ゼア・イズ・ア・ライト #0

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……フジキドは水面を見上げている。赤い帯が幾筋も立ち昇り、水を、視界を染めていく。赤い帯は彼自身の身体から漏れ出ている。血だ。命だ。水面の外に金色の光を感じる。太陽か?否。光、ゆっくりと自転する、黄金の立方体、決して失われることのない光。彼は手を上げようとする。掴もうとする。25

2013-06-25 15:58:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

その手が光に届くことはない。光は決して去ることがない。冷たく自転を続けるばかりである。彼の手を掴み、水から引き上げたのは、「……フユコ……」 26

2013-06-25 16:02:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「残念だけど」フジキドを引き上げながら、彼女は言った。「違うわ。コヨイです」「すまぬ」フジキドは譫言を恥じた。コヨイは彼に肩を貸した。二人と噴水ファウンテンは、輝きを帯びた黒い質量によって外界から隔てられている。彼女はフジキドを促す。 27

2013-06-25 16:14:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何故だ」なかば意識を失いかけながら、フジキドは問いを口にした。ただ、己が足を動かし白砂を駆ける感覚、それを支えるコヨイ、それらが夢うつつのように、フジキドのニューロンに刻まれる。コヨイは微かに笑ったようだった。「いいの」彼女は穏やかに呟いた。「私はただ……」 28

2013-06-25 16:20:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼女のトバリ・ジツは、他者の認識を拒み、隔て、守る……守る。視覚、嗅覚、ニンジャソウルの痕跡、それらを覆い隠し、決して追わせはしない。決して。彼女のトバリ・ジツを破れたものは一人として存在しなかった。それをフージ・クゥーチが破るまでは。 29

2013-06-25 16:32:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

闇が払われ、ネオサイタマの裏路地に、フジキドは転がった。そのすぐそばに、苦悶するコヨイがいた。彼らを見下ろすのは奇怪な鉄仮面を装着したクローンヤクザであった。その者はコヨイに片手をかざし、何らかの超自然力で縛り付けている。「これは異な事……」「ン……ンアアアーッ!」 30

2013-06-25 16:36:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「奥方……何をお考えか。アガメムノン=サンも悲しまれましょう」「ンアアアーッ!」コヨイは頭を抱え、突っ伏した。クローンヤクザの手が力の緊張にぶるぶると震える。「あの方が貴女を手の中で遊ばせてやっていたのも、貴女の家柄、資質、そうしたものを重点したればこそ。これでは閉口です」31

2013-06-25 16:42:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ンアアアーッ!」「……ドーモ。アガメムノン=サン。対象を確保」クローンヤクザは鉄仮面のIRC通信機構を操作する。「ソルスティス=サンの……裏切り者の処遇を」何事かの指示を聴いたのち、彼は頷いた。そしてコヨイを見下ろした。「獄を抱けソルスティス=サン。然る後セプクだ」 32

2013-06-25 16:49:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ンアアアーッ!」「フー」クローンヤクザは溜息を吐いた。「国家の大事、世界の変革に臨み、まったく馬鹿げたノイズだ」彼はしかし、不用意に近づきはしない。測っているのだ。コヨイは……ソルスティスは鍛錬された油断ならぬニンジャなのだから。 33

2013-06-25 17:03:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「スゥーッ……ハァーッ……」フジキドは震えながら息を吸い、吐いた。チャドー。フーリンカザン。チャドー。「スゥーッ……ハァーッ……」打開の糸口を。どんなに狭くとも。「スゥーッ……ハァーッ……」「……!」コヨイがアスファルトに手をついた。挑むように鉄仮面のクローンヤクザを睨む。 34

2013-06-25 17:06:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「よしたがいい」クローンヤクザは一歩後ずさった。「この距離、ニューロンを焼き切り殺すは造作無き事!」「スゥーッ……ハァーッ……」フジキドは震えた。立てぬ。クローンヤクザはフジキドを一瞥した。そして繰り返す。「よせ、ソルスティス=サン」「……!」ソルスティスは起き上がる。 35

2013-06-25 17:12:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「よせ!なんとなれば殺害しても良いと言われておる。それは誇りなき死だぞ!」クローンヤクザが喚いた。フジキドは状況判断する。あのクローンヤクザ……間違いなくフージ・クゥーチ……には、少なくとも、彼とソルスティスを二人同時に殺すだけの力が無いのだ。動け。彼は念じた。動け、身体! 36

