ツイッター連載『死ぬのがこわくなくなる話』その22始めます。ここからしばらくは、一つの(渡辺浩弐の)ツイッター論として読んで頂いてもうれしいです。 今のネットについて僕はこういうふうに考えています。って話です。
2011-09-03 00:09:07あなたの記憶を保存する、ということは、あなたの価値をデータベース化するということでもある。コンピュータやネットを使ってそれを行うとしたら、それは、あなたの分身をデジタル空間の中に作る、ということである。
2011-09-03 00:09:35脳に回線を繋いでそれを自動的に行うことはまだ不可能だ。しかし、数年後には、それに限りなく近いレベルのことが、ごく自然に日常生活を送りながら、無理なく、行えるようになると予測する。
2011-09-03 00:09:50ニューヨークタイムズ紙の2011年1月9日の記事「Cyberspace When You’re Dead」において、フェイスブックでは米国人ユーザーだけで毎日1000人以上の人間が死亡している、と報道されている。
2011-09-03 00:10:10フェイスブックでは「Memorized Profile」(追悼アカウント)という状態を用意している。これにセットしておけば、ユーザー死亡以後も、プロフィールなどはそのまま公開状態を維持、掲示板は書き込み可能な状態で開放される。
2011-09-03 00:10:26僕くらいの年齢になると知人友人が死ぬことが珍しくなくなるわけだが、個人のブログやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の日記を見ていると、死去した人物のページがそのまま残っていることがある。
2011-09-03 00:11:15もちろん闘病の過程が書かれていて死を予感させるものや、家族によって逝去の事実が書き込まれて決着がついているものもある。それでも閉じられていないのは、意図的にそのページを残しておこうということだろう。そういう場合はたいていコメント欄に友人からのお悔やみが書かれている。
2011-09-03 00:11:47故・飯島愛さんのブログ『ポルノ・ホスピタル』は現在もファンが集う場所として開放されている。コメント欄で愛さんにいまだに話しかける人が、日常を報告し悩みを打ち明ける人々がたくさんいる。彼女がまるで生きているように。サイトが、この世からあの世へ言葉を送るための郵便箱となっているのだ。
2011-09-03 00:12:58(『ポルノ・ホスピタル』見にいってみてください。最後の書き込みへのコメントが今67000超。読んでるといろいろ胸にくるものがあります
2011-09-03 00:18:58有名人でなければ、第三者からは、その人が死んでしまったかどうか事実がわからないのだ。日記の更新が止まっているブログはよく見かけるが、その人が更新をさぼっているだけなのか、死んでいるのか、判別すらできない。
2011-09-03 00:30:50本人が書かなくても別の人々がごく普通に書き込みを続けているせいで、活動が続いているように見えるところもある。現実世界ではなく多分ネットによって繋がった知人友人達だろう。彼らはその人物の死を知らないのだろうか。いや、知っていても、知らなくても、関係ないようにも見える。
2011-09-03 00:31:29周囲の人達にとってその人は死んでいないのだ。死後に初めてそのページを訪れた人でも、残された日記やプロフィールから、その人物の人となりを知ることができる。進行し続ける周囲からの書き込みにより、その人の考え方をうかがい知ることができるだろう。生きている人間の存在を感じるかもしれない。
2011-09-03 00:32:42最近はツイッターの普及によってその状況がさらにスピーディーに体感できるようになった。日常の中で思いつきをつらつらと書き続けているとそれが自分の経験と思考の記録となる。やがてそこに、自分の考え方のパターンが、そっくりバックアップされていくのだ。
2011-09-03 00:33:17有名人のbotはその人が言いそうなこと、あるいは過去に実際に発言したことを時間軸の上で次々とつぶやかせることによって、あたかもそこに当人が存在するような錯覚を抱かせるトリックだ。
2011-09-03 00:34:50ある特定の人物のつぶやきを集積し再生することによって、簡単に「疑似人格」が出現する仕組みである。これが成立することがネットが疑似人格のお立ち台と成り得ることを証明している。
2011-09-03 00:35:05少し前に、末期癌の人が、死の直前までツイートし続けるという実例があった。そのリアリティーに惹かれて多くの人々がフォローし、その死をネットを介して看取ることとなった。
2011-09-03 00:35:27それだけではなく、死後、その人物のbotが現れて、さらにつぶやきを続ける、という事態があった、本人のつぶやきをベースにしたbotにはリアリティーがある。その発言を聞き続けている人々にとって、その人は死んではいないのだ。
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