仮面ライダーW Rの脅威/帰って来てくれ仮面ライダー 『チャプター2・Kの襲撃/俺は仮面ライダーアクセル』
それでは、今週分もスタートします。仮面ライダーW Rの脅威/帰ってきてくれ仮面ライダー 『チャプター2:Kの襲撃/俺は仮面ライダーアクセル』 #WR
2013-03-17 00:00:43――いっえぇえええええぃ!俺、たまんねーッ!! ――わぁああ……誰か、誰かぁー、姫香を……姫香を助けてくださいぃー。 1 #WR
2013-03-17 00:02:09昼下がりの風都公園前。近隣の交差点に稀に見る大渋滞が起きている。降りしきる雪のせいではない。二体のドーパントが行き交う車や止めに来た警官たちを薙ぎ倒しているためだ。2 #WR
2013-03-17 00:02:31一体は紫一色にV字の仮面を顔に貼り付けた怪物で、積極的に人や車を襲っている。もう一体はコウモリを模した形の複眼で、全身を鎖で編み込んだ奇妙な風貌。暴れることは無いが、脳味噌がとろけそうな程甘ったるい声で助けを求めてその場に居座っている。 3 #WR
2013-03-17 00:03:01「通報を受けて来てみれば……なんだあれは」 赤一色の派手な愛機”ディアブロッサ”を駆り、警視・照井竜が現場に到着。 状況を概ね理解した照井は、上着からバイクのハンドルを模したバックル”アクセルドライバー”を取り出して腹部に巻き付けた。4 #WR
2013-03-17 00:03:24[アクセル!] ――変ッ……身ッ!! [ACCEL!] 続いて、胸ポケットから抜いた『アクセル』のメモリをドライバーに挿入。ドライバーについたハンドルグリップをまるでバイクのエンジンを駆けるかの如く回し、街の平和を乱す悪への怒りを言霊に込め、溜めをつけて叫ぶ。5 #WR
2013-03-17 00:07:37バイクの回転音にも似た駆動音が鳴り響き、かき鳴らされる爆音と共に、照井の体に真っ赤な装甲が纏われる。オンロードバイクを模した体に、アルファベットの”A”をあしらったマスク。力強さと爆発力に満ちた、風都のもう一人の戦士『仮面ライダーアクセル』だ。6 #WR
2013-03-17 00:08:34「さぁ、振り切るぜ」 怪物相手に大見得を切ったアクセルは、紫の仮面のドーパントを背後から蹴りつけ、怯んだ隙に拳の連打を浴びせる。目に止まらぬ猛攻で、堪らず地面に尻をつくが、あまり効いていないらしく、ドーパントは素早く体勢を立て直した。7 #WR
2013-03-17 00:11:09「なんだよ、痛ってーなコラ! ……じゃなかった。助けてくれよ! 半分こじゃないけどあんたも仮面ライダーなんだろ? 俺、なんていうかさ、自分で自分を抑えきれねぇんだよ。もう最高にたまんねぇんだよ。百万倍の好奇心にハイテンションなんだって」8 #WR
2013-03-17 00:13:17「……言っている意味がまるで分からん。とりあえず武器《メモリ》を捨てて大人しく投降しろ。今なら……迷惑条例違反と暴行罪くらいで勘弁してやる」9 #WR
2013-03-17 00:15:26V字頭の怪物は、それは無理だと首を振る。「使った覚えすら無いのに無茶言うなよ。その辺で変なメモリを拾ったから警察に届けようとポケットに入れといたらさ、いつの間にか俺の脚に差さっちまったみたいで、こんな姿になっちまってさァ」10 #WR
2013-03-17 00:15:47これがメモリ中毒者の成れの果てか。うんざりする。アクセルは紫の仮面のドーパント目掛けて右の拳を見舞うが、背後のかぼちゃ顔ドーパントに羽交い絞めにされて阻止される。黄複眼の怪物は不気味なまでに甘い声で、アクセルにそっと囁《ささや》いた。11 #WR
2013-03-17 00:18:01「仮面ライダーさぁん、姫香を……姫香を助けてくださいぃー」 「いきなり何だお前は! 助けてほしいのなら最低限この腕をどけろ、苦しいぞ」 「どうにもならないから助けて、って言ってるんですぅー」 「えぇい、そんな見え見えの嘘が通用するか! 現に貴様は……」12 #WR
