『プライヴェート・ライアン』とミッキー・マウス

スピルバーグの『プライヴェート・ライアン』にほんの少し現れる、アニメーションへの言及について。
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細馬宏通(『フキダシ論』) @kaerusan

ディズニーやらフライシャーの昔のアニメーションをあれこれ掘ってると、ときどき自分が『プライベート・ライアン』に出てくるドイツ兵のような気がしてくることがある。「いいよね、蒸気船ウィリー、ぽっぽー。ベティ・ブープ!ベティ・グレイブル!」

2013-04-28 00:23:04
細馬宏通(『フキダシ論』) @kaerusan

30年代のドイツのミッキー受容は、ラクヴァ『ミッキー・マウス ディズニーとドイツ』(現代思潮新社)に詳しい。第二次世界大戦開戦後、ディズニーは反ナチス映画をいくつも作るのだが、当然それはドイツで上映されない。プライベート・ライアンの背景にはそういうアニメーションの歴史もある。

2013-04-28 14:30:21
細馬宏通(『フキダシ論』) @kaerusan

(承前)『プライベート・ライアン』でミッキーマウスが言及されてるのはあまり知られていないが、それは字幕に示されていないからかもしれない。捕まったドイツ兵はディズニーの「Steamboat Willie」の名前をあげる(昨日見直してみたら字幕には「マンガの蒸気船の船長」とあった)。

2013-04-28 15:03:00
細馬宏通(『フキダシ論』) @kaerusan

(承前)ドイツ兵が「ミッキー・マウス」と言わずに「蒸気船ウィリー Steamboat Willie」と言ったあと「ぽっぽー」とやる所作が(演出とはいえ)なかなか深い。ミッキーの名前ならただの知識からでも言えるが、「ぽっぽー」という仕草は映画を見ていないとわからないからだ。

2013-04-28 16:08:07
細馬宏通(『フキダシ論』) @kaerusan

(承前)そして皮肉にも映画のクレジットでは、このドイツ兵は「Steamboat Willie」と名付けられている。

2013-04-28 16:09:18
細馬宏通(『フキダシ論』) @kaerusan

わたしは『プライヴェート・ライアン』をドイツ兵の視点から見る。ドイツ兵は、なけなしのアメリカの知識によって命乞いをする愚かな存在であり、命を救われたことに鈍感な存在だ。けれど、その愚鈍さは戦争における人間のあり方を表している。そのドイツ兵を撃つことで米兵は別の愚鈍さに荷担する。

2013-05-04 00:48:26
細馬宏通(『フキダシ論』) @kaerusan

スピルバーグは映画の冒頭と終わりに星条旗を掲げることによって米兵の愚鈍さを形式的に隠しているが、映画の中身はむしろその愚鈍さを克明に描写してしまっている。あるいはスピルバーグの意図を越えて。

2013-05-04 00:51:14
細馬宏通(『フキダシ論』) @kaerusan

歴史的な俯瞰を停止させる存在、たとえばタンクをスピルバーグは導入する。そこが映画のハイライトになっている。

2013-05-04 00:59:58