◇ヤンデルとクルッテル◇第二幕

@nyokariya

【通り抜けてみたものは】 One thing was certain, that the white kitten had had nothing to do with it-it was the black kitten's fault entirely.

カフェケイネス @cafe_z_kayneth

(次は何処から始まるのだろう。妹の手を掴み崖から落ちながらも思案する。死は毎回辛く痛く苦しいが直前まで戻る事を考えれば。それでも、それでも妹の手は離さず) (突如ばりばりと耳を劈く音。下肢に走る鋭い痛み。視界は何時の間にか黒に塗りつぶされ、ただ何かを突き破った事のみ感じられた)

カフェケイネス @cafe_z_kayneth

…っ、たぁ、 (続いてどすんと尻に衝撃を感じた所で身体が止まった。無意識下で閉じていた碧眼を恐る恐る開ければ目の前に広がるは食卓で) (何故と疑問に思ったところでようやく自分が椅子に座っている事に気付く。右手の感触追いかけ右を見遣れば妹も同じように着席しており心からの安堵)、

@nyokariya

ねぇ、なに、…ここ、なに？ (かたかたと繋ぐ左手は震え、前髪の隙間からもうかがえる表情は怯えを模したものであり) (木の内部をくり抜いて作ったような空間には、自分達を含め五人の"お客様") (轍が"お客様"の身体の数か所に絡まっている状態は、見るからに不自然だ)、

カフェケイネス @cafe_z_kayneth

ねえカリコ、っひ、！！ (此処を出ようと震えが伝わる右手を引き椅子を降りようとした刹那何かが身体を拘束する。ぎちぎちと身体に食い込むそれは姉妹以外の三人の身体にも同様に巻き付いているもので) (身動き出来ず隣を見れば妹の身体にも同じく巻き付き食い込んでいた)、

@nyokariya

【さぁさぁ！オーダーは何にしましょう！】 (突然空間の奥からがさがさと音を立てながら、パイプをくわえた木が歩み寄る。いやこの事実自体本来ならば恐怖に値するが、今はそれどころではない。) え、え！？ (差し出されたメニューらしき木の板は、確かにイギリス英語ではあるものの、)

@nyokariya

(殴り書きのような字体に加え、インクの掠れた万年筆で書いたような。端的に言えば読みづらいことこの上ない字の固まり) (視認のしづらさに磨きの掛かった彼女は、助けを求める様に姉を横目で見やる)、

カフェケイネス @cafe_z_kayneth

(木が動きしかもそれがパイプを銜え、なんて事実に目を白黒とさせ。それでも隣からの視線を感じ木の板の字を読み解くようにじ、と見つめる) ええと、きのみか、…あし？ (どちらかを選べと言う事だろうか。しかし足とはどういう事なのか。困った様に妹へと視線を移した) カリコは、どっち？、

@nyokariya

あし、…あしは、いや。きもちわるい。 (ふるふると首を振る。ウェイターらしき木は何も言わず、ただぷかぷかと紫煙を浮かべながら見守っていた) (何の木の実かは知らないが、得体のしれぬ足よりかは食べやすいであろうという、実に常識的な応えだと彼女は子供なりに悟る),

カフェケイネス @cafe_z_kayneth

そう、ね。…きのみを、おねがいするわ。 (木にそう告げれば聞き届けたのだろうか木は踵を返し戻って行った。その間に周囲を見回す。姉妹以外の"お客様"に話しかけようとするも一人はがたがたと震え一人は返事がなく一人は既に木と遜色なく) (声をかけるにも何と声をかければ良いか)

カフェケイネス @cafe_z_kayneth

(やがて木がその手に銀の盆を持って目の前へと歩み寄ってきた。盆の上には木の実が二つ、ころりと転がっており。それは自分の知っている団栗と変わりがなかった) (とりあえず二つを手に取り一つを隣の妹へと手渡す。どう食べれば良いか分からないがそのまま噛めば良いのか) …いただきます、

@nyokariya

いただきま、す。 (恐る恐る両手で木の実を包みこみ、がりりと木の実を三分の一程齧る) (その直後かっと丸い瞳を見開き、腹の底から湧き上がる痺れを催す程の強烈な吐き気に少女は襲われた。半ば飲み込むような形でそのまま両手で木の実を押しこみ、両手を口で覆いながら細々と言葉を紡ぐ)

@nyokariya

ぅ、っあ、……おい、し…い、です………。 (何処か機嫌良さそうにウェイターの木が去っていく。奴にも感情はそれなりにあったらしい) (先ほどの震えとは違う調子で身体を震わせ、徐々に身体の顔は青みを増し、足元はだんだんと貧乏ゆすりで限界を訴えていた)、

