<完全版>ワシントンDC国際エイズ会議の記録

一昨日投稿した「ワシントンDC国際エイズ会議の記録」に、会議の総括1~4を加え「完全版」としました。
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浜崎 伊南 HAMASAKI Ina @HAMASAKI_Ina

かつて強力な科学的アドボカシーで「3×5」実現に道を開いた国境なき医師団(MSF)は今回も積極的。昨日夜のサテライトセッションでも、「早期治療開始は中長期的にコストを引き下げる」とシミュレーション。確かに、問題の枠組みは10年前と共通する。市民社会にかつての馬力はあるかが課題。

2012-07-26 04:57:13
浜崎 伊南 HAMASAKI Ina @HAMASAKI_Ina

今回の国際エイズ会議では移住労働者の問題については全く低調。この課題を扱うセッションは一つ、中身も新味なし。新興国の台頭で人口移動がダイナミックになっているのと裏腹に、運動も研究も停滞。背景には、対策強化が国レベルに集中し、国境を越えた人々の課題が抜け落ちたことがある。

2012-07-26 06:58:53
浜崎 伊南 HAMASAKI Ina @HAMASAKI_Ina

今朝はアフリカのLGBT運動に関するセッション。HIVとの関係でLGBTの運動が拡大し、人権や公衆保健と結び付けてしっかり語る活動家も増えている。ソドミー法の存在の一方、国家エイズ戦略ではMSMを施策の対象として明記する国が増え、MSMの運動はそれとともに発展していることを知る。

2012-07-26 21:48:20
浜崎 伊南 HAMASAKI Ina @HAMASAKI_Ina

東アフリカからの発表は内容豊富。タンザニアでは、国家エイズ戦略で同性間性行為の合法化が明記されたという。一方、全てのパネリストが、エイズ文脈でMSMの活動に資金が供給される一方、LBTIが無視されていると指摘、公衆保健アプローチの限界に対して権利ベースアプローチの導入を求めた。

2012-07-26 22:02:27
浜崎 伊南 HAMASAKI Ina @HAMASAKI_Ina

今日のセッションでも提起された「MSM=エイズ・公衆保健」アプローチと「LGBTI=人権」アプローチの相克は、90年代のインドや東南アジアでもよく見られた構図。但し、外部資金への依存度が高く、同性愛の問題が過剰に政治焦点化している昨今のアフリカは、不確定要素がより高い様に思える。

2012-07-27 08:00:24
浜崎 伊南 HAMASAKI Ina @HAMASAKI_Ina

このセッションでは米国国務省の民主化・人権・労働局からパネリストが出席。オバマ政権下でLGBTの人権は優先課題で、人権侵害などの記録化の能力向上、大使館・領事館を通じての人権擁護、LGBT団体への少額助成を行っている。確かに少額助成は重要。「わずかな資金でも『違い』を作り出せる」

2012-07-27 08:05:08
浜崎 伊南 HAMASAKI Ina @HAMASAKI_Ina

アフリカのLGBT運動は、迫害に悩みつつ、各国で制定された「国家エイズ戦略」でのMSMの存在の認知によって「場」を確保し、「人権」の観点からの支援で活動の幅を広げている。UNAIDS等がMSMなどエイズの影響を受ける社会的少数派の人権を断固として擁護してきたことは称賛に値する。

2012-07-27 08:11:10
浜崎 伊南 HAMASAKI Ina @HAMASAKI_Ina

一昨年、保健人材の研究を共同で行った米国のカウンターパートが、今、米民主党でアフリカ外交政策を担当ということで、米下院の議員会館を訪問。来客が引きも切らず、偉い人になったのだと分かる。連邦議会議事堂はあまりに巨大。日本にこれに対抗できる建造物と言えば、天理教本部ぐらいか…?

2012-07-27 08:17:34
浜崎 伊南 HAMASAKI Ina @HAMASAKI_Ina

午後に一番大きな会場で開かれた「世界基金:次の5年」の特別セッション、米国主導とも言われる世界基金の改革への市民社会の怒りが爆発。ハラミーヨ事務局統括代表が演台に進み出たところ、「各国のニーズを制限するな」「需要主導の原則を守れ」のプラカードとともに数十人の抗議部隊が檀上を占拠!

