精神科医・斎藤環氏が、「ひきこもりへの態度」を語る

精神科医・斎藤環氏が、ひきこもりへの「適切な態度」「不適切な態度」について述べた。 【参考】 http://blog.livedoor.jp/psw_yokohama/archives/52332637.html
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東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

先週土曜日のヤンキー講演会は盛況でした。一部動画がうまく再生されず残念でしたが、金八ソーラン http://t.co/Y1jfCn4sbv をお見せできたので良しとしておきます。ついでに当日「ひきこもりを批判したくなるか否か」でヤンキー度が決まると述べた意図を説明します。

2013-05-01 21:48:16
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

意外に思われるかもしれませんが「ひきこもり」に対するもっとも適切な態度は「無視」あるいは「無関心」だと考える。誰かに直接迷惑をかけているわけではない他者の問題に対して、その破滅的未来を予測して批判したり罵倒したりすることは単に「お節介」だ。

2013-05-01 21:48:52
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

それゆえ「ひきこもり」にさして関心がない方には、どうか通りすがりに気軽な揶揄を浴びせたりせず、無視するか沈黙を守って頂きたい。お望みなら儀礼的無関心とか言っても構わない。このことは拙著『「負けた」教の信者たち』(中公新書ラクレ)にも書きました。

2013-05-01 21:49:20
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

僕が彼らに関わっているのは、彼らがこのままひきこもり続けることをどうしても見過ごすことが出来ないという「儀礼的無関心違反」かもしれない。少なくともそれが一部の当事者にとって、いらざるお節介である可能性は否定しない。

2013-05-01 21:50:56
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

ならばなぜ、ひきこもりに関わるのか。僕の中の”ヤンキー的母性”がそれをさせるからだ。長田百合子は僕の戯画だ。親学や長田塾について批判的に考えるのは、(とりわけ)ひきこもり支援にしばしば胚胎しがちな暴力性を排除するためだ。

2013-05-01 21:52:17
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

僕自身、その暴力性と全く切れてはいない。一般に支援者が支援対象を批判し辱めることは禁忌、というか問題外である(はずだ)。いかなる支援の現場でも、それはあってはならない。しかるにひきこもり支援の現場ではそれが常態化していた。それもごく近い過去に。

2013-05-01 21:53:39
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

ひきこもり支援と銘打って拉致監禁まがいのサービスを展開した長田百合子は反知性主義的ヤンキーの典型だった(事実元ヤン)。複数のブンカジンが彼女の手法を熱烈に支持していた事実は忘れようにも忘れられない。恐ろしいことに、あれからまだ10年もたっていないのだ。

2013-05-01 21:54:57
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

ある専門誌がひきこもり特集を組んだ際、彼女の名前があることを理由に依頼を拒否する執筆者が続出して、あわてて名前を外したという経緯があった。専門家のプライドが同列に並べられることを許さなかったのだろう。

2013-05-01 21:55:45
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

僕のヤンキー批判がいささか急進的に見えたとすれば、親学シンパの安倍政権下で、またぞろ彼女が息を吹き返す可能性を怖れるから、という理由もある。もしそれを悪夢と呼ばないならば、何を悪夢と呼べばよいか。

2013-05-01 21:57:21
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

ついでに某所でひどい話を聞いたので付記。思春期の子を診ている治療者の方にお願い。治療関係ができる前に登校刺激をしないでください。抑圧的な親に味方するそぶりを見せないでください。そして最後に、いかなる理由があっても彼ら彼女らの「外見」に決して言及しないでください。

2013-05-01 21:58:41
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

彼ら彼女らがいかに孤立無援感に陥りやすく、いかにその苦境が永遠に続くと思い込みやすく、いかにわずかのことであっさりと絶望し生を断念してしまうか、その可能性をどうか忘れないでください。

2013-05-01 22:02:19
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

昨晩のツイート、賛否さまざまな意見をいただきました。批判はだいたい正論ですね。正論が主流であることは健全で良いと思います。でも正論はひきこもりのような例外的事象にはあまり役に立たない。たぶん誰もが思いつく役に立たない議論を正論と言うのだろう。

2013-05-02 23:50:00
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

やはり「ならぬことはならぬ」的意見が多いわけです。たぶん流行語大賞候補になるであろうこの「什の掟」については、行間に「理屈じゃない」(だから体罰!)の一言がにじむ反知性主義的ヤンキー語のひとつ、と認定したい。

2013-05-02 23:51:05
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

中井久夫によれば「(江戸時代において)会津藩だけが風化されぬ純粋培養の武を培養し続けてきた」らしいけれど、してみると武士とヤンキーの距離もあんがい近そうだ。

2013-05-02 23:51:26
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

奉仕活動義務化とか、若年層全体の適応レベルを上げるような政策はおそらく実施不可能でしょう。すでに徴兵制のある韓国に、日本と同レベルのひきこもり人口が存在することをみても。

2013-05-02 23:51:52
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

たぶん人間を群体として扱うなら「働き蟻の法則」に近いことが起こる。集団における意欲の分布が常に正規分布に従う、みたいな話。2割の勤勉のために2割の無為があると思えばひきこもりの存在も生態学的には無駄ではない、たぶん。

2013-05-02 23:52:13
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

それと「無視」「無関心」については、支援者は当然それじゃダメなわけで。これは「世間」の人々へ向けた言葉です。無責任な好奇心でつつき回すくらいならほっておいてくれ、と。安全圏に身を置いて裸も同然の弱者をいじるたのしさは禁欲してくれ、と。

2013-05-02 23:53:07