サンズ・オブ・ケオス ＃５

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【サンズ・オブ・ケオス】#5

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

斜めに明かりが挿し込む薄暗い屋内、赤黒い影が起き上がり、うつ伏せに倒れ、再び起き上がった。「ヌウーッ……！」眼光が闇に閃き、反射的に周囲の敵を探した。(((不甲斐なし)))ナラクの失望の唸りがニューロンに突き刺さる。(((今のオヌシはサンシタ一匹殺せぬか！)))

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「黙れ……ナラク……！」ニンジャスレイヤーはこらえ、焼ける息を吐いた。シックス・ゲイツのニンジャ、ガーランドのヒサツ・ワザをニンジャスレイヤーは空中で敢えて受け、その衝撃力を利用して高く跳んだ。そのまま窓を破り、この廃屋の室内に退避したのだ。

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すぐに敵は追ってくる。ニンジャスレイヤーは力を振り絞り、戸口から反対側へ出ると、手摺を飛び越えて路上に着地した。こちらの路地も人通りが少ないが……「こっちです！」声の方向を見ると、小型トラックの荷台のホロが持ち上がり、中からコトブキが呼びかけていた。「何をしている」「早く！」

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「クソッ……」『オイ！どうなった！ニンジャスレイヤー＝サン！』ナラクの存在感がノイズに薄れて消え、タキの通信が再びニューロンに入ってきた。ニンジャスレイヤーはIRCを遮断し、ホロの中へ飛び込んだ。「このまま静かにしていれば大丈夫です」コトブキが囁いた。「こういうシーンがあります」

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（シーンだと？）（映画です）コトブキはホロをかぶせ、外界から遮断した。（でも、わたしの視聴記録に照らすと、22パーセントの確率で他の邪魔が入ったり、見つかったりして、無残な死を迎えます。そうならないよう祈ったほうがいいのかも）ニンジャスレイヤーは答えず、目を閉じ、気配を殺いた。

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やがて、バタン、バタンとドアを開閉する音が聞こえ、カーラジオの音が漏れ聞こえ始めた。ドルルルッ……車体が震動し、走り出す感覚があった。ニンジャスレイヤーは引き続き息を殺していた。ニンジャ野伏力と距離、それに対する敵の感知能の勝負だ。隣でコトブキは冷たい荷物めいて微動だにしない。

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ニンジャスレイヤーはホロの闇の中、険しい顔で目を閉じていた。彼は苦痛と屈辱に耐えた。彼ははなから逃げるためにガーランドへ攻撃をかけた。己の重い傷を鑑みた逃走だ。状況判断によって、彼は犬死にを免れた。記憶装置も懐にある。だが、ブザマだ。彼はこのブザマを、己の未熟を胸に刻みつけた。

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一方、ガーランドは付近の三叉路で、闇から染み出すように現れた別のニンジャと対峙し、アイサツを終えたところだった。「事情は知らんが」そのニンジャは重々しく言った。「ここはサマズ社の重点テリトリー。オヌシとは、やりあいとうない。俺は死ぬだろうからな。だがそれでも勝手のやり過ぎは……」

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ガーランドはニューロンを研ぎ澄ませた。たった今戦闘したニンジャスレイヤーに類似するニンジャアトモスフィアは感じ取れぬ。そう離れていない筈。よく隠れている。目の前のこのサマズ社のニンジャ、ブラッシュウッドの存在も邪魔になっている。「……フーッ」彼は息を吐いた。「戦争をする気はない」

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「助かるわい」ブラッシュウッドは頷いたが、カラテ警戒は維持している。「よき日を」「オタッシャデ」ガーランドは跳躍し、電線から屋上へあがると、中立領域の方角へ移動をはじめた。メイレインの死は間違いあるまい。しかし……走りながら、彼はラオモト・チバへIRCをコールした。

