そうして作られた細かいマニュアルを、「誰かをほめるための道具」として駆使できることが、講師になるための条件

心肺蘇生の講習会に出席するなど。何事においてもそうなのだけれど、見るのはたやすい。学ぶのはちょっと難しい。教えるのはさらに難しく、そのまた奥にようやく、到達点としての「ほめること」がくる。誰かを肯定するのってほんとうに難しい
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medtoolz @medtoolz

心肺蘇生の講習会に出席するなど。何事においてもそうなのだけれど、見るのはたやすい。学ぶのはちょっと難しい。教えるのはさらに難しく、そのまた奥にようやく、到達点としての「ほめること」がくる。誰かを肯定するのってほんとうに難しい

2012-07-22 17:02:29
medtoolz @medtoolz

心肺蘇生の手順は教科書に定められていて、教える側のインストラクターマニュアルはもっと細かく定められている。どんな項目を、どの順番で教え、それを何分間かけて喋るのか、実習で学んでもらうことと、学びに必要なシナリオも全部決まっている。

2012-07-22 17:03:51
medtoolz @medtoolz

講師の側は、悪い表現をすればマニュアルをただ朗読して、シナリオを演じているだけなのだけれど、じゃあそこまで自らの振る舞いを外注して、余ったリソースで何をすればいいのかといえば、受講生の「いいところ」を見つけることなのだと思う

2012-07-22 17:04:48
medtoolz @medtoolz

間違えを指摘するのは、いいところを見つけることに比べればはるかに容易であるといえる。「それは間違っているよ」という一言は、手順書の暗記が曖昧であっても、その手順に慣れてさえいれば容易にできる。ところが「それは正しいよ。よくできているよ」というためにはもっと注意深くないといけない

2012-07-22 17:06:06
medtoolz @medtoolz

正しくできたことを肯定して見せるためには、それが正しくできたといえる状況をあらかじめ定義しておかないと難しい。ものすごく能力の高い講師なら、変化する状況においても誰かを褒めるに足るだけの注意力を維持できるのだろうけれど、そんな人は少ない。

2012-07-22 17:07:08
medtoolz @medtoolz

「人をほめられるいい講師」を、再現性高く生み出すために、心肺蘇生のインストラクターマニュアルはすごく細かく書かれている。その細かさが、講習生に何をさせればいいのか、その時予見できる正しい行為は何なのか、どのタイミングに「ほめるポイント」が来るのかを、平凡な講師にも教えてくれる

2012-07-22 17:08:34
medtoolz @medtoolz

細かいマニュアルを完璧に暗記できたから講師になれるのではなく、その行為に熟達しているから講師になれるわけでもなく、そうして作られた細かいマニュアルを、「誰かをほめるための道具」として駆使できることが、講師になるための条件なのだと思う

2012-07-22 17:09:27
medtoolz @medtoolz

細かいマニュアルは、偉そうにするためではもちろんなく、実はたぶん講習生からの質問に答えて見せるために作られているわけでもなく、細かくすることで講習生の行動に制約を増やし、その上で「こう見なさい。こうほめなさい」という講師の注意力を集中させるためにある

2012-07-22 17:10:39
medtoolz @medtoolz

細かいマニュアルに基づいて、講習生の細かいミスを指摘してみせるのは悪い講師、あるいはインストラクターマニュアルの悪い使い方であって、そのあたり研修医の頃に受けた心肺蘇生の講習会と、いまのそれとはずいぶん異なる。徹底的にほめる、拍手することにみんなすごく気を使う

2012-07-22 17:11:55
medtoolz @medtoolz

ああいうのはアメリカからの輸入だからこその部分もあるのだろうけれど、今の講習会はどこかこう、自己啓発セミナーっぽい空気がある。あれなんかも人を一度全否定して、その上で徹底的に全肯定してみせて、講習生を揺さぶる

2012-07-22 17:13:11
medtoolz @medtoolz

誰かに何かを伝えたいなと思った時には、その伝えたい何かがすごいことは、もしかしたらあまり意味が無い。「それを使って、それを伝達することで、どうしたら相手を肯定することができるだろうか?」と考えながら講習会を企画するのが正しいのだと思う

2012-07-22 17:14:15