死ぬのがこわくなくなる話 第40話

Twitter上で連載中の渡辺浩弐さんの長編小説をまとめました。
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渡辺浩弐 @kozysan

当然、メールも、もう受けられない。しかし、全てはコントロールされているようだ。僕はホームの自動販売機の上、通行人の目の届かない場所に置かれていた手紙を手にしている。そこに簡単な地図と指示が書いてある。その通りに僕は動いている。

2011-09-23 22:32:23
渡辺浩弐 @kozysan

帰るという選択肢もあった。誰かを呼び出し手伝ってもらうということも。

2011-09-23 22:33:20
渡辺浩弐 @kozysan

しかし即座にこうして動かなければ、この機会は消滅することは間違いなかった。彼らの狙いは、僕に一切準備をさせないこと。手ぶらのままで彼らの世界に引きずりこむことなのだ。

2011-09-23 22:34:22
渡辺浩弐 @kozysan

僕はケータイを持っている。それでツイートを続けることが唯一にして最大の攻撃かつ防御となっている。

2011-09-23 22:35:39
渡辺浩弐 @kozysan

しかし、ここは地下だ。彼らは僕を電波の通じない場所に引きずり込もうとしている。もちろん僕に、ツイッターを使わせないことが目的だ。

2011-09-23 22:37:24
渡辺浩弐 @kozysan

手書きの地図は、わかりやすかった。まず、通路の脇に、関係者用の表示。扉があった。電車を乗り換えるために何度も通ったことがある場所だったのに、こんな扉があることをこれまで気づかなかった。開けて入った。通り掛かる人もいるが、誰も気にする様子もない。

2011-09-23 22:39:14
渡辺浩弐 @kozysan

コンクリがむき出しの廊下を通り金属製のらせん階段を下りる。

2011-09-23 22:40:29
渡辺浩弐 @kozysan

正直、かなりの恐怖を感じる。ただし、僕はこういう場所について若干の知識がある。昔、類似の施設を取材したことがあった。なんとか先に進めているのは、その経験のおかげかもしれない。

2011-09-23 22:41:41
渡辺浩弐 @kozysan

ガス管、水道管、電線、通信回線などの地下設備は地下鉄のトンネルと繋がっている。数年に1度くらいだろうが、メンテナンスのために人が入らなくてはならない場所もある。普段は全く使わないとしても、災害の時にこういう隙間が必要になる。都市の地下には空間がたくさんあるのだ。

2011-09-23 22:43:54
渡辺浩弐 @kozysan

階段が終わるとまた廊下。少し進むと、その先に小さなエレベーター。

2011-09-23 22:45:25
渡辺浩弐 @kozysan

いまここ これにこのエレベーターに 乗ったら間違いなく電波は途絶える。ツイートできなくなるだろう。では、また後で。

2011-09-23 22:49:16