古典怪談・雨宮風味 【笑怖箱 再怪】

病院を舞台にした実話怪談でお馴染み、恐怖箱作家の雨宮淳司氏がゆるぅ~~く味付けした古典怪談。 思わず腰が砕けます。
2
雨宮淳司 @J_AMEMIYA

黒塚 東光坊祐慶が、旅中安達ヶ原で宿を求めた。人肉を食らう鬼婆が出没する土地と聞いていたが、家の主は若い娘達である。安心して一隅を借り寝床を整えていると、急に体に痺れを感じ動けなくなった。娘達が現れ、指を回しながら言った。「おいしくおいしくおいしくなぁ~れ。萌え萌えきゅ~ん☆」

2010-08-28 13:58:39
雨宮淳司 @J_AMEMIYA

舟幽霊 その狭い舟の中には鎧姿の男達が押し黙って座っていた。一人が言う。「落ち延びられただけでも僥倖」 そして今、疲れ切った一行は凪の中にいた。鏡のような海。と、突如わらわらと白い腕が海面から伸び出してきた。「おお! 今こそこれを返そう。聖剣エクスカリバーを」アーサーは叫んだ。

2010-08-29 06:13:48
雨宮淳司 @J_AMEMIYA

将門の首 京都都大路に晒されていた平将門の首が、突如夜空へ舞い上がった。猛烈な唸りを発し、それは遠く東国へ向けて天を駆けた。武蔵国にそれは落下し、朝廷の兵が発見した。近寄ると、それはかっと目を見開きこう言った。「おのれ! まだ吾輩は負けてはおらぬぞ! 出でよ、飛行要塞グール!」

2010-08-30 02:51:44
雨宮淳司 @J_AMEMIYA

殺生石 白面金毛九尾の狐の妖力は、近づいてくる男女の姿を捕らえた。まだ童子である。「何やつじゃ」「お願いでございます。祟りをなし鳥や獣を殺生するのはおやめ下さい」毒石と化した玉藻前は一笑に付した。「ならば仕方がありません」「どうする気じゃ」二人は手を握り合って叫んだ。「バルス!」

2010-08-30 15:19:56
雨宮淳司 @J_AMEMIYA

白峯 西行が旧主である崇徳院の菩提を弔っていると、ふと院の呼ばわる声がした。何時しか会話は論争となり、院は易姓革命論から現在の朝廷には徳がないという。仁礼信義智のどの徳が当てはまるのか。情勢を穿つ正論であった。唸っていると崇徳院の優しい声がした。「西行よ。ライフラインを使うか?」

2010-09-01 01:07:00
雨宮淳司 @J_AMEMIYA

轆轤首 ある船宿の女の首が夜中に伸びるという。その噂を聞き込んだ平八、通称ハチ公という町人が物好きにも泊まってみることにした。女は同衾に応じ、その夜半、噂通り首が伸びてきた。「ああ、素晴らしい。この胸鎖乳突筋、何とも言えない」舐め回していると女が叫んだ。「やめねえか! フェチ!」

2010-09-01 17:56:02
雨宮淳司 @J_AMEMIYA

座敷童 陸奥の国に座敷童の出る宿があるという。随分待ってようやく泊まることが出来たが、何だか若い女の客が多い。夕食は大座敷で行うというのでお膳の前に座っていると、宿主らしい男が現れこう言った。「それでは名物、座敷童でございます」どっと歓声。出てきたのは見事な「美少年盛り」だった。

2010-09-01 18:32:38
雨宮淳司 @J_AMEMIYA

飛び梅 左大臣藤原時平に嫉まれ、太宰府に左遷された菅原道真のもとへ、一夜にして京都の屋敷の庭にあった梅の木が飛来してきた。どうやら日頃、可愛がっていたため慕ってきたものらしい。そして、次の日から、尼僧、未亡人、隣の奥さん、団地妻、女子大生、稚児、ラブドール等が次々と飛んできた。

2010-09-04 00:55:52
雨宮淳司 @J_AMEMIYA

酒呑童子 幼名は不詳。比叡山に稚児として入山し修行した。類を見ない美少年であり学業にも秀でていたが、禁じられている飲酒がやめられず破門となった。その後、多種の職業を経験。一時京都でコンビニストアの店長を務めていた。「比叡山の中心で経を唱える」で第五三回那鬼賞を受賞。著書多数。

2010-09-04 22:18:24
雨宮淳司 @J_AMEMIYA

安珍清姫 安珍は疲れ切った体で道成寺へと辿り着いた。背後には怒りの余り蛇身と化し、火を吐きながら迫る清姫の姿があった。「ご安心下さい。我ら道成寺僧兵隊。必ずあなた様をお守り致します」降ろされた梵鐘の中へ匿われた途端、凄まじい銃撃音と怒号が。「左舷、弾幕薄いよ、なにやってんの!」

2010-09-09 12:28:23
雨宮淳司 @J_AMEMIYA

河童 9月8日午後9時頃、遠野地区で、帰宅中の女性が後方から近づいてきた河童に身体を触られる事案が3件発生しました。河童は年齢20歳から25歳位、身長165センチから175センチ位、細身、白髪混じりの黒色短髪、黒色半袖シャツ、臙脂の作業ズボン、胡瓜を持ちマスクを着用しています。

2010-09-09 12:46:07
雨宮淳司 @J_AMEMIYA

死神(古典落語) その洞窟の内部には、無数の蝋燭の灯火が揺らめいていた。「これらは全て人間の寿命だ」死神は言った。「そして、ほれ、そこで消えかかっているのがおまえの寿命だ」「……」「この蝋燭を継ぎ足してみるか?」「いらない」「……なぜだ?」「……私が死んでも代わりはいるもの 」

2010-09-09 20:03:56