2013-03-17 00:19:04いや、待てよ。”どうにもならない”? 今自分の目の前にいるノリの軽い男も、それと協力するかのように自分の首を絞めているこちらの女性も、襲い掛かって来るが敵意や殺意は感じられない。助けを求めていること自体は嘘ではない。と、言うことは――。13 #WR
2013-03-17 00:20:55「なるほど。こいつら二人とも……メモリの力に呑まれているということかッ」 そうした前例が無い訳ではない。 ごく僅かだが、ガイアメモリを使用した人間が、自身の本能とメモリの中の記憶の同調で暴走状態に陥る事例もある。照井自身、捜査中に何度か目にしてきた。14 #WR
2013-03-17 00:22:37一度暴走状態に陥ると、本人の意思で力を解除することは出来なくなる上、巨大化やさらに凶悪な力を使用することがある為、非常に厄介だ。15 #WR
2013-03-17 00:24:36奴らは被害者、そう被害者なのだ。警察官が守るべき市民を攻撃して何になる。アクセルは自分の首を絞めるドーパントに裏拳を浴びせ、強引に引き剥がして距離を取り、メモリの力を抑えきれない二人に対し、冷静に語りかける。16 #WR
2013-03-17 00:26:16「分かった、分かった。俺が何とかしてやる。自分の力で抑えきれないと言うのなら何も……」 ――そうだ。奴らには悪意が無い。こちらが刺激しなければ何の問題もない筈だ。 ――落ち着け。冷静に、あくまでも冷静に……。17 #WR
2013-03-17 00:28:42アクセルは自身にそう言い聞かせ、動くなと促すが、紫の仮面のドーパントは、そんな彼にブレイクダンスの要領で、強力な回し蹴りを見舞った。無抵抗のままそれを喰らったアクセルは、後頭部をしたたかにぶつけ、ほんの一時意識を失ってしまう。18 #WR
2013-03-17 00:30:06気が付いた彼が最初に目にしたのは、自分を見下ろして楽しげにステップを踏む、V字頭の姿だ。 「……あ、ゴメ。今の俺、最高にたまんねぇから」19 #WR
2013-03-17 00:30:58――冷静に、冷静……に。 相手はメモリの力に飲まれ、暴走しているのだ。このくらいの抵抗は予想できた事だ。 アクセルは自身の心を落ち着かせ、再びドーパントの元に近付く。20 #WR
2013-03-17 00:33:27「動かないよう努力しろよ。直ぐに終わるからな。メモリさえ排出出来れば、お前らも……」 アクセルが十分に近寄ったことを見計らい、かぼちゃ顔のドーパントは、彼のこめかみに脳震盪が起こるほど強烈な右ストレートを見舞う。アクセルの膝が揺れて、体が左右にぐらついた。21 #WR
2013-03-17 00:34:12「ごめんなさいぃー。姫香が、姫香が悪いんじゃないんですぅー。めっ、めっ。止まれ、とまれぇって心の中で念じてるんですけどぉー」 「……」あれは抵抗。メモリの暴走に対し、この状況を打開せんと必死にもがいている証拠だ。俺は仮面ライダーだ。そんな人々を救わずして何になる。22 #WR
2013-03-17 00:36:32「いいか。落ち着け。まずは落ち着くんだ。落ちつければ……おごっ!」 「ごめんなさいぃー仮面ライダーさぁん……」 「落ちつけったって、無理なもんは無理だよ。俺、最高にたまんねぇし」23 #WR
2013-03-17 00:37:38二体のドーパントの蹴りと拳の応酬で、アクセルは雪が積もったアスファルトの上に叩きつけられてしまう。我慢に我慢を重ねてきたが、もう黙っていられない。アクセルの全身から発せられる排気熱で、周囲の雪が一瞬にして水溜まりに変わった。24 #WR
2013-03-17 00:39:46