「テレビでは放送できない『児童ポルノ禁止法改正案』」(園田寿、萱野稔人):2013年6月24日

▽第183回国会への「児童買春・児童ポルノ禁止法」改正案提出(自民・公明・維新)を受け、2013年6月24日(月)、ニコニコ生放送にて『テレビでは放送できない「児童​ポルノ禁止法改正案」』と題した番組が約1時間半にわたり放送されました。その実況tweetをまとめます。(番組は終了後もリンク先で動画視聴が可能。) ▼テレビでは放送できない「児童ポルノ禁止法改正案」 - 2013/06/24 21:00開始 - ニコニコ生放送 http://live.nicovideo.jp/watch/lv142206305 ▽番組はゲストに、園田寿さん(刑法学、サイバー法。甲南大学法科大学院教授)を迎え、萱野稔人さん(政治哲学、社会理論。津田塾大学准教授)の司会でおこなわれました。なお、園田先生は著書として「児童買春・児童ポルノ禁止法」(1999年公布)のコンメンタール『解説 児童買春・児童ポルノ処罰法』(日本評論社, 1999年)も刊行しています。 ▽現行法および改正法案: 続きを読む
43
前へ 1 ・・ 16 17

※番組中で、司会者による「〔ストックホルム会議で〕非難を受けて日本代表団団長の清水さんは日本で法律を作って厳しく取り締まるんだ、と約束して帰ってきた」との要約(0:23:47-)に園田氏は頷き、「ストックホルム会議で児童買春とか児童ポルノに特化した法律を作ります、というふうに世界で公約してしまった」(0:24:29-)と発言している。だが、このあたりの事実関係には疑問もある。
 →▼https://twitter.com/beniuo/status/349141108116307968
 →▼https://twitter.com/Watts_D8/status/349141704470827010

※たとえば、ストックホルム会議に清水澄子議員(日本代表団首席代表)の秘書として参加したという宇佐美昌伸氏は、『ストックホルム会議における清水首席代表のスピーチでは、関係省庁の抵抗のために、法改正を約束することは盛り込めなかったが、』と明言している。次の論文を参照せよ。
 →▼宇佐美昌伸「子ども買春・子どもポルノ禁止法」をどう考えるか :その背景・内容・課題」(「現代文明学研究」第4号, 2001) http://www.kinokopress.com/civil/0407.htm
▽「ストックホルム会議についても、日本政府は従来の無関心に加え、正式の国連会議ではないという理由から、参加表明国が100ヶ国を超えた時点でも代表団派遣に消極的であった。しかし、NGOからの要請を受けつつ、女性国会議員が精力的に働き掛けた結果、ようやく代表団派遣を決定し、以前からこの問題に熱心に取り組んでおり、日本政府のストックホルム会議参加を強く訴えていた清水澄子参議院議員・経済企画政務次官(当時)が首席代表となった。
ストックホルム会議における清水首席代表のスピーチでは、関係省庁の抵抗のために、法改正を約束することは盛り込めなかったが、日本がこの問題において加害国となっていることを認めるとともに、「宣言及び行動アジェンダ」にコミットし、積極的に取り組みを進めることを公約した。
日本政府代表団には外務省、警察庁、厚生省(当時)及び総理府男女共同参画室(当時)の官僚もメンバーとして入ったが、一様に日本の取り組みの遅れを痛感し、このままでは日本が子どもの権利後進国として国際社会から非難を浴びかねないと危機感を募らせた。/ しかし、ストックホルム会議後も関係省庁の取り組みは遅々として進まなかった。辛うじて「子ども買春は犯罪です」と訴えるポスターが作成され、配布されたが、法改正は議題に上ることはなく、政策の推進体制も「省庁間連絡会議」止まりで、推進本部のような強力な機構が設けられることもなかった。清水議員はストックホルム会議前から新しい法案作りに着手していたが、政府の対応の遅さに議員立法で進めることを改めて決意し、法案作成作業を急いだ。」

 →▼https://twitter.com/Watts_D8/status/349165187657510913
※上掲tweetで、『性的虐待の被害児童の似顔絵を取り締まる為に絵を入れたのに、社会党の故・清水議員と自民党が漫画やアニメを規制しろにすり替えた』とする根拠は不詳。

