATA！ 激しい機銃掃射の火線が追うのはなんらかの影だった。その者は斜めに傾いた高層ビル廃墟の屋上から屋上へ飛びわたり、閃く赤黒い残光を伴って攻撃者たちを振り返った。降り注ぐ重金属酸性雨が跳躍軌道にふれて蒸気を発し、灰色の空に黒い稲妻が閃いた。
2016-10-02 22:19:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
シャッタード・ランド。白亜化石じみた高層ビルの下にひろがる不毛の地には、その呼称が示すとおり、無数の直線状の轍が巨獣の爪痕のごとく刻まれている。汚染度が極めて高く、住む者のない海抜ゼロ地帯の廃墟だ。振り返った彼の視線の先には、黒漆塗りのヘリコプターが二機。
2016-10-02 22:26:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
連続側転からフリップジャンプを放ち、前方、浮島めいて突き出した転覆タンカー残骸めがけ、彼は跳んだ。「イヤーッ！」赤黒の装束が重金属酸性雨に残像を焼きつける。まるで雨に描く墨絵だった。
2016-10-02 22:29:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
二機の黒漆塗りヘリコプターは更に加速、赤黒の影を追った。その一機がふいに火を噴き、分厚い黒煙をまき散らしながら墜落した。破砕したガラス越しに、コクピット操縦者の恐怖の眼差しが、転覆タンカーの上で向き直った赤黒の者に焼きつく。「イヤーッ！」連続で投げている。鋼鉄の星。スリケンを。
2016-10-02 22:32:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
スリケン。ニンジャが用いる極めて強力な投擲暗殺武器だ。赤黒の装束を身にまとった男は逃走から一転、ビルの谷間にヘリコプターを誘い込み、回避困難な状況下でその恐るべき投擲武器を連射、易々と撃墜したのである。KBAM！もう一機が同様に火を噴き墜落したのはその2秒後だった。
2016-10-02 22:35:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
黒漆塗りヘリコプターは互いに衝突し、側面のビル廃墟の壁を削り取りながら墜ちてゆく。傾いたビル群は衝撃で更にぶざまな角度にねじれた。粉塵と水飛沫の霧が立ち込める中、赤黒のニンジャは腰をやや落とし、ジュー・ジツの構えをとった。霧の中から徒歩の者が現れた。その者もまた、ニンジャ。
2016-10-02 22:40:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
彼らは互いに睨み合い、そして直立し、同時にオジギを繰り出した。「ドーモ。ニンジャスレイヤーです」赤黒のニンジャが告げた。そして、「ドーモ。コーストウインドです」新手の者が名乗った。アイサツである。イクサに臨むニンジャにとってアイサツは神聖不可侵の掟だ。古事記にもそう書かれている。
2016-10-02 22:44:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
「この地に気易く立ち入った者の運命は決まっている」コーストウインドは言った。「シンプルな運命だ。死、あるのみ」その背後で廃墟ビルが横倒しに倒れ、凄まじい破壊音と粉塵が生じた。ニンジャスレイヤーはコーストウインドの凝視を見返し、言った。「その手際のほどはシンプルにいかぬようだ」
2016-10-02 22:50:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
ニンジャスレイヤーは威圧的に数歩踏み出す。コーストウインドは訝しんだ。得体のしれぬアトモスフィアだ。この者はコーストウインドを、ニンジャを少しも恐れていない。何かがおかしい。ニンジャスレイヤーが言った。「貴様を殺す。特に訊き出す情報もない」「ほざけ！」二者は同時に地を蹴った。
2016-10-02 22:54:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
二人は色付きの風と化し、繰り返し、X字の軌跡を刻んでぶつかり合った。廃墟の壁を蹴り、飛びわたりながら、幾度もぶつかり合う。ニンジャ反射神経の持ち主であれば、互いに空中でチョップを打ち合い、互いの身体を蹴った反動で飛び離れる二人の異常な戦闘者の姿を見て取ることができよう。
2016-10-02 22:56:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
彼らは屋上へ再び跳び戻り、並走しながらスリケンを投げ合った。並走する二者の間で激しい火花が散った。不意に赤黒の風は湾曲する軌跡を描き、コーストウインドの眼前に立ちはだかった。コーストウインドは目を見開いた。想定外の速度！彼は咄嗟にチョップを繰り出す。「イヤーッ！」
2016-10-02 23:00:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
ミシリ、と音が鳴った。チョップがニンジャスレイヤーの左肩をとらえていた。だがそのあと悲鳴を上げたのはコーストウインドだった。「グワーッ！？」チョップを受けながら、ニンジャスレイヤーはその腕を両手で掴み、ねじり上げていた。「イヤーッ！」「グワーッ！」そのまま一息でへし折った！
2016-10-02 23:06:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
コーストウインドはニンジャスレイヤーの脇腹に蹴りを叩きつけた。苦し紛れだ。ニンジャスレイヤーは燃える目を見開き、打撃に耐えた。へし折れたコーストウインドの腕を掴んだまま、今度はコーストウインドの顔面をもう一方の手で鷲掴みにした。「バカな……」「イヤーッ！」「グワーッ！」
2016-10-02 23:08:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
サツバツ！顔面を押さえたまま、ニンジャスレイヤーはコーストウインドの腕を力任せに引きちぎった。コーストウインドは悲鳴を上げ、身をもぎ離して逃れた。背後に飛び移るべきビルは無い。だが彼は跳んだ。はるか下に痛めつけられた大地の亀裂と廃車やドラム缶が見える。そしてショッピングモールが。
2016-10-02 23:10:57