ギルティ・オブ・ビーイング・ニンジャ #1

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

その意図が明確に語られることは無かった。さも当然のように、兄弟子がそうするように、彼女はフジキドを神秘的クエストへと誘ったのだ。復讐を果たした事によるアンニュイと怠惰から脱し、ニンジャソウルの秘密と向き合うための準備ができていたフジキドにとって、これは実際渡りに船であった。 14

2013-02-25 00:15:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

どこか楽しげにラマを引くユカノの後ろ姿を見ながら、フジキドは市場の端へと歩く。現実感の薄い光景だ。それはもしかすると、ネオサイタマからの道中、ユカノが語った驚くべき秘密の断片に由来するのかもしれない。祖たるカツ・ワンソー、キョート城、ハガネ・ニンジャ、妖刀ベッピン……。 15

2013-02-25 00:25:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

無論ユカノとて、全ての真実を解き明かした訳ではない。ニンジャかモータルかを問わず、そのような者はこの世界には存在しないだろう。人類は未だ、ブッダやジーザスの正確なドキュメンタリー映画すら作れていない。いや、恐らく永遠に作れないだろう。数千年の時はそれほどまでに長く無慈悲だ。 16

2013-02-25 00:34:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼女が取り戻した記憶断片によれば、妖刀ベッピンとは、伝説的ニンジャ存在カツ・ワンソーを復活させる鍵であった。しかしキョート城と共に、ダークニンジャと妖刀は永遠に滅びた。オヒガンの彼方に消えたのだ。……冷静に考えれば途方も無い話だ。稚気じみた、フィクション映画の世界の話だ。 17

2013-02-25 00:43:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

そして自分もまた、サラリマンではなく、そちらの側に足を踏み入れてしまったのだ。竜や吸血鬼……そういった怪物たちの世界へと。フジキド・ケンジは、猥雑なメガロシティから離れたこのセイシンテキ・アトモスフィアの中でその事実を改めて突きつけられた。「ザッ……」誰かと肩がぶつかった。 18

2013-02-25 00:56:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ドーモ、シツレイ……」ユカノを見ながら物思いに耽っていたフジキドは、ごった返す市場の中で振り返って、小さく会釈した。相手は一瞥をくれて去っていった。ニンジャではない。黒いヤクザスーツを着た、屈強なヤクザだった。大げさなバックパックを背負い、服は砂埃まみれ。巡礼者だろう。 19 

2013-02-25 00:59:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」ヤクザは胸元から方位磁針めいた何かを取り出し、再び背後を向き直った。「……」その目元はサイバーサングラスに覆われ、思考を読む事はできない。彼はそれからラマ屋へと向かい、上等なラマがいないか探した。「いいラマだ」「目が肥えていますね」テクノピューリタンが静かに言った。 20

2013-02-25 01:09:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「かつて世界中を巡った…」ヤクザはラマの口の中を調べながら言った「…そして数々の罪業を背負った…」「あなたもミヤモトマサシの庵を探して?」「このラマをくれ」ヤクザは無表情にそう返した。「アッハイ」テクノピューリタンは静かな狂気を感じ取り、それ以上、何も聞こうとはしなかった。 21

2013-02-25 01:22:24