カフェケイネス @cafe_z_kayneth

(同じくがりりと木の実を齧る。味なんて殆どなかった。否、感じられなかった。口の中に入れた瞬間に迫り上がってくる何かを押さえ、無理やり木の実全てを飲み込んだ。実が腹の中でぐるぐると存在を主張する) (だんだん、という音に隣の妹見遣れば青褪めた表情に不安を覚える) ………カリコ、？、

@nyokariya

お、ねえちゃ、っ……、ぉおおお、 (今一番安堵の出来る声で名前を呼ばれたのがきっかけだったのか、それとも本当に限界だったのかはわからない) (どちらにしろ、彼女の口から胃の内容物が零れ落ちたのは紛れもない事実)

@nyokariya

(薄汚れた象牙色とも茶色とも言い難い班固形物と、ツンと鼻の奥に直接畳みかけてくるような刺激臭) …ぅ、ぅあ……。(びちゃびちゃ、ぼたぼたとクロスから床へ嫌な音を立てながら落ちて行く。口の周りに付着した吐瀉物と唾液を拭うこともせず、ただ、彼女はがくがくと震え肩で息をした)、

カフェケイネス @cafe_z_kayneth

っひああああ、ああああ！！！ (隣でぼたぼたと吐き出される胃の内容物に釣られてか少女の胃の内側がざわめく。吐き出さぬようしっかりと押さえて何とか耐えた) (その時額に軽い衝撃。ぷつりと何かが突き破ったような微かなその衝撃。何気なしにその衝撃を確認しようと額に手をやれば) ……！！

カフェケイネス @cafe_z_kayneth

(額を突き破り生えていたのは枝で。額なので自分の目では確認出来ないが手に伝わるその感触は紛れもなく枝。痛みもなく唐突に生えたその枝にじわりじわりと恐怖が浸透した) (姉妹の異常を知ってか知らずか木のウェイターが再度姿を現した。手には新たな板。どうやらまたメニューを選択しろと)、

@nyokariya

おねえちゃ、き、きが。おでこに。 【さぁさぁお次！お次は何にしましょう！】 (がくがくと震えながら話す彼女の声を遮る、妙に陽気な木のウェイターの声が実に耳障りだ) (再度読みにくい板を見れば、また人間の欠損らしきものとまとも"そうな"料理。再度彼女は、不安げに姉の顔を見やる)、

カフェケイネス @cafe_z_kayneth

うで、と…パイ、？ (まじまじと板を見る。足に続いて腕とは何とも不安を煽るが、先程の木の実でお互いにこの有様だ。パイを選ぶのも抵抗がある。だがしかし、やはり腕を食べるというのは) (暫し悩んだ末、調理されているならばまだ救いがあるだろうと判断し) ………パイを、おねがいします、

@nyokariya

(再度ウェイターが奥へと消えさる。パイは時間が掛かるものと言う認識から外れた、予想外に短い時間でその料理は運ばれてきた) (パイ生地の下からもこ、もこと何かが膨れては収まる。見た目の点だけ見れば、まだ先ほどの木の実の方がマシかもしれない) ………。(料理を見れば、また脚が震え)、

カフェケイネス @cafe_z_kayneth

(隣の妹を見遣る。先程全て嘔吐している所や自分の額から枝が生えた事からも次の料理を妹に食べさせる訳にはいかない) カリコ、だいじょうぶ、わたしがたべるわ。 (がくがくと足を震わせる妹を制しパイへと手を伸ばす。食器も何もないのでそのまま適当に手で千切り口へと運んだ)

カフェケイネス @cafe_z_kayneth

(ぱくり、先程の木の実よりは幾らか噛みやすい。そのままゆっくりと咀嚼し飲み込む。そういえば料理を出してすぐに戻るはずのウェイターが動かない。不思議に思ったのも束の間) …、っぎ、 (胃がぶるぶると震えるこれは嘔吐ではなくもっと物理的な。声を出そうにも喉が引きつり震え、そして)、

@nyokariya

(姉の姿を見た。姉だった者を見た) (腹部から藍色のワンピースと腸を一気に樹木が突き破り、眼孔からは我先にと言わんばかりに飛び出す細枝。枝分かれした先に引っ掛かる、煮詰めた苺ジャムのような臓物や鮮魚のようにぷりぷりとした目玉。見るも醜悪なオブジェを見た辺りで、世界が暗転した)、

カフェケイネス @cafe_z_kayneth

【さぁさぁ！オーダーは何にしましょう！】 (突然空間の奥からがさがさと音を立てながら、パイプをくわえた木が歩み寄る。これは先程見た光景。板には木の実か足の選択肢) (腸を内側から物理的に破られる悍ましい感触。今はもう何ともない腹を無意識に撫でる)