「小惑星『リュウグウ』のサンプルの科学的分析」の論文解説がなんかワクワクするワードたっぷり。「スカスカなスポンジ天体」「水酸塩の存在」他

こういうのワクワクするよね。
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彩恵りり🧚‍♀️科学ライター兼Vtuber✨おしごと募集中 @Science_Release

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はやぶさ2が持ち帰った小惑星「リュウグウ」のサンプルについて、科学的分析に関する最初の論文が2本発表されたよ!これまでどうしても汚染が避けられず、由来のはっきりしない隕石でしか分からなかった事が、汚染が全くないリュウグウのサンプルから色々分かってきたよ!リプで解説するね! pic.twitter.com/qOsyY3mnqx

2021-12-21 21:44:47
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[ニュースのポイント] ○太陽系誕生時の様子は、これまで隕石の分析から推定されてきたけど、どうしても限界があったよ。 ○今回、はやぶさ2が持ち帰った「リュウグウ」のサンプルについて、科学的分析に関する最初の論文が2本発表されたよ! ○有機物や水でできている私たちとも関係のある研究だよ!

2021-12-21 21:44:48
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JAXAの小惑星探査機「はやぶさ2」は、2020年12月6日に162173番小惑星「リュウグウ」のサンプルを載せたカプセルを地球に落下させたよ。はやぶさ2のサンプルリターンは世界的にも注目されているけど、それはリュウグウがC型小惑星と言う分類に属していて、そこからのサンプルを持ち帰った事が理由だよ。

2021-12-21 21:44:49
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地球が誕生したのは今から約46億年前。その当時の太陽系の環境は、「炭素質コンドライト」と呼ばれる炭素が豊富な隕石から間接的に知る事ができるよ。炭素質コンドライトは、太陽系誕生時から熱などの化学変化を起こす影響が少ないから、46億年前の状態をそのまま保存していると見られているよ。

2021-12-21 21:44:49
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また、炭素質コンドライトは有機物や水が豊富と言う特徴があるよ。こういう物質は熱で簡単に分解や蒸発してしまうから、変質するような影響を受けていない炭素質コンドライトは、地球にある有機物や水がどのようにもたらされたのか、という私たちにも絡むとても重要な情報を送ってくれるんだよ!

2021-12-21 21:44:50
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ただ、隕石が地球に落ちてくる前は宇宙空間のどの天体にあったのかを知る事はできないし、どうしても地球由来の汚染を完全に除去する事はできないよ。リュウグウは炭素質コンドライトと同じ組成を持つ小惑星と予想されるから、由来がはっきりしている汚染のないサンプルの持ち帰りは非常に重要だよ!

2021-12-21 21:44:50

サンプルの科学的分析

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今回JAXA宇宙科学研究所などの研究チームが公表した2本の論文は、リュウグウのサンプルを本格的に分析した最初の科学論文となったよ。リュウグウのサンプル全体量は5.4gで、1回目の着陸で得られた表層部のサンプルが3.2g、2回目の着陸で得られた人工クレーター付近のサンプルが2.0gあったよ。

2021-12-21 21:44:50
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貴重なサンプルの汚染や変質を防ぐために、サンプルは最初クラス10000やクラス1000のクリーンルーム内、次に真空下、その後高純度窒素の中で扱われたよ。そしてフーリエ変換赤外分光分析装置や近赤外ハイパースペクトル顕微鏡を使った、非破壊で照射エネルギーも小さい化学組成の分析が行われたよ。 pic.twitter.com/EzoXNH74gI

2021-12-21 21:44:52
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その結果、色々な事が分かったよ。まず、赤外線を使った化学組成の分析と、リュウグウの観測データとの比較で、2種類のサンプルの間や、サンプルとリュウグウのデータに大きな差は観られず、持ち帰ったサンプルがリュウグウ全体を代表する平均的組成だと分かったよ。まずこれが大きなポイントだよ。 pic.twitter.com/Xt7IlqipmC

2021-12-21 21:44:53
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はやぶさ2が2回に渡ってリュウグウのサンプルを採集したのは、そのままの表面の物質と、人工クレーターを作って飛び出した内部の物質に違いがあれば、それを区別するためでもあるよ。この分析で、少なくとも今回のサンプルでは宇宙空間に晒されているかどうかで組成に差が無かったと分かったんだよ。

2021-12-21 21:44:54
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粒子の大きさは、はやぶさ2がリュウグウに接近して撮影した画像データと比較すると、より細かい粒子の方が多い事が分かったよ。この偏りはの原因はリュウグウが持つ特性なのか、それともはやぶさ2のサンプル採集方法の問題か、はたまた持ち帰りから分析までの間で起きたのかは、現時点では不明だよ。 pic.twitter.com/yTpn34iMGe