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『ガーランドか』怜悧な音声が返った。「ドーモ。メイレインは死んでおりました」『クズ同士、仲間割れか？アジトには他にどこのニンジャが居た』「……ニンジャスレイヤーが、奴を殺しました」『……』チバの沈黙。ガーランドは屋上から屋上を飛びわたり、汚い川と船上生活者地域を見下ろした。

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『捨て置け』チバは言い放った。ガーランドは主の答えの意を汲み取ろうとした。だが、やがて彼は了解した。「かしこまりました」『戻れ。ガーランド』「は」ニンジャスレイヤー。少し調べてみる必要があるか。船上生活者を見下ろすガーランドの瞼がひくつき、＜六門＞の刻印が揺れた。

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「これだ」ニンジャスレイヤーはタキに記憶装置を放った。「おう」タキは慌ててキャッチし、ケーブルを繋いだ。「ホントに撒いたのかよ、なあ？」髪を掻きながら、彼はタイピングを開始した。「もしお前、アレだったらお前……」「撒いた。間違いない」ニンジャスレイヤーは低く言った。

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「……」タキはニンジャスレイヤーを見た。ニンジャスレイヤーは見返した。「お前、けっこう怪我してんじゃねえか。オレでもわかるってのは相当……」「特にない」「特に、特にね」タキは目を逸らす。モニタに視線が吸い込まれる。「ああ、これだ、メイレインのアクセス……サンズ・オブ・ケオス」

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「メイレインは妙な事を言っていた。信仰だ」ニンジャスレイヤーは言った。タキは眉をしかめ、「……ッて事は、このお友達どもは信仰仲間か？なんだこりゃ」それは複数枚の画像データ。展開すると、一枚はペントハウスのバーベキュー・パーティーらしき写真。一枚はひどく血生臭い磔の死体を囲む写真。

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囲む対象は一方は鉄板、一方は死体だが、囲む者らは同じだった。皆、ニンジャだった。どちらも「SONS OF CHAOS」とショドーされた垂れ布をバックにしていた。「信じられねえ話だが、ノー・セキュリティだぜ」タキはフォーラムのIRCチャット・ログを見ていった。「何なんだ、こりゃ？」

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「メンバーのリストはあるか」ニンジャスレイヤーはモニタを覗き込んだ。「ある」タキは唸った。羅列されたニンジャは五人。「メイレインの野郎、頭湧いてンのか。ソウカイヤ以外のニンジャとこんな写真を撮ってりゃ、そりゃ詰められるッてもんだろう」「奴らは礼拝堂を築いて集まっていたようだ」

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「礼拝堂？」「もう集まらんだろう」破壊されたからだ。「こいつらの手掛かりを探せ、タキ＝サン」「そう簡単に個人情報が抜ける奴ばかりとは限らねえぞ」「やるんだ」「クソッ、お前……」タキは頭を掻き、それから、戸口で直立不動のオイランドロイドをイライラと指さした。「だいたい、これ何だ！」

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「これ呼ばわりは不適切だと思います」コトブキが言い返した。タキはニンジャスレイヤーを振り返った。「なんでこんなもん拾って来た！」「ついて来た」ニンジャスレイヤーは答えた。「ふざけるな……オレにどうしろッてんだ。ファックしていいか？」「自我があるのでダメです」コトブキが断った。

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「理由はわからんが、彼女がおれを助けた」ニンジャスレイヤーが言った。「理由は話しました」とコトブキ。「貴方はわたしを庇いました。ギブ・アンド・テイクです」「用が済んだら帰れ、帰れ」タキが言った。コトブキは「考え中です」と答えた。やがてUNIXがニンジャの一人の居場所を割り出した。

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「まあ……そうか」タキは椅子にもたれた。「こいつらがネオサイタマ在住とは限らねえんだ。クソ能天気野郎ども」「どこだ？」「他の連中の情報はサーチを遮断してきやがる。ちと骨だな。こいつから行っとくか？」「どこだ？」「どっちにせよ、方法を考えねえといけねえぞ」タキは座標図を指さした。