【妖怪】野衾(のぶすま)について +野鉄砲、衾、モモンガ、元興寺(がこぜ)、百々爺(ももんじい)、そして野襖

妖怪・野衾について参考文献を見ながらまとめてみました。 類似する妖怪・野鉄砲について触れ、さらに衾についても触れました。 また、野衾の正体とされるムササビは昔、モモンガとも混同されて呼ばれていたため、モモンガについてもまとめました。 さらに、モモンガに関連のある元興寺(ガコゼ)の鬼や、百々爺まで言及。 最後に、音が同じ「野襖」についても少し触れてみました。
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アルム=バンド @Bredtn_1et

逆に http://t.co/fXePEd5J Wikipedia - 野鉄砲 のページには多田克己氏が一反木綿と同種だとする説が記載されているし。

2011-12-12 22:58:38

ムササビ・モモンガの同一視

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さて、話を戻す。「野衾」の名前は、これが膜を広げると氈衾(けおりのふすま / 夜具のこと)のようだからだという。『和漢三才図会 巻四十二』には「ムササビ」の項では、野衾の他の別名として「モミ」「モモガ」を記している。

2011-12-12 22:59:46
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漢字では「鼯鼠」の他、「鼺鼠」「耳鼠」「夷由」「飛生鳥」などを載せている。

2011-12-12 22:59:52
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また、「和名は毛美、俗に無左々比という。いま野衾という。また毛毛加(ももが)ともいう」「俗に野衾という。関東では毛毛加といい、西国では板折敷という」(『東洋文庫466 和漢三才図会6』)といっているように、モモンガとも同一視されていた。

2011-12-12 23:00:03

モモンガ(毛毛加)・モミ(毛美、毛朱)

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ここからはモモンガの話。『世界大博物鑑 第5巻 [哺乳類]』に拠れば(文中で『兎園小説』に拠れば、とある)、「モモンガ」は「モミ」が年老いてなったものを指すとしている。

2011-12-12 23:00:13
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モミについてもう少し。『源平盛衰記 巻第一』や『平家物語』では平清盛がぬえの鳴き声を出す獣「毛朱(もうしゅう)」を捕えた、という説話がある。

2011-12-12 23:00:25
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朝川鼎『善庵随筆 巻之一』ヌエ(※へんが空でつくりが鳥の字)の項では、毛朱は毛未の誤字だと述べている。一応「毛美(モミ)」に関連する話なので紹介(『図説 日本未確認生物事典』)。

2011-12-12 23:00:35
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モモンガの説話を挙げれば、『宇治拾遺物語』では後鳥羽院が住む水無瀬宮に毎晩光る物体が飛んでくる騒ぎがあったが、射落としてみると大きなモモンガだった、という話が記載されているようである(『世界大博物鑑 第5巻 [哺乳類]』)。

2011-12-12 23:03:15

妖怪や化け物を表す児童語としてのモモンガ

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さて、「モモンガ」はもとは「モモンクヮァ」の音で、モモンはモミが訛ったもの、クヮァは鳴き声を表したものだとする(『世界大博物鑑 第5巻 [哺乳類]』、『図説 日本未確認生物事典』)。

2011-12-12 23:03:30
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先に述べたように、「モモンガ」はムササビの別名として用いられていた他、近世では妖怪・化け物全般を表す児童語としても「モモンガ」が使われていたという。

2011-12-12 23:03:46
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例えば「夜更かししている悪い子は化け物に食われてしまうぞ」と子供を脅すところを、「夜更かししている悪い子はモモンガに食われてしまうぞ」と言っていたということになる。

2011-12-12 23:04:07
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『妖怪事典』に拠れば、妖怪を表す児童語の中に「モモ」「モモカ」「モモコ」「モモジー」「モモッカ」「モモンカ」「モモンジッカー」「モモンジャ」「モンカ」「モンシ」「モンモー」「モンモサン」「モンモンジャ」などが見える。…多い。

2011-12-12 23:04:22
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これは主に関東から中部地方にかけていわれるものだが、実はこれの関西バージョンもともいえるものがいたりする。それが、「ガコゼ」(ガコジ、ガゴ、ガゴーなどもあり(『妖怪事典』より))。鳥山石燕『画図百鬼夜行』にも「元興寺(ガコゼ)」として描かれている。

2011-12-12 23:13:16

ガコゼ

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『画図百鬼夜行』には何の解説も記されていないが、寺のような建物から出現している姿や、名前の漢字からして、元々は奈良県の元興寺に由来すると考えられている。

2011-12-12 23:13:33
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元々はいわゆる「道場法師」の伝説で元興寺に出現した鬼が由来ではないかという。参考: http://t.co/Dy6mbQ6A Wikipedia - 道場_(僧)

2011-12-12 23:13:41
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これが江戸時代に入ってから児童を脅す言葉として用いられ始めたという。先述の通り主に関西で用いられていたというが、茨城県のように一部飛び地的に使われている場所があるようだ(『妖怪事典』より)。

2011-12-12 23:14:18
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ただ、柳田国男は『妖怪談義』「妖怪故意」で名前について「ガコゼ=元興寺」説を比定し、化け物が「咬もうぞ」と言いながら出現したことが由来、としていたようで、名前の説については異説もある模様(『妖怪事典』)。

2011-12-12 23:14:26

百々爺(モモンジイ)

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さて、ガコゼの説明が終わったのでもう一度モモンガに話を戻す。鳥山石燕『今昔画図続百鬼』には「百々爺(ももんじい)」という妖怪が描かれている。

2011-12-12 23:16:45
アルム=バンド @Bredtn_1et

野原で風の凄いときに出現する妖怪で、長い杖のようなものを持った老人の姿で、これに遭えば必ず病気になる、としている。ただ、この妖怪の解説の最初には「百々爺未詳」と記している。また、野衾のことである、とも言っており、正直よく分からない。

2011-12-12 23:16:57
アルム=バンド @Bredtn_1et

鳥山石燕はこの妖怪の名前は「モモンガ」と「ガコジ(ガコゼ)」の二つを合わせたものではないか、とも言っている。なのでこの妖怪について説明する都合上、ガコゼを先に説明させて貰いました(汗)。

2011-12-12 23:17:21