怪萌3 ケモノ耳
「怪萌3 ケモノ耳」収録作品:耳の話 お稲荷様少女 垂れ耳 まるくなる ぷにぷに 尻尾 ふわふわ 毛玉にまつわる話 じゃれつく 袖を引っ張るもの 他
2010-08-12 13:34:47襖から耳が生えていた。獣、恐らく猫のものだ。細かい毛がびっしり生えている。訳も分からず、ふうと息を吹きかけると、嫌がるように耳をぱたぱたさせる。しばらくそうやって遊んでいたが、消える気配がない。だが害も無さそうなので放っておいた。夜、頬を染めた猫耳少女が枕元に出て、噛み付かれた。
2010-08-12 21:52:14「なぁお前さん」Tシャツにジーパン姿の女性から声を掛けられた。心当たりは無い。膝から下が長い。うわ、奇麗な人だなぁと思って見とれていると、「お前さん、アタシのことをお忘れでないかい?」え、何をと思っていると、「ずっと待っておるのじゃからな」と真っ白な狐に姿を変えて、空へと消えた。
2010-08-12 22:08:00足元を何かが駆けた。足音が周囲をぐるぐる回る。驚いて大きな声を上げると。足音が止まった。急にミニチュアダックスがじゃれつくイメージが浮かんだ。去年まで飼っていた犬のことを思い出す。あぁ、そろそろお盆だったな。家に帰ると、女の子が玄関で出迎えてくれた。大きな耳がぺろんと垂れていた。
2010-08-12 22:17:03拾った家出少女は、何故かベッドの上で四つん這いになると、ぐるぐると二度円を描いて横になり、丸くなって寝た。去年十六歳で往生した白猫のことを思い出した。「ねぇ、まだ私の名前呼んでくれないの?」まだ寝ていなかったのか。「貴方に会うために戻って来たのに」ベッドには白い毛が散乱していた。
2010-08-12 22:24:30「どちら様でしたっけ?」ベランダで煙草を一服して戻ると、部屋に見知らぬ女の子が座っていた。僕の言葉に、女の子は「バカァっ!」思い切り振りかぶって頬を引っ叩きに来た。思わず目を瞑る。だが、頬にはぷにっとした柔らかく、冷たい感触がするばかりだ。目を開くと猫が部屋から出て行く所だった。
2010-08-12 22:32:36「見た…?」雉虎の長い二本の尾が、白い下着からはみ出していた。「…見た」答えると同時に、ガリッと頬が鳴った。手を当てる。血だ。「 ごっ、ごめんなさい!」詳しく話を聞くと、幼く見えるが、彼女は現在二十五歳だという。「もし、他の人に言ったら…アンタなんて、取り殺してやるんだからっ!」
2010-08-12 22:49:31ベッドの下に、キーホルダーにあるような毛玉が落ちていた。ふわふわしている。だが、芯があり心無し温かい。机に置いておいたが、消えてしまった。数日後、ベッドの下を見たが、今度は猫ほどの大きさになっていた。そのまま放っておいたら、明け方ベッドの中に猫の耳を生やした少女が潜り込んで来た。
2010-08-13 09:44:04朝、顔をざりざりと擦られて目を覚ました。見えない何かが鼻の頭を舐めている。払おうとしても手は宙を切った。これは猫だと直感した。その日から見えない猫がじゃれつく。半年ほど経ち、ある夜帰ると、部屋に裸の少女が立っていた。「ありがと。今まで楽しかった」と言い残し、少女は消えてしまった。
2010-08-13 09:55:58「ボク、人間じゃないよ。お化けだよ」ある日、彼女がそう言った。続けざま「それでもいいの」と問われた。「うん。いいよ」と答えると、「なら今から本当の姿を見せるけど、嫌いにならないでね」と言い、真っ白で尾が何本もある狐に変貌した。今も彼女は後ろから袖を引っ張りながら歩く癖が抜けない。
2010-08-13 10:02:09途中「毛玉にまつわる話 」だけ除きました(かぶり過ぎたので)が、とりあえず目次に書いた内容は書き終えたかな。九編。楽しんでいただければ幸い。
2010-08-13 10:03:37人に化ける妖の萌える怪談集「怪萌 ケモノ耳」の目次→ 耳の話 お稲荷様 垂れ耳 まるくなる ぷにぷに 尻尾 ふわふわ じゃれつく 袖を引っ張るもの あくび 包まれる 化かすもの 瞳孔 ねこじゃらし 撥水 のびあがる 犬歯 対極図 耳姉 九尾
2010-08-19 08:08:27