チーム中川(東大医学部附属病院の放射線治療チーム)の、福島第1原発事故に関連するツイートその2(3月20日以降)

その1(http://togetter.com/li/112142)の続きです、同じく順次追加してゆきます。
2
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

毎日新聞の「Dr.中川のがんから死生をみつめる」に今回の原発事故の放射線の影響の解説が掲載されました。onlineで閲覧できます。「放射線被害、(住民にとって)現状は皆無」 http://t.co/QVtc7pZ #housyasen #genpatu

2011-03-20 12:45:41
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

福島第一原発の冷却システムの復旧が視野に入ってきました。いまだ、予断を許しませんが、仮にこのまま、新たな放射性物質の放出が減っていくとすると、これまでに飛散した放射性物質のなかで、“セシウム(Cs)“が問題となるはずです。

2011-03-20 15:16:44
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

飛散した放射性物質のうち、最も多いのが、放射性ヨウ素(I-131)で、次が、放射性セシウムです。ただ、I-131は8日毎に半分になっていきますから、3ヶ月もすれば、ほぼゼロレベルになりますが、放射性セシウムの半減期はもっと長いので問題になります。

2011-03-20 15:23:58
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

福島市の水道水のなかに、2種類の放射性セシウム、Cs-134, Cs-137が検出されています。Cs-134の半減期は約2年、Cs-137では約30年です。とくに、Cs-137は土の中などに長い間存在して、放射線を出し続けるので注意が必要です。ただし、その量は極めて微量です。

2011-03-20 15:43:44
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

ちなみに、放射性セシウムの半減期が30年といっても、排尿や代謝によって体外に放出されます。その結果、人体に影響を及ぼす、実効的な半減期は100日程度といっていいのです。#housyasen #cesium

2011-03-20 15:57:01
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

では、昨日の続きです。放射性ヨウ素(I)やセシウム(Cs)による内部被ばくによって、具体的にどの程度の健康被害が起きるのでしょうか。内部被ばくについて考える前に、「放射能(Bq:ベクレル)」と「被ばく量(Sv:シーベルト)」の違いについて見てみましょう。

2011-03-21 11:13:07
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

Bq(ベクレル)というのは、一秒間あたりの放射性物質の崩壊数を表します。いわば「放射能」のことです。「崩壊」を理解するには、Cs-137を例に早野先生が作成くださった図を参照ください:@hayano http://bit.ly/gYdQ8s

2011-03-21 11:13:16
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

例えば、放射線物質であるCs-137(セシウム137)は、安定なCs-133に比べて中性子の数が多過ぎ、一個の中性子が陽子に変わります。これをベータ崩壊と言います。 @hayano http://bit.ly/gYdQ8s参照。 Cs-134(セシウム134)も同様です。

2011-03-21 11:13:24
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

崩壊した時に出てくるベータ線やガンマ線(放射線)が、人体にダメージを与えます。そのダメージを「被ばく量(Sv:シーベルト)」で表しています。「放射能(Bq:ベクレル)」と「被ばく量(Sv:シーベルト)」は密接な関係にあります。放射能が増えると被ばく量も当然増えます。

2011-03-21 11:13:31
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

食物に含まれる「放射能(Bq:ベクレル)」が、それを摂取する私たちにどれだけ「被ばく量(Sv:シーベルト)」を与えるかは、放射性物質の種類、取り込み方(吸引か経口か)、私たちの年齢などによって変わります。これらを考慮すれば「放射能(Bq)」から「被ばく量(Sv)」に変換できます。

2011-03-21 11:13:41
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

では、まずCs(セシウム)を見てみましょう。Cs-134(セシウム134)は、3月16日8時に福島市で水道水中に1kgあたり25Bq(ベクレル)観測されました。それ以降は観測されていません。

2011-03-21 11:13:49
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

被ばく量に変換するためのCs-134(セシウム134)の「変換係数」は、大人で0.019μSv/Bqです。つまり、1Bq(ベクレル)で、0.019μSv(マイクロシーベルト)の被ばく量であると計算できます。この「変換係数」は、私たちの年齢などによって変わります。

