@i_rony_ #twnovel

12/10/01~
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いろにー @i_rony_

「大根はヤサイ科の動物だよ」「風邪の方角には胡蝶蘭が似合うね」「らくだ、だ、だ、だ、テングサ!」「待受の倒置法、埃まみれだよ」同じ車両に乗る人々は皆、ずっとそんなことを喋っていたので、ヘッドフォンで耳を塞いで目も閉じた。だからそれからのことは知らない。#twnovel

2014-08-13 17:30:16
いろにー @i_rony_

指輪が空を飛んでいた。飛んでいない指輪を見ることは殆ど無く、誰も気に留めなかった。この街は豊か過ぎる、と旅人は言った。旅人の目に、指輪は映らなかった。今日も指輪は空を飛ぶ。溺れる指を捜しに行く。 #twnovel

2014-05-25 23:14:20
いろにー @i_rony_

「はっ、どうだか。精々頑張ってくれよ。It's up to you」ぷつんと音声は途絶えた。いちいち癪に障る奴だ。十日も軟禁した末に今更指示を出し始めて、次は一体何をさせるつもりだ?薄暗い部屋で、WindowsXPのロゴが厭に目についた。 #twnovel #twnvday

2014-04-14 17:57:59
いろにー @i_rony_

枕がくねくねと外へ飛んでいった。面白いので、窓を開け放したままで作業をしていた。すると定規がくるくる回って飛んでいった。電気スタンドはコードを思い切り回転させて、本という本はすべてページを捲る音を立てて、皆、飛んでいった。僕は飛べなかった。 #twnovel #twnvday

2014-03-14 23:55:59
いろにー @i_rony_

天国も地獄なんぞも信じられない私には、行くあてがありません。仕方ないので生きることにしました。生き方はどうだって良いので、取り敢えず図々しく生きてみました。どうやら地獄は存在するようです。それならと人の為に生きてみました。天国なんてどこにもありませんでした。 #twnovel

2014-01-10 23:56:06
いろにー @i_rony_

世界の何処かで、意味がひとつ消えた。たったひとつだけ。音も無く静かに。その数秒後、何かを思い出したように、もうひとつ意味が消えた。ひとつ、またひとつ、消えた。しばらくして、誰かが気付いたら、世界も消えた。 静かだった。 #twnovel

2013-10-19 23:02:17
いろにー @i_rony_

広いような、せまいような部屋のかたすみで、つぶつぶの光を見つけた。ふれることはできないし、すぐにきえそうだったけれど、なぜか見のがせずに、じっとそいつを見ていた。そう、ずっと待ってた。そんな物語を書いて、僕は苦笑いした。たぶん睡眠不足か何かだと思う。 #twnovel

2013-08-04 23:12:07
いろにー @i_rony_

最後に君の顔を見たのは、ちょうど一年前だった。どうやら以前と変わりないらしく、また無知な僕の手をとって、妖精のように踊りだす、逃げている暇などは無かった。どうせ踊りは次第に加速し、僕を遠くへ放り出すのだ、現実が渦を巻く中で、ヒグラシの声を耳にするのだ。 #twnovel

2013-07-24 19:39:22
いろにー @i_rony_

「風を知りたいです」「風は知るものではないよ、読むものだ」「それでも教えてほしいです」「それは私も同じだよ」「こんなに身体は小さいんですから」彼女は腕を大きく広げた。腕のあいだを初夏がすり抜ける。曇った空が、一つ目見開き、もういちど蝉が鳴き出した。 #twnovel

2013-07-13 16:23:49
いろにー @i_rony_

「私は今朝はいつもとは違い、寝癖はあるけど目には光はある。」「なんだそりゃ。『は』ばかりな文章だな」「母は歯は……えっと」「……憚りは無いのかい?」 #twnovel

2013-05-09 00:49:22
いろにー @i_rony_

「どうして『踊り場』って言うんだろうね。」「心が踊るんじゃないの?」「まさか。」「えーと、じゃあ odd river とか?」「いやもう結構。多分、深い意味は無いんだろうよ。」「駄洒落を考える程でも無いってこと?」「うん。僕らは踊らされているよ。」 #twnovel

2013-04-24 00:38:45
いろにー @i_rony_

隣で寝ている彼女に叩き起こされた。今は朝の五時である。目を擦りながら何があったのか問うと、機嫌の悪そうな寝惚けた声で彼女は言う。「もう起きないと遅刻するよ?」窓の外に目を向けると、薄暗い空の中で、部屋の反対側に設置されたアナログ時計が時を刻んでいた。 #twnovel

2013-04-20 23:24:07
いろにー @i_rony_

朝焼けと薄闇の狭間にある白を見つけるために、私は起き上がった。目覚めは悪くない。冷たい窓枠をスライドし、外側と内側の仕切りを取り去った。それら二つが丁度混ざり合う窓際で、私は頬杖をつく。朝の街は静かなようで、烏の鳴き声や自動車の唸る音が点在しているのだった。 #twnovel

