井上純弌ポニョ論考のまとめ

崖の上のポニョに関する井上純弌の論考まとめのようなもの
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井上純一(希有馬) @KEUMAYA

「ぽにょ」論(なぜあの世界はストレスを忌避し続けるのか)については完全に大悟したワタクシですが、発表する当てがありません。

2010-02-05 20:56:07
井上純一(希有馬) @KEUMAYA

ポニョのプロット上の最大の失敗は、『ポニョが人間になって地上に来ると津波が起こってしまう』というこの一点に尽きる。

2010-02-05 21:20:26
井上純一(希有馬) @KEUMAYA

つまりポニョの恋愛は、他者に多大なる犠牲を強いるわけであり、物語の常識で考えるなら、『ポニョが人間となることで、人間に共感できるようになる』→『自分のやったことの非道さを知る』となり、この恋愛は成就しない。悲劇となってしまう。

2010-02-05 21:21:05
井上純一(希有馬) @KEUMAYA

しかし、宮崎駿はこの物語をどうしてもハッピーエンドにしなければならなかった。映画はこの瞬間から、『ポニョのしでかしたことをどうにか誤魔化し、なんとなくハッピーエンドにする』という目的を持ち、それはある程度成功しているといえる。

2010-02-05 21:23:20
井上純一(希有馬) @KEUMAYA

この映画では『津波で困ってる人』を描けない。津波の被害(すごさ)も描けない。悪人も描けない。なぜなら、それを描いた瞬間にポニョが悪という事実がばれてしまうからだ。

2010-02-05 21:25:31
井上純一(希有馬) @KEUMAYA

それはどういうことかというと、『爽快で軽々とした津波』という矛盾であり、『とんでもない質量が空中に飛び上がるが、なぜか水柱はおこらない』という矛盾であり、『被害を受けた人たちがなぜか幸福そう』という矛盾である

2010-02-05 21:28:07
井上純一(希有馬) @KEUMAYA

これは非常に辛い。なぜならばアニメとは絵空事であり、その絵空事の中で宮崎が得意としていた『リアルな重量感』が描けないのだ。サンが走ると足元で砕ける亙、大混乱のラピュタを走り回るパズーの緊張感、キキが出発の晩鳴らす鈴。

2010-02-05 21:32:32
井上純一(希有馬) @KEUMAYA

そういった『絵空事の中のリアル』を、今回は一切使用できない。視聴者は被害のない、なんかもやもやとした『前代未聞の水害』を見せられるハメになる。

2010-02-05 21:34:16
井上純一(希有馬) @KEUMAYA

また、物語的に『ポニョが人間になる感動』も中途半端に描かれることになる。ポニョが本当に人間になると、彼女のやらかしたことに気がつかない矛盾が露呈してしまう。

2010-02-05 21:36:12
井上純一(希有馬) @KEUMAYA

クライマックスが、誤解したソースケが走ってジャンプするだけという腰砕けなこともこれに由来する。つまりポニョに関係するストレスを解消する展開は一切許されないのだ。ソコを描いた瞬間に、「この状況を創り出した奴は誰だ!」という、あたりまえの事実が突きつけられてしまうからだ。

2010-02-05 21:38:27
井上純一(希有馬) @KEUMAYA

だから、全てのシーンは幸せいっぱい、夢いっぱいに描かれなければならない。描かれなければ物語は崩壊してしまうからだ。ちょっとでもストレスが描かれるなら、それは『原因はポニョの一目惚れ』という身勝手であり、エゴであることがばれるからだ。

2010-02-05 21:40:47
井上純一(希有馬) @KEUMAYA

しかし場面構成の天才であり、動きの制御の匠である宮崎駿は、その大問題をやりきった! 『崖の上のポニョ』はそのプロット最初の大間違い、大失敗をどうにか誤魔化しきった。作家の力量であり、ジブリの底力である。これは素直に感歎する。

2010-02-05 21:45:12
井上純一(希有馬) @KEUMAYA

素晴らしく計算された画面は視聴者を釘付けにし、情動のコントロールは完璧であり、多くの視聴者はその画面に引き釣り込まれる。しかも物語の流れなんか気にしなくて良い。その場の情動に身を任せればいいのだ。頭を使う必要はない。だって、全てはそのために作られているのだから!

2010-02-05 21:48:29
井上純一(希有馬) @KEUMAYA

しかし、ここで気づくことがある。劇中にまったくストレスがなく、語られるべき物語もなく、音楽と動きに身をゆだね、ポニョとソースケの恋愛を感じるだけの映像とはなにか? ということである。

2010-02-05 21:51:58
井上純一(希有馬) @KEUMAYA

つまり、これは萌えアニメなのだ。深夜帯の。

2010-02-05 21:52:20
遠藤卓司@東京 @takujiendo

@KEUMAYA おおおおおお、なるほどーーー

2010-02-05 21:53:14
井上純一(希有馬) @KEUMAYA

日頃その存在を「異常」「変態的」「唾棄すべき」と批難してきた宮崎駿は、自分自身で萌えアニメを作るハメになったのだ。だから、これからは彼はそういったモノを否定できないと思う。否定するならダブスタ以外のなにものでもない。

2010-02-05 21:54:20
井上純一(希有馬) @KEUMAYA

重ね重ね言うが、ポニョの失敗は(そして成功は)『ポニョの一目惚れというエゴが、周囲に大被害をもたらせてしまう』という一点に尽きる。ポニョがとりとめなく、内容ものなにもなくなった原因であり、フワフワしたどうでもいい映画になってしまった原因は、最初の一手にあったのだ。

2010-02-05 21:57:43
井上純一(希有馬) @KEUMAYA

ポニョが選ぶべきは本来二つしかなかった。一つは『金魚姫の一目惚れが悲劇に終わる』という従来の物語であり、もう一つは『津波になど起こらない、地味な漁村の不思議話』というあまりビジュアル的に芳しくない作品である。

2010-02-05 22:01:43
井上純一(希有馬) @KEUMAYA

これを4年の歳月と、世界に誇る天才で、無理やり別な地平に吹き飛ばした怪作こそが“崖の上のポニョ”なのである。

2010-02-05 22:05:19
遠藤卓司@東京 @takujiendo

ほほ~、これは面白い RT @izumino: 「恐ろしい子だねー。本当に恐ろしい子だよ、この子は」と言いながらポニョの絵コンテを描いていたはやおですよ

2010-02-05 22:05:31
遠藤卓司@東京 @takujiendo

なるほど、なるほど。 RT @izumino: 「しかしこの恐ろしい子を幸せにしてやらねばいかん」

2010-02-05 22:05:54
井上純一(希有馬) @KEUMAYA

津波の後があの世に見えるのは、自分は結果論だと思っています。むろんかんとくの無意識までは推し量れませんが。 RT@tendoh 公開当初、友人とは「画面の中は幸せいっぱい夢いっぱいでなのにあの世の匂いしかしねぇ」と話してましたが、なんとなく納得いきました。

2010-02-05 22:14:30