ザイバツ・ヤング・チーム #5

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ウィッカーマンが両手で振っていた筈の一対の鎖クナイは、クナイを両先端の重しとする一個のボーラと化してディミヌエンドへ飛来、がんじがらめにしたのだ!「ンアーッ!?」ナ、ナムアミダブツ!何たる一瞬のうちに両の鎖クナイ末端部をロック接合し投擲したウィッカーマンのニンジャ器用さ! 21

2013-03-12 22:09:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

いわばそれは、それまで一カ所に根を張り荒れ狂っていた竜巻が突如狙いを定めて突進して来たようなものであり、手負いのディミヌエンドが咄嗟に回避出来る代物ではなかった。ドサリと床に落ちたディミヌエンドは悔しげに歯を食いしばり、鎖拘束を逃れようともがく!そのすぐ傍でドモボーイは瀕死!22

2013-03-12 23:39:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」ウィッカーマンは振り向きながらの回し蹴りを繰り出す。ボーラ鎖クナイの投擲によって生じた隙を突きにきたミラーシェードへの対応だ。「イヤーッ!」ミラーシェードは踏み込み、この回し蹴りを裏拳でガード!黒装束にノイズの波が走った。その姿が……消えた!「グワーッ!?」23

2013-03-12 23:49:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ウィッカーマンは身を捩る!背中側から突き刺さり、胸板から生えた刃!バチバチとノイズを鳴らしながら、彼の背後にミラーシェードが再び可視化される。ゴ……ゴウランガ!打撃をガードしたミラーシェードは一瞬のステルスで攻撃軌道を不過視化!側面、背後へ回り込んだのである!24

2013-03-12 23:56:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「これは」ウィッカーマンが目を見開き、もがいた。ミラーシェードは更に刃を深々と突き刺す。「ア、アバーッ」ウィッカーマンが仰け反る。ミラーシェードは刃を捻り込む!「アバーッ!」ウィッカーマンが叫ぶ!傷口から迸り出たのは血ではない。炎。ミラーシェードは一瞬にして火だるまになった。25

2013-03-12 23:58:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「グワーッ!?」ミラーシェードは弾かれたように後ずさる。炎!今や彼は人の形をした炎じみて、叫びながら苦悶した。「ミラーシェード=サン!?」クアースが檻を揺さぶった。「グワーッ!?」「ア、アバーッ……」ウィッカーマンはよろめき、たたらを踏む。前傾姿勢で堪える。「コシャク……」 26

2013-03-13 00:01:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ウィッカーマンの傷口からは燃える重油めいて炎が噴き出し、ボタボタと地面にこぼれ落ちる。なんたるジゴクめいた光景か……これがウィッカーマンのカトン・ジツだというのか?その体内には水風船の水めいて炎が詰まっている!ミラーシェードは仰向けに倒れた。炎が掻き消える。ナムアミダブツ! 27

2013-03-13 00:07:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「オオオ……」ウィッカーマンが捧げ持つのは……墨壷!ミラーシェードの身体をもぎ離す際に懐から奪い取ったのだ。「我が……君……一滴たりとも失われてはおりませぬゆえ……」一歩。二歩。ウィッカーマンが台座に近づく。傷は重いのだろうか?火山噴火めいて炎が背中の裂け目から断続的に噴く!28

2013-03-13 00:11:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

クアースは鳥籠牢獄の中、震えながらこの光景を見下ろしていた。マスター・ミラーシェード=サンまでもが。あのような有様に。勝てなかった。なんという怪物。なぜこんな事になった。きっかけは単なるカネモチの古物蒐集情報だ。隅で失禁しているあのふざけたモータルのカネモチ。呪われよ。29

2013-03-13 00:19:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ウィッカーマンはよろめき、床上に火の痕をボタボタと残す。「ああ……」クアースは呻いた。ニンジャ洞察力で知ってしまう。知りたくも無い事を。ウィッカーマンの傷は塞がりかけている。歩を進めるごとに、その動きは再び着実なものになってゆく。彼は再び墨壷を台座に戻そうというのか。30

2013-03-13 00:23:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ミラーシェード。ドモボーイ……カイシャクならまだいい。最悪の場合、あの印を額に刻まれて……。(((ミラーシェード=サンは何故ここに)))クアースの思考が乱れる。圧倒的絶望を前に、ソーマト・リコール現象じみて。(((何故彼がここにいる?これは新たなクエストの筈だ。何故?))) 31

