飯島明子先生の特別講義:「閉鎖性水系の有機汚濁」

神田外語大学で生物学と環境科学を教えていらっしゃる飯島明子先生(@a_iijimaa1 )による講義。 これ、ただで読んでしまっていいのか。 なんでEM菌の団子を川や海に入れても効果がないのか、じつにわかりやすく説明してくださっています。
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飯島明子 💉×7😷 @a_iijimaa1

EM菌がらみで思ったのだけれど、閉鎖水系の有機汚濁の話って、高校あたりで習っていたかしら?あまりにも昔のことで私は覚えがないのだけれど…。

2013-07-16 20:47:23
飯島明子 💉×7😷 @a_iijimaa1

ニセ科学についての基礎演習。補足講義をしたのは有機汚濁について。EM菌と米のとぎ汁発酵液について調べているグループのために。

2013-07-16 20:57:55
飯島明子 💉×7😷 @a_iijimaa1

水質汚染にも色々な種類がある。有害な物質(放射性セシウムとか水銀とかPCBとか)による汚染もあるけれど、とても身近なのは水中に有機物が多過ぎる「有機汚濁」。

2013-07-16 20:59:43
飯島明子 💉×7😷 @a_iijimaa1

有機物とは、炭素・水素・酸素がたくさんくっついた高分子化合物の総称。たとえば私たちの身体を作るタンパク質、その原料のアミノ酸も有機物。DNAも、脂肪も有機物。私たちが食べて栄養にしているのもすべて有機物。お米や麦に含まれるデンプンも、飴玉の糖分も。

2013-07-16 21:03:21
飯島明子 💉×7😷 @a_iijimaa1

このノートの紙も有機物だよ。紙は植物の細胞壁をつくるセルロースという有機物でできているから。要は、生物の身体は全部有機物です。

2013-07-16 21:04:38
飯島明子 💉×7😷 @a_iijimaa1

じゃあ、どうしてその有機物が水の中に「多過ぎる」状態になるのか。人口が多い場所の近くの湾や湖や川の場合、その理由は私たちの出す家庭排水がほとんど。汚い話だけど、誰だってトイレに行くよね。で、出すものもすべて有機物。飲み残した牛乳やお味噌汁の中にも沢山の有機物がある。

2013-07-16 21:07:40
飯島明子 💉×7😷 @a_iijimaa1

洗濯で出る排水、食器を洗った水、お風呂の排水、そこにも有機物がいっぱい。家庭排水は下水処理場に流れて行って、そこで処理されるので有機物自体はほとんどなくなるんだけど…、

2013-07-16 21:09:30
飯島明子 💉×7😷 @a_iijimaa1

なかなか除去しきれないものもある。それは窒素とリン。タンパク質やアミノ酸、DNAの中に、窒素は沢山入っている(リンはDNAなどのの中に)。そして私たちの排泄物の中にも。窒素はアンモニアや硝酸という形で水中に溶けこんでいる。

2013-07-16 21:12:44
飯島明子 💉×7😷 @a_iijimaa1

でもアンモニアやリンそのものは有機物じゃないんです。ただ、有機物の元になってしまう。なぜなら窒素やリンは、植物にとっては必要不可欠の肥料のようなものだから。そして水中で素早く増殖する「植物」、そう、植物プランクトンにとっても必要不可欠なのです。

2013-07-16 21:14:36
飯島明子 💉×7😷 @a_iijimaa1

水中に窒素やリンが多過ぎると、植物プランクトンは爆発的に増えます。何しろ単細胞だから、条件さえ整えば、二倍、二倍、二倍…、と増えて行く。増えすぎて水が濁って見える状態のことを「赤潮」といいます。沿岸に人口が集中している東京湾は、ほとんどいつも赤潮状態です。

2013-07-16 21:17:22
飯島明子 💉×7😷 @a_iijimaa1

でも、植物プランクトンが悪者というわけではありません(有毒プランクトンもいるけれど、そうでないものも多いので、ここでは有毒プランクトンの話は割愛)。植物プランクトンは動物プランクトンや貝などの食物になるので、生態系の中で必要。ただ他の生物に消費しきれないほど増えていることが問題。

2013-07-16 21:19:24
飯島明子 💉×7😷 @a_iijimaa1

無毒な植物プランクトン、たとえば珪藻類などが爆発的に増えても問題なのは、その植物プランクトン自身も有機物だ、ということ。水溶性の有機物を分泌したりもするし、本体も有機物。分泌された有機物や死んだ植物プランクトンはどうなるか? 波のあまりない静かな水系なら、水底に沈んでいきます。

2013-07-16 21:25:05
飯島明子 💉×7😷 @a_iijimaa1

そうして水底に沈んだ有機物は細菌によって分解されます。分解する時、細菌は酸素を消費します。そこで水の底には酸素の少ない(あるいは酸素のない)水がたまってしまうことがあります。水底の酸素がなくなると、そこに生きていた生物はみんな窒息して死んでしまいます。

2013-07-16 21:27:33
飯島明子 💉×7😷 @a_iijimaa1

細菌によって分解されれば有機物は消え去って万々歳、なのでしょうか? いえいえ、そんなことはありません。 ま、変な喩えなんですが…、私が冷蔵庫の野菜室にキャベツを入れっぱなしにして半年間海外出張しちゃったとしてみましょう。帰宅後、冷蔵庫の野菜室開けるとどうなってると思う?w

2013-07-16 21:32:15
飯島明子 💉×7😷 @a_iijimaa1

キャベツの形はしてないかもしれないけれど、得体の知れないものが野菜室にあるよね。細菌や真菌に分解されつつあるキャベツというか…。都合良く無くなってくれたりしないわけですよww

2013-07-16 21:33:08
飯島明子 💉×7😷 @a_iijimaa1

これ、大事なところです。水底の有機物も、細菌に分解されますが、結局はその細菌の体になってるわけで。残りの窒素やリンは水中に溶け出していますし、それを元にまた植物プランクトンが増えるわけです。つまり、菌任せにしていても有機物はその水系から出て行ったりしない。

2013-07-16 21:35:09
飯島明子 💉×7😷 @a_iijimaa1

@Butayama3 有機汚濁水域をきれいにするためには、1)入る水から有機物や窒素やリンを除去すること、2)何らかの方法で水中の有機物を除去すること、の2つしか方法がありません。EM菌はそのどちらにも寄与しない。

2013-07-17 06:51:15
飯島明子 💉×7😷 @a_iijimaa1

だから有機汚濁水域にEM菌を入れるのは、単に有機物を足しているだけ、ということになります。有機物を分解する菌なら元々いて、せっせと分解中なわけで、そこに菌足してどうする!?って話です。

2013-07-16 21:37:11
飯島明子 💉×7😷 @a_iijimaa1

有機物、あるいはリンや窒素は減らないけれど、水底の貧酸素は何とかしたい、ということであれば、曝気するという手はあります。

2013-07-16 21:40:04
飯島明子 💉×7😷 @a_iijimaa1

それともう一つあった。水中の窒素やリンを除去すること。これができれば植物プランクトンも増えすぎずに済みます。そして水中の窒素を減らすのにとても重要なのは、浅い水域(湿地や干潟)の存在なのですが、このお話はまた今度。

2013-07-16 21:42:17