30歳で労働組合（高教組）の責任者になった教員が体験した2年間の回顧録が「労働組合の存在意義」を分かりやすく伝えていて興味深い

MASA(航空宇宙・軍事) @masa_0083

感動した。 このツリー、ぜひ最後まで読んで欲しい。労働組合の本当の姿、「労働者の権利のための組合」がどういうものか、よく見える。 本来、労働組合とはこういう正当な組織だったはずなのに、どうしてほとんど関係ない政治団体化してしまったのだろうか……。 x.com/noeasywalk/sta…

佐伯 佳祐 @noeasywalk

実は、30歳にして自治体の教職員組合の書記長を務めた。その任期がついに先日満了した。「組合」といえば皆さんにとって煙たい話題だろう。よくわかっている。しかし、今の私には書き残さざるを得ない話なので、ここにそうさせてもらう。多分だいぶ長くなるけれど、お付き合いいただけるとありがたい。

2024-05-02 23:18:50

佐伯 佳祐 @noeasywalk

実は、30歳にして自治体の教職員組合の書記長を務めた。その任期がついに先日満了した。「組合」といえば皆さんにとって煙たい話題だろう。よくわかっている。しかし、今の私には書き残さざるを得ない話なので、ここにそうさせてもらう。多分だいぶ長くなるけれど、お付き合いいただけるとありがたい。

佐伯 佳祐 @noeasywalk

3年前に話が来た。市立高校の小さな組合では役職を輪番で回しており、うちが書記長の番だった。誰もやりたくない仕切り役。「やってくれんか」の言葉に、押し付け合いになるよりはと、ほとんどノリで引き受けた。30代書記長は異例のことで、史上最年少であったそうな。

佐伯 佳祐 @noeasywalk

新自由主義は労働組合を冷遇したので、過去30年、衰退の一途と辿っている。今や全国の労組組織率は平均16%である。特に、教職員組合といえば思想的で過激な闘争で悪名高い。なかでも「広島の組合」といえばそのイメージの典型だろう。私はそれをよく知っている。なぜなら、両親がその一員だったから。

佐伯 佳祐 @noeasywalk

過疎化した田舎の古い家というのは、不必要に敷地が広く部屋数が多いものだが、私の実家も御多分に漏れなかった。その部屋部屋なかにひとつ、「思想色の強い」部屋がある。本棚に並べられたそれらの本は、とても分厚く、題名からものものしい。両親がそれらの本を開いているのは、見たことがない。

佐伯 佳祐 @noeasywalk

本は、恐らく両親が若き日に買わされたものではないかと推察する。その「若き日」の頃、幼少期の私の居場所はしばしば両親が働く学校にあった。学校の遊具で遊び、親の同僚に可愛がってもらった朧げな記憶がある。そういう子育てが許されていたのか、いまとは決定的に違うほど全てが緩かったのか…。

佐伯 佳祐 @noeasywalk

しかし、このような思い出はある時点で断絶している。ある時からピタリと、幼き私は親の職場には行かなくなり、「あの部屋」はタブーの空気を纏うことになったのだ。当時としては何を不思議に思うこともなかった。何かを疑う主体性などなかった。ただ気づいたら、あの部屋は禁忌になっていた。

佐伯 佳祐 @noeasywalk

だいぶ後に、私はそれが、平成10年の広島県への「是正指導」の結果であったことを知った。君が代斉唱等を巡る思想的闘争の果てに、ある高校の校長が自殺した。広島の組合は文科省からの徹底した「指導」により、「活動」はほぼ停止、壊滅状態に転落することになったのだそうな。私が7歳の時である。

佐伯 佳祐 @noeasywalk

時を経て私も教員になった。親からの最初のアドバイスは「組合には入るな」だった。その通りにした。しかし、私を勧誘した５０代の先生が委員長で、この人がかっこよかった。上に物申す強さを持ち、逆に管理職が言えないことを代わりに言って全体のバランスをとる人だった。話を聞いてみることにした。

佐伯 佳祐 @noeasywalk

広島市立高教組は、上部団体を持たない。日教組、全教。教職員組合の二大組織だが、それらとの関係を持たない。思想闘争はしない。労働問題への対応と親睦にメインを置いた組合だった。だからこそ、「是正指導」の主対象にならず、焼け野原に残ったのだった。組織率は、21世紀としては驚異の70%である

佐伯 佳祐 @noeasywalk

教員2年目、入ってみることにした。そこから数年間は、年に1回学校対抗のソフトボール大会をして親睦する程度の参加だった。そして3年前、書記長の話が来て、私は自身の親から入ることさえも反対されていたこの組合の、リーダーをすることになったのだった。

佐伯 佳祐 @noeasywalk

さて、そもそも書記長とは何をするのだろうか。基本的には組合組織の事務方全般である。日頃は他の団体との連携や折衝。各種会議を主催し、各校の困りごとを集約し、事案に対応し、教育委員会との交渉を行う。

佐伯 佳祐 @noeasywalk

一番大事な給与の交渉は、教員だけの問題ではないので、市の他の組合と連帯して行う。これを市労連という。市役所、水道、病院、義務教育の教員、学校事務・業務員の方々と一緒になって闘うわけである。相手は市そのもの、場所は市役所、具体的な人でいうと企画総務局長ら重役たちである。

佐伯 佳祐 @noeasywalk

水道局の委員長は、中尾彬のような渋いオーラがある。市民病院の委員長は、和田アキ子のような力強い風格があった。正直、最初はこのキャラクターの濃さに、どんな闘いを繰り広げるのかワクワクした。しかし、いざ交渉が始まると、その語りにはひたすら耳を傾けるのみだった。

佐伯 佳祐 @noeasywalk

切々と語るのだ。コロナ禍の中で、どれほど看護師たちが疲弊しているか。限られた人配、固められたシフトの中で、どれほど休みを取ることを制限され、我慢させられているかを。どれほど安い賃金に甘んじさせられているのかを。聞いて理不尽と思わないことができない。

佐伯 佳祐 @noeasywalk

「闘い」からイメージするような話し方ではない。非常に丁寧かつ説得的な言葉で語る。適度に感情がこもっている。演技ではない、現場からきた本物の感情だ。看護師はナース服で、業務員は業務服で語る。私の「交渉」という言葉のイメージは大きく更新されることになった。「交渉」であり「陳情」だ。

佐伯 佳祐 @noeasywalk

こうした交渉を数ヶ月かけて行う。市労連交渉では、「中尾彬」さんや「和田アキ子」さんら闘いを熟知したスタープレーヤーに主導してもらい、私のような者はただそこにいるだけである。しかしそれが大事である。一般の組合員も詰めかける。数で声の大きさが決まる。