2012-07-27 08:18:56
浜崎 伊南 HAMASAKI Ina @HAMASAKI_Ina

市民社会の檀上占拠は次のグースビー・米国エイズ調整官の番になっても終わらず。第3のパネリストである中東・北アフリカ市民社会代表のラフィフさんが「世界基金は需要主導の原則を守れ」と強く主張し、「需要主導の宣言」と題する文書をグースビーとハラミーヨに突き付けてようやく終わった。

2012-07-27 08:20:06
浜崎 伊南 HAMASAKI Ina @HAMASAKI_Ina

同じ会場で、続けて市長や議員のエイズ対策への役割に関するセッション。川田龍平・参議院議員が出演、英語でしっかりと自分の経験や治療アクセスの重要性について語り、参加者を勇気づけた。全体として日本人の存在感が希薄な中、貴重な貢献か。私はその様子をデジカメで動画撮影、若干肩が凝った…。

2012-07-27 08:26:13
浜崎 伊南 HAMASAKI Ina @HAMASAKI_Ina

今回のエイズ会議の総括1.今回の会議は、「エイズ・フリー世代の実現」「エイズを終わらせる」という形でエイズへの取組のモメンタムを再構築することには成功。これは「エマージェンシーからサステイナビリティへ」といった言いぐさでエイズの優先順位を下げるという流れを封じる上で意味はあった。

2012-07-28 18:20:51
浜崎 伊南 HAMASAKI Ina @HAMASAKI_Ina

一方、この流れは、「治療=予防」「検査後即治療」などの形で、少なくとも短・中期のコスト上昇や「エイズ対策の医療化」を必然化する。エイズ関連の市民社会も、内発的な要素を失い、西側ドナー依存と活動の賃労働化が世界的に進行している。2000年当時とは、問題構成も運動も似て非なる状況。

2012-07-28 18:27:03
浜崎 伊南 HAMASAKI Ina @HAMASAKI_Ina

西側市民社会は「エイズの医療化」促進に舵を切った。それは市民社会がより大きな責任を負ったということを意味する。まず、過酷な世界経済環境の中で、より多くの資金の動員を達成する責任。次に、知的財産権と治療アクセスの問題について、「エイズを終わらす」ための政策一貫性を実現する責任。

2012-07-28 18:32:26
浜崎 伊南 HAMASAKI Ina @HAMASAKI_Ina

今回のエイズ会議の総括2.MSM、セックスワーカー、薬物使用者などカギとなる人口層のエイズへの取り組みが脆弱層の人権問題としてドグマ化され、エイズ対策としても文化運動としても陳腐化の傾向。コミュニティの擬似化、陳腐化に対して、どう活力ある運動を現場から再生できるか。難しい課題。

2012-07-28 18:40:03
浜崎 伊南 HAMASAKI Ina @HAMASAKI_Ina

今回のエイズ会議の総括3:エイズ・ラディカリズムは途上国勢との連携強化、大規模なデモやFTT、FTA、世界基金に関する直接行動で一定再生。但し、米民間財団への資金依存、英語主導、旧来のラディカリズムの模倣にとどまる運動スタイルなどの課題は放置。責任が重くなる中で懸念は多い。

2012-07-28 18:47:31
浜崎 伊南 HAMASAKI Ina @HAMASAKI_Ina

国際エイズ会議の総括4:今回の会議では、日本の存在感はゼロに等しかった。日本の国際保健政策はエイズへの取り組みを青年海外協力隊に押し付けた挙句、その時その時の流行語に乗ることを使命と勘違い。私自身、G8などの文脈で開発援助全体を追いすぎ、道を間違えた。本業に集中する方法はあった。

2012-07-28 21:27:30
浜崎 伊南 HAMASAKI Ina @HAMASAKI_Ina

日本の市民社会も、国際・国内の意図せぬ分断がある上、世代的な問題も大きい。国際はアジア・アフリカの現場と政策を結ぶ作業が必要、それには政策・現場のNGOともに目的意識を持って連携することが重要。また、国際・国内とも、40代以下の世代が連携して発信力を圧倒的に強化する必要がある。

2012-07-28 21:32:21