※清水澄子議員(社会民主党所属)については、清水議員の秘書をつとめたという宇佐美昌伸氏(『ストックホルム会議の日本政府首席代表を務めた清水澄子参議院議員(当時)の秘書として同会議に参加するとともに、「子ども買春・子どもポルノ禁止法」の立案作業に携わ』った)による2001年の記述がある。(国会議事録や講演記録等に清水議員が明白に『すり替え』をおこなった記録があるのかもしれない。)
 →▼宇佐美昌伸「子ども買春・子どもポルノ禁止法」をどう考えるか :その背景・内容・課題」(2001) http://www.kinokopress.com/civil/0407.htm
▽「(1)「児童」(注18)の定義である「18歳未満に満たない者」とは実在の者を指すものであり、「18歳未満に見える」18歳以上の者や実在しない子どもは含まれない。つまり、18歳以上の者が女子高生を演じたポルノや、実在のモデルなしに描写されたコンピュータ・グラフィックス、コミックなどは含まれない――実在の児童に第3項に規定する姿態を実際にさせて描写した〔CG、コミックなどの〕場合は「児童ポルノ」となり得る――。但し、第3項に規定する子どもの姿態を描写したものに改変を加えたもの(コラージュなど)は事例に即して判断されるものであるが、本法の適用対象となり得る。なお、自社さPTではコミックやコンピュータ・グラフィックスなどのいわゆる擬似子どもポルノ」(pseudo child pornography)も処罰対象とすべきかどうかについて議論されたが、表現の自由との関係などから見送られた。しかし、「擬似ポルノ」の規制は国際的な課題であり、法見直しの際には中心的な検討事項の一つとなる。海外では日本の「マンガ」におけるポルノ描写は有名であり、今回法規制の対象とならなかったことに対して、失望・批判の声がある。 」
▽「(5)〔施行された「児童買春・児童ポルノ禁止法」第2条〕第3項中「その他の物」には、や電子データ(ネット画像やCD-ROM画像など)などが含まれる(実在の子どもに実際にさせた姿態を描写したものに限る)。〔中略〕 また、〔法案段階の〕自社さ案では「写真、絵、ビデオテープその他の物」として、「絵」を明示していたが、民主党がコミックとの関係から懸念を表明し、例示はしないこととなった。しかし、効果は変わらない。

※なお、自民党については、野田聖子衆議院議員(当時)に関する次の証言がある。(なお、最初の法案の共同提出者である“自社さ”三党の間にあった相違などについては、前掲宇佐美昌伸論文に詳しい。)
 →▼朝日新聞デジタル:マンガは児童ポルノじゃありません(小原篤のアニマゲ丼)〔2013年7月1日〕 - カルチャー http://www.asahi.com/culture/articles/TKY201306300066.html
▽「さかのぼれば1998年、「児童買春・ポルノ禁止法案(児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律案)」が国会に提出された時、児童ポルノを定義する条文には「写真、絵、ビデオテープその他の物」とあって「絵」が含まれていました。これではマンガやCGなどが規制対象になってしまうと論議を呼び、日弁連は意見書で、定義から「絵」を削除するよう求めました。マンガやCGを規制対象とする余地を残さないためです。
 提案者の一人だった野田聖子衆議院議員〔自民党〕は当時、私の取材に対して「本来はコミック、アニメ、CGも着手したかったが、この法案は実在する児童を被写体としたポルノに限定した。絵は、モデルが特定できるものだけが対象。その点は国会審議などで明確にする」と言いました(〔朝日新聞〕1998年6月18日朝刊)。結局、「児童ポルノから絵を除外する」などをポイントとする超党派の修正案が出され、99年に成立しました。」

『実在児童の人権擁護基金』

▼実在児童の人権擁護基金を作りました〔2010年12月30日〕|実在児童の人権擁護基金のブログ http://jitsuzai-jinken.cocolog-nifty.com/blog/2010/12/post-99b6.html

リンク jitsuzai-jinken.cocolog-nifty.com 実在児童の人権擁護基金のブログ
前へ 1 ・・ 16 17