【質問付き】ザ・ヴァーティゴ=サン&Mr.ウィルキンソン常駐型質問コーナー
「……ミズ・グリーンフィールズ!ちょうどいいところにきた。あの男は見つかったかね?」「それが、お迎えのリムジン(ウィルキンソン註:父の代からオーバーホールして使っている年代物だ。古くて困るが中身は最新のシステムだ)をやったのですが、アパートはもぬけの殻でしたの」「おや、なんと」
2013-06-27 13:50:27「申し訳ありません、私どもが……」「いや、君たちは何も落ち度がないよ。彼がいけないんだよ。彼がやり過ぎたのだ」「でも、旦那様、お言葉ですが、ちょっと厳しくしすぎたのでは?」「……フーム」私は窓の外の曇り空を見やった。「まあ、いい。さがりなさい」「さみしくなりますわね」
2013-06-27 13:53:29「いつもの暮らしが戻ってくるだけですよ、マダム」私は微笑みかけた。彼女が退出すると、私は再び書き物を開始した。この書斎の蔵書は小さな図書館程度の規模であるが、こうしてしんと静まり返った中で作業をするのも久しぶりだ。全くもって、現れた時同様、唐突にいなくなるものだ。
2013-06-27 13:58:30その時、窓をコツコツと叩く音があった。数度それが繰り返されたため、私は席を立ち、溜息と共に窓際へ向かった。私は世界中の学術団体から常に講演会のオファーがあり、準備作業に忙殺されている。こうしている時間も本来惜しいのだ。私は窓に近づいた。ガラスの向こう、その者が逆さまに顔を出した。
2013-06-27 14:06:56「おや、その格好で現れたのかね」私は銀のメンポ、ピンクの装束姿の男を見た。「いやあ、最後にアイサツしておこうと思ってさ。昨日は急な仕事をこなさなきゃいけなかったもんだから」逆さまのザ・ヴァーティゴは窓越しに言った。「それにしても、俺にしては同じレルムに随分長居しちまったもんだ!」
2013-06-27 14:11:12「全くだ」「もっとローストビーフを腹一杯食べておけばよかったぜ!それじゃあ、またな!いつかまた!」「出来ればごめんこうむりたいものだね」「ハッハー!それじゃあな!楽しかったぜ!美しいメイドのみなさんによろしく!オタッシャデー!」「はい、オタッシャデ」「ホー!ホー!ホー!」
2013-06-27 14:20:19ザ・ヴァーティゴは窓から顔を引っ込めた。直後、ウォルルルーン……名状しがたい叫び声がこの世界を揺るがした。空に無数の雷が光り、この館から飛び離れた影が……ふにゃふにゃした長い影が、稲妻の間をぬって飛んだ。私はその奇怪な龍の頭に、ザ・ヴァーティゴが跨っているのを見た。
2013-06-27 14:24:58光り輝くデンデンダイコを鳴らすザ・ヴァーティゴは、ふにゃふにゃした龍を駆り、稲妻の作る闇のトンネルの中へ、消えて行った。空は嘘のように晴れ渡り、日常が帰ってきた。私は席に戻り、再びペンを取った。そろそろお茶の時間だ。◇FIN◇
2013-06-27 14:28:32