【夏の夜の夢・完全版】福間健二　fukuma10j

福間健二 @acasaazul

８月７日。去年は撮影のために天国の入口をさがして歩いた。今年は、友引。朝日の映る水へとつづく階段をおりる途中で休み、向こう岸の若いカップルを見る。かれらの会話。鳥の声。やさしい部分。犬が一匹寄ってきた。おい、ついてくると危ない目にあうぞ。（夏の夜の夢１）　#fukuma10j

福間健二 @acasaazul

小型のビーグル。去勢され、吠えないように喉も手術されている。でも、優雅に歩く。みずうみ。水面に光る目が「ぼくは妖精たちのなかの犬だ」とささやく。えっ、ディラン・トマス読んでるの？ だったら、世界地図食いちぎって明日のニュース教えてくれよ。（夏の夜の夢２）　#fukuma10j

福間健二 @acasaazul

犬じゃないものに恋をして、刺さるガラスの波をあび、身も心も傷ついている。汚れた地面を掘って、声にならない声でうめく。こんな思いをさせる飼い主はどんな「情欲」だろう。悪い出会いとくしゃみを連発させる町。来るなったら。ぼくも普通の男じゃない。（夏の夜の夢３）　#fukuma10j

福間健二 @acasaazul

ぼくは夜をさまよう嘘つき坊主。消えたいおじいちゃん、抵抗するおばあちゃん、別れたくないおじさん、別れたいおばさん。それぞれの待つ理由を発射する。時を味方にしてね。でも、今夜の仕事は複雑です。作者のまぶたに、ひとたらし。血を。きみの大事な人の。（夏の夜の夢４）　#fukuma10j

福間健二 @acasaazul

ディキシーズ。「裂ける」直前の、振動を長引かせて。ミッドナイト。何度目の涙だ。草を誤用して、生まれる前からのやりなおし。ランナーズ。妖精たちのいるケルトの森で、きれいな霊体で走った。それができないロンドン。炎。逃げるきみ、この世界はどうなる？（夏の夜の夢５）　#fukuma10j

福間健二 @acasaazul

国立市の、よい人たちと犬。大学のグラウンドから夜空に浮きあがるきみのしなう鞭に、それぞれの素直な導火線が発奮する。でも、花にはあたらないように。恋に落ちても冷静なシェイクスピアが言っている。「どんな小さな花々も、一輪一輪、涙をながす」。 （夏の夜の夢６）　#fukuma10j

福間健二 @acasaazul

月が泣いたら、だったよね。この苔むす斜面をすべって、ぼろ切れを大事にしまう人間の心におりていく。クモの巣、豆の花、辛子の種の妖精たち。八月という作品の「情欲」に降参するときだ。濡れた砂、サンダル、帽子を忘れても、笑顔で。ようこそ、人間様！ （夏の夜の夢７）　#fukuma10j

福間健二 @acasaazul

目がさめて最初に見たものに恋をする。うまくいく恋なんて、かんちがいと妥協の産物だから、それもいいだろう、なんて絶対だめ。この地上には好きになってはいけないものがある。作者ではなく、ひとりの人間として言う。クスリ使うな。好きも嫌いも本気の力で。（夏の夜の夢８）　#fukuma10j

福間健二 @acasaazul

８月15日。真相がまだいくらでも出てくる戦争特集。発見される手紙。魔物に愛され、見放された男たちの旅。66年さまよって、また負けている。ビーちゃん、かわりにぼくが吠えるよ。「わかっていた」連中の嘘よりも大きな嘘をつく何匹もの狼に同時になって。（夏の夜の夢９）　#fukuma10j

福間健二 @acasaazul

いよいよ真夜中。「獅子がうなり、狼も吠える」のはシェイクスピア。彼が書いてないきみのitの出番だ。花と蜜蜂、犬と手術メス、どう結婚してもいい。きみのそれに食いつこうと夢見ているぼくなのだ。現実界。ちゃんときみを見る霊感ゼロの「裂ける」まで。（夏の夜の夢10）　#fukuma10j