2011-03-21 11:13:56
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

では、3月16日8時に福島市での水道水を2リットル飲んだとしましょう。体内には50BqのCs-134が取り込まれます。「変換係数」を使うと0.95μSv(マイクロシーベルト)の被ばくです。同様にCs-137では、0.86μSvの被ばくです。両方足し合わせると、1.81μSvです。

2011-03-21 11:14:04
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

3月19日、ホウレンソウに1kgあたり524Bq(ベクレル)のCs(セシウム)が観測されました。Cs-134かCs-137か内訳はわかっていませんので半分ずつだと仮定します。このホウレンソウを100g食べたとすると、トータルで0.84μSv(マイクロシーベルト)の被ばくとなります

2011-03-21 11:14:12
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

ちなみに私たちは日頃から食物に含まれる放射性K(カリウム)による被ばくを受けています。それは1年で100〜200μSv(マイクロシーベルト)と推定されています。

2011-03-21 11:14:22
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

今推定したCs(セシウム)の被ばく量は、放射性物質を一度摂取したことによって70歳になるまでに蓄積されるであろう被ばく量を表します。もちろん年齢による代謝や食生活の違いによって個人差も生じると考えられます。

2011-03-21 11:14:29
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

ここで推定されたCs(セシウム)の被ばく量は少ないように見えますが、食品衛生法上の暫定(ざんてい)規制値を越えているのも事実です。規制値を越えた食物の流通を管理することで、国民の安全が確保されると考えています。

2011-03-21 11:14:38
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

放射性物質であるヨウ素I-131は各自で見積もりをされてみてください(追って回答を示します) #nakagawaquiz

2011-03-21 11:14:44
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

放射性物質であるヨウ素I-131の「変換係数(μSv/Bq)」は、0歳で0.140、1〜6歳で0.075、7〜14歳で0.038、15〜19歳で0.025、大人で0.016です。ホウレンソウ中に観測された量は、最大1kgあたり15,020Bqでした。 #nakagawaquiz

2011-03-21 11:14:54
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

ホウレンソウで観測された放射性物質の量は、ホウレンソウが洗われていない状態で測定されているようです。したがって今皆さんが見積もった被ばくは過大評価されているかもしれないと意識しておいてください。また、乳児はお母さんの母乳から摂取するとします。乳児は、ホウレンソウは食べられません!

2011-03-21 11:15:01
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

#nakagawaquiz 解答です。ホウレンソウ中に観測されたヨウ素-131の最大値として、1kgあたり15,020Bq(ベクレル)を用います(ベクレルに関しては3月19日のツイートを参照 http://bit.ly/eHcLCP )。そのうち100gを摂取したとします。

2011-03-21 18:51:09
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

1~6歳:15,020×0.1×0.075 = 112.65, 7~14歳:15,020×0.1×0.038 = 57.08, 15~19歳:15,020×0.1×0.025 = 37.55, 大人:15,020×0.1×0.016 = 24.03単位は(マイクロシーベルト)です

2011-03-21 18:51:47
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

お母さんがホウレンソウを100g摂取し、ヨウ素の1/4が母乳へ移るとして(http://j.mp/gVh9nC 原子力災害時における安定ヨウ素剤予防服用の考え方について)、15,020×0.1×0.25×0.140 = 52.57μSv(マイクロシーベルト)が被ばく量となります。

2011-03-21 18:52:16
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

乳児の方がお母さんよりも被ばくが多くなります。ヨウ素が母乳で濃縮されることが理由ではありません。乳児に影響を与えるのは、摂取した母乳中のヨウ素の濃さではなく蓄積量ですから、ヨウ素をお母さん以上に摂取することはあり得ません。乳児は大人よりも放射線に対して敏感なことが理由です。

2011-03-21 18:52:25
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

他の食物や自然界からの放射線をすべて考慮して、被ばく量を考慮すべきというご指摘をいただいていますが、その点はまったくその通りです。

2011-03-21 18:52:41