「ミュンヒハウゼン症候群」「代理ミュンヒハウゼン症候群」と「物語戦術」
- SaitoSeiji
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実は日本でのMSbpが実際にどのような経過をとっているのか。情報が少なく良くわからない。しかし、児童虐待の先進国である英国では、MSbpをめぐる裁判が多発しているらしく、それに関する学術論文も発表されている。その多くは虐待の疑いをかけられた母親が無実を求めて争うという構図。
2012-03-10 22:35:25MSbpをめぐる英国での状況を示す興味深い論文として、Clive Baldwinという著者による「物語分析と代理ミュンヒハウゼン症候群への異議申し立て」という論文がある。この論文は、MSbpとして告訴された8名の母親への詳細なインタビューと広範な文書調査による研究報告である。
2012-03-10 22:44:46この論文はhttp://t.co/ScQvjJrm に収録されている(←宣伝多謝)が、ポストモダンな方法論によってなされた研究であり、MSbpについての統一的な結論を導くというものではなく、「虐待の物語」と「無実の物語」という相いれない物語の衝突として全体を描き出している。
2012-03-10 23:02:08代理ミュンヒハウゼン症候群は、医学的観点、心理的観点、社会学的観点、法律論的な観点などからの、複雑な議論を喚起し得る現象であることはまちがいない。物語論的なアプローチはその全体像に接近する有力な方法論になりうると思われる。(論文の結語みたいになってしまった。・・寝ようzz)
2012-03-10 23:18:09安富先生が提唱されている「東大話法」の項目のうちのいくつかは、物語戦術と呼ばれている方法に属する「回収:recuperation」という概念と一致するように思われる。「回収」とは「一つの物語が自らの正当性を示すために他の物語の見方を解釈するプロセス」
2012-03-11 21:52:26例えば「ミュンヒハウゼン症候群」とは「自分では自覚せずに嘘をつく人」という物語が社会的に流布している状況下では、自分と異なる主張をする人に対して「あいつはミュンヒハウゼン症候群だ」と言うことによって、相手の全ての主張を「嘘つきの物語」に「回収」してしまうことができる。
2012-03-11 22:01:33例えばあなたが医師に「あなたはミュンヒハウゼン症候群(MS)だ」と言われたとする。あなたは「とんでもない。私は自分の病気をでっちあげてなどいない!」と、怒って否定したとする。すると医師に「そうやって怒って否定するのが証拠」と言われ、あっさりミュンヒハウゼン物語に回収されてしまう。
2012-03-11 22:40:51「回収」とともに良く用いられる物語戦術は「人格査定:Character work」と呼ばれる。要するに自分とは異なる物語を語る人の人格を道徳的に評価することで、相手の物語の価値を一遍に無効化してしまおうとする戦術だ。「あいつはミュンヒハウゼン症候群だ=嘘つきの異常者だ」ということ
2012-03-11 23:07:25物語戦術としての「人格査定」や「回収」において「ミュンヒハウゼン症候群とは本当に嘘つきの異常者なのか?」「その人は本当にミュンヒハウゼン症候群なのか?」ということは重要ではない。相手の物語を無効化し、自分の主張する物語を正当化することだけが目的なのである。
2012-03-11 23:12:30