【twitter小説】 悪霊の住む家 【短編】

悪霊に自宅が占拠されてしまった! 窓と庭で繰り広げた悪霊の娘と主人公のほんの短い交流の出来事。小説アカウント@decay_world で公開した短編小説です
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減衰世界 @decay_world

 庭と窓際を繋ぐこの会話は毎日続いた。リルケンもいい歳だったのでこんな年頃の娘と話す話題などあまりなかったが、彼女もうまく話を返してくれて話は途切れなかった。いつの間にかリルケンは家のことなどどうでもよくなっていたかもしれない。もちろん家のローンはまだ残っている。 25

2013-05-08 19:26:42
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 それよりも、売り物件だったこの家に付いてきたこの余計なおまけ……この、悪霊の娘ともっと話してみたくなった。彼女の方がこの家に長く住み、この家と共に生きてきたのだ。そのときの思い出もたくさん聞いた。犬を飼っていたとか、近くの学校に通っていたとか。 26

2013-05-08 19:31:33
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 そうして二週間が過ぎた。あっという間の二週間だった。いつものようにリルケンが仕事から帰ると、いつも二階の窓から彼が帰るのを待っている悪霊の娘が今日はいなかった。不思議に思って庭から家を覗いても誰の気配もない。娘の名を呼びながら玄関から入るリルケン。 27

2013-05-08 19:39:13
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 リビングに入ると、一つの買物袋と置き手紙が置いてあった。変な予感がしてリルケンは置き手紙を読む。そこには、簡潔に別れの言葉が書いてあった。 ”家を借りてすみませんでした。楽しかったです。さようなら。私は魂の安らぐ場所に行けそうです” 28

2013-05-08 19:44:34
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 彼女は無事浄化されたのだろうか。精神が壊れる前に未練の呪縛を断ち切ることができるとそういうこともありうる。買物袋を覗いてみる。すると、そこには…… 29

2013-05-08 19:50:02
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 胎児のように丸くなって安らかな顔で眠る娘の姿をした……小さな宝石の塊があった。 30

2013-05-08 19:57:11
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――悪霊の住む家 (了)

2013-05-08 19:58:28