2013-06-25 17:16:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」フージがその手に力を込め、突き出す。「ンアーッ!」ソルスティスがふたたび膝をついた。「イ……」フージが再度のニューロン攻撃を試みる。「イヤーッ!」ソルスティスが早い!彼女はフージめがけ飛びかかる!「イヤーッ!」そしてニンジャスレイヤーが立ち上がった! 37

2013-06-25 17:23:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

フージの心臓を襲ったソルスティスのチョップ突きは、しかし、届くことはなかった。フージのジツがソルスティスのニューロンを焼き切っていた。彼女の目と耳から血が流れる。彼女は己を強いてさらに踏み込み、フージにタックルをかけた。フジキドは走る。彼女は振り返った。「サヨナラ」 38

2013-06-25 17:26:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イイイイイヤアァーッ!」フジキドはバランスを崩しながらのドラゴン・トビゲリを放った。トビゲリはフージの鉄仮面を直撃した。ソルスティスに押さえられ、回避がならずだ。「グワーッ!」フージの首が100度後ろを向き、仰け反る。39

2013-06-25 17:30:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ソルスティスの身体が滑り落ち、アスファルトに伏す。「グワーッ!」フジキドは着地し損ない、アスファルトを転がる。「グワーッ!ア、アバーッ!?」フージは鉄仮面を両手で押さえ、たたらを踏んだ。ひしゃげた鉄仮面の接続部バチバチと火花を発する。「アバーッ!?ア、アバババーッ!?」40

2013-06-25 17:32:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「う……」ニンジャスレイヤーはなおも起き上がろうとする。そのまま倒れ、転がる。ゴミバケツが倒れ、中身が降りかかる。フージは痙攣し、火花を纏って奇怪なステップを踏む。「アバババババーッ!」倒れ込み、立ち上がり、ギクシャクと頭を左右に振りながら、彼は走り出した。「ヤーアアーッ!」41

2013-06-25 17:38:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

走り去るフージの背中が小さくなる。ニンジャスレイヤーはうつ伏せから身を反らし、震える手でスリケンを掴み、フージの方向へ、投げた。スリケンはニンジャスレイヤーからやや離れた場所に落ちた。ニンジャスレイヤーは次のスリケンを懐に探った。その途中で、動かなくなった。 42

2013-06-25 17:43:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「デンチュウニゴザル!デンチュウニゴザル!」会見者入場口から、悲鳴を上げてまろび出てきた大使館SPが、追って現れた湾岸警備兵に素早く羽交い締めにされた。談笑しながら会見を待っていた記者達が凍りついた。「デンチュウニゴザル!デン」BLAM!新たな湾岸警備兵が額を撃って殺した。44

2013-06-25 18:03:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ア……」「アイエエエエ!」「アイエエエエー!」記者達は口々に悲鳴を上げ、逃げ出そうとした。BLAMBLAMBLAM!天井にめがけ、アサルトライフル威嚇射撃!すべての出入り口から湾岸警備兵が現れる!「アイエエエエ!?」「静粛にせよ!」 45

2013-06-25 18:12:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

大音声を発し、壇上へ真っ直ぐに歩いてきたのは、抜き身のカタナを持ち、目を爛々と輝かせた男……湾岸警備軍将校、モノリエ・ヤスミである!そして、おお、ナムサン……後ろ手に縛られ、その隣に突き出されたのは、レツマギ大使ではないか!倉に隠れたが、単なる時間稼ぎに過ぎずか! 46

2013-06-25 18:41:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「会見の内容を変更する!」モノリエが顔面蒼白の記者達を見渡す。誰かが失禁した。「貴様ら惰弱メディア人種は!おめおめと敵性国キョート共和国の詭弁を、大人しく右から左へ喧伝する為にここに集まったか!エッコラー!」「アイエエエエ!」「我ら若き獅子が今こそ決断を下す!」 47

2013-06-25 18:45:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「グワーッ!」レツマギが悲鳴を上げた。兵士に頭を掴まれ、床に叩きつけられたのだ。後頭部に銃口が当てられた。「こんな事が!許されんぞ……何を考えて、グワーッ!」「正義は我らにあり!」モノリエが叫んだ。 48

2013-06-25 18:56:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「胡乱な災害に端を発する自国の経済破綻、政情不安から国民の目を背けさせるべく、我が国に対していわれなき非難の数々!オムラの不祥事までも我が国の責任に!許せないのであります!情けなさは我が国にもあり!私が命をかけて聖戦を……アー」レツマギを押さえる兵士を振り返り、「やれ」 49

2013-06-25 19:00:06