2021-12-21 21:44:56
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そして大きさと重さから測った密度は1.282±0.231g/cm³だと分かったよ。これは炭素質コンドライトの中でも最も太陽系の平均組成に近いと言われるCIコンドライトの平均密度2.120g/cm³よりも低く、今まで知られている隕石の中では最も低密度の「タギシュ湖隕石」の1.660g/cm³よりも低かったよ! pic.twitter.com/vhbxNAhkhY

2021-12-21 21:44:58
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これは、粒子の本体の密度をCIコンドライトと同じと仮定すれば、空隙率が46%である事を意味するよ。リュウグウの観測データでは、リュウグウの空隙率は30%から50%と推定されているから、これは観測結果とは矛盾しない、という事になるんだよ!リュウグウはかなりスカスカなスポンジ天体だね!

2021-12-21 21:44:59
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リュウグウのサンプルは、近赤外線波長全体では2%から3%の反射率だけど、細かく波長を分けてみると、反射率がより低下している部分があるよ。これは、リュウグウのサンプルに含まれる化学物質が赤外線の特定の波長を吸収するからで、裏を返せばこの値から化学物質の組成を推定する事ができるよ。

2021-12-21 21:44:59
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特に強いのは2.715±0.005µmの波長で、これは水酸塩基 (OH基) の存在に当たるよ。他にも有機物 (CH基) に特徴的な3.3µmから3.5µmの波長や、氷やアンモニア (NH基) に特徴的な3.06µmの波長にも弱い吸収が観られたよ。これらの特徴から、リュウグウのサンプルの化学組成が見えてきたよ。 pic.twitter.com/VRWmi59e7p

2021-12-21 21:45:00
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吸収波長と組み合わせからすると、多く存在するのは炭素鎖の長い (重合度の高い) 脂肪族有機物と、ヒドロキシル化した窒素に富む (アンモニウムケイ酸塩やアンモニウム水酸塩) 有機物と考えられるよ。更に少量成分として炭酸塩が見つかったけど、これの存在はとても重要な発見だよ。

2021-12-21 21:45:01
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炭酸塩は普通は水質変成、つまり水が絡む化学変化が起きた可能性を示すから、有機物や水が多いとみられるリュウグウのサンプルでは重要な指標だよ。炭酸塩は全体の1%くらいを占めていて、全体が炭酸塩でできているものもあれば、ケイ酸塩が主体の粒子表面に小さな粒としてくっ付いているものもあるよ。

2021-12-21 21:45:02
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そして、炭酸塩の粒子が大きいほど、長い波長の赤外線を反射する割合が増加する傾向があったよ。この事から、炭酸塩粒子の基本的な組成は苦灰石 (炭酸マグネシウムカルシウム) や方解石 (炭酸カルシウム) で、マグネシウムやカルシウムの一部が鉄イオンに置換されている、と考えられるよ。 pic.twitter.com/3bBkHtBPUx

2021-12-21 21:45:03
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また、水酸塩の存在も水質変成の重要な証拠で、一見すると水の存在を思わせるけど、吸収波長の特性から水である可能性は低くて、水酸化酸化アルミニウムのダイアスポアである可能性が高いよ。そして最後に、コンドリュールやCAIと言った、高温に晒されると生じる構造は見つからなかったよ。 pic.twitter.com/Ct1RqKZhyI

2021-12-21 21:45:05
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全体として、リュウグウで検出された物質は、隕石のCIコンドライト、NASAの小惑星探査機OSIRIS-RExが探査しているベンヌ、小惑星帯の準惑星セレスでも似たようなものが見つかっているよ。これらの事から、リュウグウがどういう風にできたかが少しずつ見えてきたよ。

2021-12-21 21:45:05
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リュウグウはフィロケイ酸塩鉱物でできた黒っぽい岩石が主体で、その中には恐らく数µmの大きさの脂肪族有機物が分布しているよ。この粒子は、太陽系が誕生した46億年前に、太陽から遠くの方で生成され、その後ほとんど何の変化も受けずに現在まで維持された、タイムカプセルの状態にあると見られるよ。

2021-12-21 21:45:06
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また、多様な金属元素の炭酸塩を含んでいる一方で、コンドリュールやCAIは見つかっていない事から、水が絡む比較的低温の化学反応が進んだ岩石も混ざっているよ。リュウグウはCIコンドライトと似ている特徴を持ちつつ、隕石とも異なる特徴や、サンプル内でも違う特徴があると分かったんだよ! pic.twitter.com/D8pnGvheMG

2021-12-21 21:45:07
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