【漫画に関するイイ話】 「モーニング」島田編集長と「宇宙兄弟」担当編集さんの日々の発言のまとめ
そんな風にして、特徴的な文を足すと、一気に文章のリズムが良くなり、読みやすくなります。うまいライターは、「なんかちょーだい!」みたいな言葉を、大胆に忍ばせてきます。11月末に朝日新聞に載せる青木巧さんのインタビュー文を読みながら、ライターのそんなテクニックに気づきました。
2010-10-28 18:14:10考えてみれば当たり前のことなんだけど、最近つくづく思います。人間は「頭のなかに入ってることしか思いつけない」ってこと。もっとストレートに言えば、ある人間の発想はすべて、その人間の記憶の組み合わせに過ぎないということ。
2010-10-29 21:18:29「天からアイデアが降ってくる」とか「神がアイデアを与えてくれる」ということは実際にはありえなくて、そう思えるようなひらめきがあったとしたら、それは意識していなかった記憶が頭のなかでうまくよみがえったり結びついたりしたってことなのでしょう。
2010-10-29 21:18:45だからこそインプットが重要です。たくさんものを見て、たくさん経験すること。頭のなかに材料が入っていればいるほどに発想は増える。材料が少なければ確実に発想が生まれる機会は減ると思います。
2010-10-29 21:18:57まあ、同じようなものを同じくらいの量だけ見ても、それを無意識に発想のもととして取り込む人と、まったく本当にスルーしちゃう人とがいるんでしょうが。ほんとに才能のある人って淡々とした日常生活だけでも発想のもとにしてしまう?
2010-10-29 21:19:07そういえば、あるとき気付いたのです。才能のある作家さんって「妙な体験」をたくさんしているって。些細だけどちょっと面白い体験から、そんなことってあるのかよ!? みたいなすごい体験まで。
2010-10-29 21:19:18やっぱ才能って運なんだなあ、と思っていたんだけど、ほんとは彼らは日常で出会ういろんなことを「面白いこと」としてこころに留める才能があったってことなんでしょう。活力あふれる精神には、この世は面白いことで満ちているのだと思います。
2010-10-29 21:19:28自分の頭のなかの材料でしか人間は発想できないけれど、だからこそ自分以外の人間と打ち合わせすることは意味があると思います。(うまくいけば)発想の可能性がそれこそ飛躍的に高まるはず。
2010-10-29 21:19:36作家さんと長時間ああでもないこうでもないってやってると、ポンっと文字通り飛躍的なアイデアが生まれる瞬間があります。何時間もぶっ続けで話しているので両者ヘトヘト。面白いのはお互いに「そのアイデアを言ったのは自分じゃない」って思ってるときがあるってこと。
2010-10-29 21:19:47お互い相手の口からアイデアが出た瞬間は記憶してないけど、少なくとも自分は絶対言ってない確信がある。そういうときは「漫画の神様」がアイデアをくれたんだと思っておけばいいのでしょう。
2010-10-29 21:19:58一人二役やるのは天才性やら根気やらいろいろな素質がいると思う。才能のレベルよりは向き不向き? 編集者としては「二人二役」のよき相方になれたらいいなと思います。1+1が10にも100にもなってしまうのがこの商売の面白いところ。
2010-10-29 21:20:22そういう相方を探している方、ぜひご応募を。日本最大級の巨大編集部があなたにぴったりのお相手を探します!? 次回MANGA OPENは11月30日締め切りです!http://morningmanga.com/news/800
2010-10-29 21:21:54小山さんと行動していると、他の作家さんと全く違うことを言い出したりします。昨日のサイン会の前、小山さんからカメラを渡され、今日来た人たちの写真を撮ってくださいと依頼されました。(昨日、写真を撮っていたのが僕です)何のために撮るんですか?と聞いたところ・・・・・・
2010-10-31 11:20:55サインを描いていると、話はできても下を見ていて、来てくれた人の顔を覚えれない。家に戻ってから、どんな人たちが来てくれたか見なおしたいんです、という返事。めったにできないサイン会を、小山さん自身も楽しみにしてくれているのが伝わってきました。
2010-10-31 11:27:28漫画家は、たくさんの人の顔、服装を観察しなければ、キャラを描き分けることができません。そういう訓練を小山さんは自然としているから、たった数回しか出てこないキャラでも、印象が残るように描けるのかもしれません。
2010-10-31 11:29:05いろんな作家さんの創造の現場に居合わせてきました。ああいう奇跡が単なる「記憶の組み合わせ」とはにわかには信じられないけど、でも現実的に考えればそうでしかあり得ない。「天からアイデア」が降ってくるなんてことあるわけないんだから。
2010-11-01 17:49:46普通に新人さんとアイデアを出し合ってるときなんか、お互いに記憶の中にあるもの、漫画だったり映画だったり実体験だったりをそれこそ「順列組み合わせ」させてると思う。あのキャラにあのキャラの味を足して、こういう世界観で動かしたら…みたいに。
2010-11-01 17:50:00“天才的”なやり方じゃないかもしれないけど、こういう素朴な「順列組み合わせ」は決して馬鹿にできない。天才的じゃない分、万人に受け入れられるメジャーなエンタテインメントが生まれやすいんじゃないでしょうか。
2010-11-01 17:50:12たとえば「ブルースリーのキャラに松田優作を足して、マッドマックス2の世界観で動かす」とか(あの作品はそこにさらに素晴らしいギミックが加わってますが)。
2010-11-01 17:50:23「見る」「読む」などの体験として入ってきたものを、自分の血肉化するためには、食べたものを栄養にするのと同じで、分解して消化するプロセスを経るはず。天才は、そのときどんくらいのサイズまで分解するかが違うのかも。
2010-11-01 17:50:35それこそギリギリの分子構造まで分解して吸収しちゃったら、もうそれは「元」がなんなのか本人にもわからないはず。つまり潜在意識の領域にしまわれてしまうってこと。
2010-11-01 17:50:45そういえばある作家さんが「見て読んだもんを覚えてるうちは、本当に身についたことにならないんじゃないか」って言ってた。「忘れることで身に着く」ってのは感覚的にも腑に落ちるところがありませんか?
2010-11-01 17:50:56つまり全部潜在式の底に落とし込んで、それを潜在意識のなかで順列組み合わせさせて放出するのが「天才的創造」ってことなのかもしれない。
2010-11-01 17:51:11