2013-03-13 00:29:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

援軍?バカな、彼はクアース達より先に別のクエストの途上であったのだ。何故彼が……別のクエストとは一体どこへ何をしにゆくクエストであったのか。判らない。判らない事ばかり……「イ……イヤーッ!」ディミヌエンドが両腕に力を込め、巻きつく鎖の一部を跳ね飛ばした。クアースは我に返った。32

2013-03-13 00:33:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ウィッカーマンは墨壷を掲げる。台座にそれを再び据えようとする。クアースは為すべき事を電撃的に悟った。鎖はそう易々と彼女を解放しない。だが彼女はなおももがく。クアースは?クアースはどうなのだ。なぜお前はもがかないのだ?彼は自責した。墨壷が台座に戻れば元の木阿弥。然り、今ならば!33

2013-03-13 00:36:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イイイイヤァーッ!」クアースは格子にしがみつき、思い切りねじ曲げた。ウィッカーマンが墨壷を台座に再び据えると、緋色の光が壁を、天井を、籠を、再び不気味に輝かせた。「イヤーッ!」だがその瞬間、クアースは檻の外へ自らを放っていた。宙を飛び、ウィッカーマンの真後ろへ着地した。 34

2013-03-13 00:38:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「我が君。何一つ問題無し。しかもこれにて」「イヤーッ!」クアースはウィッカーマンに後ろからタックルを仕掛けた。「イヤーッ!」「グワーッ!」その脳天にウィッカーマンの無慈悲な肘が落とされた。「……しかもこれにて、新たに四体ものニンジャの生命エキストラクトを獲られる事に」35

2013-03-13 00:44:39
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

クアースは脳天から血を噴き、両膝から崩れた。鎖骨の痛みが彼のニューロンに喝を入れた。彼は目を見開き、ウィッカーマンを見上げた。ウィッカーマンは振り向いた。怪訝そうに目を細めた。クアースは左手首の輪を右手で掴んだ。ディミヌエンドの叫びが聴こえた。言葉は聴き取れない。 36

2013-03-13 00:49:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(((その覚悟は本当のものか?)))ニューロンに問いが響く。彼の白昼夢ではない。別の誰かの声であった。(((命は無いぞ)))ラジオの混線めいた遠い声だった。クアースは笑おうとした。ただ死ぬならば、一矢報いて死ぬ!自らの命を引き換えに活路を拓くのだ!彼は左手首の輪を起動した! 37

2013-03-13 00:54:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」ウィッカーマンのチョップがクアースの首を切断した。クアースは爆発四散した。胴体、頭部、等しく、塵と化して爆散した。「……」ウィッカーマンは後ずさり、カラテ警戒した。その爆発は、何にも、誰にも、害を為す事は無かった。ディミヌエンドが叫んだ。 38

2013-03-13 00:58:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

白色に輝く霧めいて、クアースの霧は宙に留まっていた。ウィッカーマンは恐るべき殺気を身に纏い、一切の油断無くカラテ警戒した。その目に楽観は無かった。ニンジャ第六感でこれから起こりうる何かの予兆を察知したのであろうか。……やがて、白い霧の粒は無数の0と1のノイズに変化した。 39

2013-03-13 01:02:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

0と1のノイズは……クアースの肉体と装束を素材とするノイズは、金属の輪の周囲に収束を開始する。それは一瞬の事だ。まず、そこにオブシディアン色のローブが生じた。そしてそれを纏う者が生じた。その者の左手首にはクアースの鉄の輪が嵌まっている。その者の顔はフードの闇の中だ。 40

2013-03-13 01:08:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「サラバ。クアース=サン」ローブ姿の存在は無感情に呟いた。「彼のイサオシは永劫に刻まれよう」「……!」ディミヌエンドは鎖の破壊すら忘れ、雷に打たれたような畏怖で見つめた。ローブの者はウィッカーマンにオジギした。「ドーモ。ゴグウ・ニンジャ=サン。ダークニンジャです」41

2013-03-13 01:20:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ドーモ……ダークニンジャ=サン」ウィッカーマンはアイサツを返した。「さきのサンシタのヘンゲというわけではないようだが。面妖なジツを。そして、おれの名を口にしたな」「……」ダークニンジャはカラテを構えた。ウィッカーマンは一歩後ろへ退き、間合いを取る。 42

2013-03-13 01:27:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「お前は一人寂しく飼い主の戻りを待つ哀れな犬だ。だがその忠誠が報われる事はない。お前が省みられる事はない」ダークニンジャは墨壷を一瞥した。「そのけなげな努力は何一つ実を結ぶ事がない」ローブの闇の中に眼光が灯り、ウィッカーマンを射る。「お前は誰からも必要とされぬまま滅びるのだ」43

2013-03-13 01:36:58