「シー・アスクス・ワット・ザ・ブレイジン」#1 ――『ニンジャスレイヤー』二次創作小説
- USAGI_koTENGU
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●予告● 重金属酸性雨降りしきる近未来都市ネオサイタマを行く女あり。「ファック、ファック、ブッダファック!」その前に現れたのは……「ドーモ、ソウスケイルです」「ドーモ、バグラーラビットです」ニンジャ!「ムシャクシャしてたンだ!相手になってやる!」答える女もまた……ニンジャ!
2013-01-18 22:53:01●予告● 閃く炎!飛ぶスリケン!迸る水しぶき!路地裏のイクサの予期せぬ結末とは?『ニンジャスレイヤー』二次創作集『ニンジャ・ラン・ウィズ・ネオサイタマ・ランドスケープ』より、「シー・アスクス・ワット・ザ・ブレイジン」。今晩1130より! 「ヘル-オー!ブレイズです!」
2013-01-18 23:22:53サイバーパンクニンジャ活劇『ニンジャスレイヤー』二次創作集『ニンジャ・ラン・ウィズ・ネオサイタマ・ランドスケープ』より。
2013-01-18 23:34:09曇天の底が抜けたような豪雨が、光り輝く街を濡らす。ここは近未来都市ネオサイタマの歓楽街の一つ、ムコウミズ・ストリート。色とりどりのサイバー傘が川面に浮かぶ花びらのように流れ、「安い、早い、楽しい」「合法遊戯」「ヨットイデ」などの多幸感を誘うネオンの数々が路地を照らす。 1
2013-01-18 23:35:47夕刻から降り注ぐ重金属酸性雨は、当然のこと、人体に有害だ。直接体に浴びては二十時間と持たない……常人ならば。だから……十時を過ぎた今、花びらのごときサイバー傘の群れに、ぽっかりと開いた空虚、そこをひとり歩く女に、道行くネオサイタマ市民は怪訝な視線を向ける。 2
2013-01-18 23:38:56もちろん、声をかけるような慈悲も、じろじろ眺めるような不躾さもない。奥ゆかしさという行動規範と、その裏側にある無気力な事なかれ主義が、ネオサイタマ市民には遺伝子レベルで刻み込まれている。彼らはただ、この奇特な女を目にし、次の瞬間には見ぬふりをする。誰も女の美しさに気づかない。 3
2013-01-18 23:41:02耐毒加工バッファロー皮ジャンパーの下、黒いテックジャケットとスキニーパンツに包まれた体は、少年のように痩せている。しかし、口元を覆うマフラーの上、赤いボブ・ヘアーが縁取る白い顔には、闇夜に閃く火花のような瞳。命の熱、意志の焔が、女を野蛮な原初の炎めいて燃え上がらせていた。 4
2013-01-18 23:43:08「ファック!」女はマフラーの中で小さく毒づく。「逮捕ってなンだ!パンクならアンタイセイしろってンだ!」忌々しげに吐き捨て、マフラーを引き下げる。「へ」の字に歪められた薄い唇からピアシングされた舌がBRKガムを吐き出す。ガムは路面の水たまりに落ち、ネオン光にゆるりと溶けた。 5
2013-01-18 23:46:22女……ブレイズと今は名乗っている……彼女は今、用心棒をしているライブハウス「ヨタモノ」から出てきたところだ。今夜、そこでサイバーガガク・パンクバンド「イッセー」のギグが行われる予定であった。しかし、メンバーの何人かがケチなケンカでマッポに逮捕され、ギグはお流れになった。 6
2013-01-18 23:49:09以前キョートにいた彼女は、大災害のキョートから流れてきたバンドのギグを楽しみにしていた。用心棒という立場を利用しノーチャージで見るつもりで。それがフイになり、気分を害した彼女は怒りを店のバーテンにぶつけた。以前叩き折った前歯の代わりの義歯を叩き折り、店を飛び出したのだ。 7
2013-01-18 23:52:13「ファック、ファック、ブッダファック!面白くねェし!」ブレイズはブツブツと怒りの言葉を吐きながら歩く。「君ィ、どうしたのォ?」男オイランハウス「ワカシュ」の前に立つ、シースルーキモノのチョンマゲ美形が猫なで声で傘を差し出す。その顔にブレイズは拳を叩きこむ!「アバーッ!」 8
2013-01-18 23:55:04鼻血を吹いて倒れるチョンマゲを踏み越え、ブレイズは細い路地に入る。ひと気のない裏路地をこのまま二ブロックほど行けば最寄り駅の裏口改札に出る。用心棒代を徴収せず飛び出したため、手持ちは帰りの電車賃のみ、チャを飲む金すらない。「チッ、チッ、チッ!」舌打ちしながら自動販売機を破壊! 9
2013-01-18 23:58:26一ブロックを進んだあたりで、ブレイズの腹が空腹に鳴る。「ファック!」苛立ちを抑えかねたブレイズが叫ぶと、「ギニャーッ!」ダストボックスに頭を突っ込んでいた巨大バイオネコが絶叫!どうしたこと?その背中には重金属酸性雨にも消えぬ不思議の炎が宿り、逃げ去る姿を闇に軌跡する。 10
2013-01-19 00:02:13それを眺めるブレイズの顔が暗い喜悦に歪んだ……その時!背後に跳ねる水音に反射的に振り返った彼女の、背中に飛来するものあり!それは何か?読者に特別にお教えしよう……それはスリケン!近未来都市ネオサイタマに伝説めいて語られる半神的存在、ニンジャの使用する投擲武器! 11
2013-01-19 00:04:31「チッ!」ブレイズは舌打ち!身を捻ってスリケンを躱すと、素早くジャンパーのポケットから引きぬいた手を、続く第二、第三のスリケンに向ける!重金属酸性雨のスダレ・シェードを切り裂いて飛来したスリケンが閃く炎に消える!これはどうしたこと?この痩せた女が炎を?先ほどのネコと同じく? 12
2013-01-19 00:07:08そう!読者はもうお気づきだろう!ブレイズはニンジャ!超常の炎を意のままに操るジツの使い手!実際ネオサイタマ市民がホラーめいて楽しむフィクションに登場する、架空のニンジャが操るニンポに似た特殊能力だ。そして……彼女がそのジツで撃ち落としたスリケンの主もまた……ニンジャ! 13
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