2013-03-16 05:52:12
いろにー @i_rony_

「来た! あれが彗星だよ、ほら。」「へえ、水星ってあんなに動くんだね。」「そりゃあ動くさ! よく見ると後ろから何か広がっているだろう?形が似ているから、ほうき星なんて呼ぶこともあるんだよ。」「ほうきはあんな形してないよ。それにしても、何だか虹を架けてるみたい。」 #twnvday

2013-03-14 00:00:22
いろにー @i_rony_

人気の動物園に珍しい動物が入ったらしく、車で三時間かけ向った。人波を掻き分け一眼レフを構える。そこでふと、何故私は写真を撮らねばならぬのかという問いが浮かんだ。答えが出ぬまま立ち竦んでいると、背後の携帯電話を手にした青年に「撮らないならどいて下さい」と言われた。 #twnovel

2013-03-11 22:32:01
いろにー @i_rony_

とても平和な夢を見た。窓際に座った少女が、左手で頬杖をつき浮かない顔をしている。机上には封をしていないままの便箋。窓の外には曇り空ばかり。その灰色をぼうっと眺めながら、少女は何かを想って、想って、想って、想い続けて、また溜息をつく。そんな平和な夢を見た。 #twnovel

2013-02-27 22:57:05
いろにー @i_rony_

「世界なんてのは所詮そんなモンだよ。自分の主張を通そうとすればするほど、他人から笑われてしまう。それは必死に話す姿が滑稽であるからで、本人は笑われていることに気付いていないからなのさ。聞いてるかい?」彼の歯に付いた青ノリを見ながら、私は成る程と心の中で呟いた。 #twnovel

2013-02-16 23:52:21
いろにー @i_rony_

「ここに箱がある。」彼は真っ白な箱を鞄から取り出した。「この中にはあるお菓子が入っている。何か当てられたらそのお菓子を君にあげよう。質問は3回までだ!」僕は彼の性格を良く知っているので、即座に質問した。「それは、あなたの要らなくなったものですか?」「はい。」 #twnovel

2013-02-02 22:47:59
いろにー @i_rony_

梟は間違いなく僕の顔を、それも正面から見据えている。当然何かを語り出すということは無い。しかし僕の頭の中では、思い出したくもない昔の嘘や傷が次々と甦り、そして消えていった。掌は汗ばみ足は震えている。目線を動かさないまま、梟は嫌味なほどに黙りこくっていた。 #twnovel

2013-01-29 22:02:50
いろにー @i_rony_

その人形屋は、ひっそり建っているものの中は綺麗に掃除されていた。「お客様といえば貴女しかいらっしゃいませんが、いつ見てもお綺麗です。」「いつも同じ事言うけど、本当に思ってるの?」彼は頭部を俯かせて呟く。「分かりません。この店の主人は数年前に亡くなりましたので。」 #twnovel

2013-01-22 15:48:08
いろにー @i_rony_

永くを生き、様々な人の姿を描き続けた画家は言った。もうこの世に、描いたことの無いような人はいない。もうすぐ私も死ぬだろう、このようなものがあっても仕方が無い。彼はスケッチブックを破り捨てた。その時、まだ描いたことの無い人物がそこにいると気が付いた。 #twnovel

2013-01-15 21:46:57
いろにー @i_rony_

彼の言葉は、つまり、図星であった。僕の心、その最も触れられたくないところが忽ち顔を出した。無防備に赤く腫れ上がった本音を覆い隠そうとしたが、既に無駄であった。彼の視線はそこを的確に突き刺していたのである。実際、肌の表面で何かがぴりぴりと這う刺激を僕は感じていた。 #twnovel

2013-01-06 01:53:20
いろにー @i_rony_

白い風が、朝の防波堤に吹く。男は立ったまま考えていた。着ているこの服は靡くのに、俺は煽られてぐらぐらすることなく直立している。これはなんとも素晴らしいことではないか。そう思うと身体の内側から押し上げるようにして自信が湧いてきた。遠くでカモメが鳴いた気がした。 #twnovel

2013-01-04 02:36:56
いろにー @i_rony_

年をまたひとつ越す。星空が何かを囁くけれど、まだ聴こえない。それでも、じきに赤く染まる向こうの空に、きらきら光る街の灯りに、期待をするべきなんだ。始まりを告げるのは、他でもない僕なのだ。ぼうっと立っているばかりじゃあ、それって単なる休日。つまらないじゃないか。 #twnovel

2013-01-01 01:18:54
いろにー @i_rony_

明け方の、頬を撫でたその風は、静かに微笑んでいた。過ぎ去るまで何も口にしなかったが、その微笑みは僕の心配事を溶かしていくには充分であった。さも当然かのように、僕は両手を一杯に広げ、息を吸って、吐いた。何度も、何度も。 #twnovel もうじき、太陽が昇ってくるだろう。

2012-12-28 00:59:38
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