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ゴフマンはなぜ放射線のリスク評価法として、絶対危険度より相対危険度を選んだのか?

ジョン・ゴフマンは著書「人間と放射線」の中で一貫して相対危険度あるいは最大1ラド当り過剰率を用いて放射線による過剰発癌リスクを評価しています。今回その理由を素人なりに考えてみました。 細かい誤差を避けようとして絶対危険度でリスクを評価しようとすると、あらゆる因子を正確に評価・分類し、必要なものを足し算で計算していかなければならない。しかし因子間の相互関係などもあり、その分類作業は困難を極めるでしょう。 一方相対危険度は、仮定や近似を用いて比例計算つまり掛け算でリスクを評価していく。少しの誤差が出ることは最初から覚悟しますが、計算が比較的簡便で致命的な誤差が出にくく、公衆の被曝リスクの評価には向いているということではないのでしょうか。
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放影研の資料より

スカルライド @skull_ride

(1)絶対リスク(AR):観察期間にわたって集団中に生じた疾患のうち、放射線被曝により影響を受けた総例数または率であり、10万人年当たりあるいは10万人年Gy当たりで表されることが多い。

2012-06-11 12:19:45
スカルライド @skull_ride

(2)相対リスク(RR):性・年齢などを一致させた対照群と比較して被曝群のリスクが何倍になっているかを表すもの。相対リスクが 1であれば放射線被曝はリスクに影響を及ぼしていないということを意味する。

2012-06-11 12:20:01
スカルライド @skull_ride

(3)過剰絶対リスク(EAR):放射線被曝集団における絶対リスクから、放射線に被曝しなかった集団における絶対リスク(自然リスク)を引いたもの。

2012-06-11 12:20:20
スカルライド @skull_ride

(4)過剰相対リスク(ERR):相対リスクから 1を引いたもので、相対リスクのうち調査対象となるリスク因子(この場合は被曝放射線)が占める部分。

2012-06-11 12:20:34

以下、人間と放射線より

スカルライド @skull_ride

(5)追跡期間が限られていれば、単位被曝線量当りに発生するガン死者の予測は、相対危険度法に比べ絶対危険度法のほうが常に小さい。

2012-06-11 12:20:52
スカルライド @skull_ride

(6)初期に年間5件の過剰ガン死が観察されたとする。ガンの自然発生率が年とともに上昇し、その上昇速度はしだいに急になっていくにもかかわらず、絶対危険度法では今後とも年間5件の過剰ガン死が観測されるとしか考えない。

2012-06-11 12:21:09
スカルライド @skull_ride

(7)放射線によるガン死の数が長年にわたり同じであると考える絶対危険度法からは、誤った結論しか得られない。そのためこの本では絶対危険度法を使用することはない。

2012-06-11 12:21:23
スカルライド @skull_ride

(8)相対危険度法が、放射線とガンとの関係を説明する完璧な方法か否かを決めるには、なお長期の追跡と多くのデータが必要である。しかし現段階の証拠によれば、相対危険度法が最良の方法と言える。

2012-06-11 12:21:37

絶対危険度と相対危険度、実際の比較

スカルライド @skull_ride

(9)アーチャーら(Archerら,1976)はウラン鉱山労働者を非喫煙者と喫煙者それも喫煙量別に分け、それぞれの肺ガン率を求めた。 http://t.co/Q5Xhwd3v

2012-06-11 12:22:35
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スカルライド @skull_ride

(10)絶対危険度法で扱うとどうなるか→非喫煙者でウラン鉱山労働者であることによって増加する肺ガン死の数は7.5件。喫煙者では一般人の肺ガン死率は265件。喫煙者でかつウラン鉱山労働者の肺ガン死率は265+7.5=272.5件。ところが実際には700件観察されている。

2012-06-11 12:23:52
スカルライド @skull_ride

(11)このように喫煙者の中にもラドン娘核種に被曝して増加する肺ガン死率は実際には435件(700-265)に達する。(絶対危険度ではこれを喫煙による肺ガンに分類してしまうという事か?orz)

2012-06-11 12:24:11
スカルライド @skull_ride

(12)一方相対危険度法では、1ラド当りのガン危険度の増加は自然の危険度に比例すると考える。喫煙がガンの自然危険度を増加させるとき、相対危険度法に従えば放射線は喫煙者についても非喫煙者についても同じようにガン危険度を増加させるはずである。

2012-06-11 12:24:28
スカルライド @skull_ride

(13)非喫煙者の肺ガン死率の比=20/12.5=1.6、喫煙者の肺ガン死率の比=700/265=2.64。誤差が出たが、先に示した絶対危険度法に比べれば、はるかによく現実を表している。誤差の大きな理由は非喫煙者の肺ガン死数が少数であったためであろう。

2012-06-11 12:24:46

最大1ラド当り過剰率の普遍性

スカルライド @skull_ride

(14)ある年齢で被曝した場合の最大1ラド当り過剰率について、日本人から得られた値が、スウェーデンや米国あるいは他の国の同年齢の人々にも当てはまるという科学的法則はない。しかし調査データからみると、国により違いはあってもわずかなようである。(感覚的には納得できるかな・・)

2012-06-11 12:25:03
スカルライド @skull_ride

(15)この本では世界中のデータを総合的に評価する。そのため最大1ラド当り過剰率は、被曝時の年齢さえ同じなら、どの国での被曝にも適応できる普遍的なものであると仮定する。この仮定は手近な実際のデータと矛盾しない。

2012-06-11 12:25:21
スカルライド @skull_ride

(16)自然発生の年齢別ガン死率が国により違うのは確かである。しかし、自然発生ガン死率をこえる過剰率の値は、各国のデータを最大1ラド当り過剰率という共通の尺度に直して比較すると、国による差が認められない。

2012-06-11 12:25:37
スカルライド @skull_ride

(17)すなわち最大1ラド当り過剰率は、自然発生ガン死率の違いには関係しない。従って世界中のデータを総合評価して得られる最大1ラド当り過剰率の値は、どの国にも適応できると考えられる。

2012-06-11 12:26:02