「見たまえ。魔の山に取り憑かれたプロトンが登ってくる。今日は1967年7月13日。ツールは第13ステージだ」コッピはグレーの眼で鏡を見つめた。「君達は何故カイジュウと戦う?」「理由などあるか!奴らは俺たちを根絶やしにしようとしているんだ。だから戦う。当たり前だろう?」101
2013-11-06 19:07:05「Paura...」コッピは呟いた。「何だ?」「恐怖(paura)だよ、少年。カイジュウは宇宙や海底から侵略してくるのではない。周りの誰がカイジュウになるのかも分からない。カイジュウは人から生まれ、そして恐怖を喰らい成長し、そしてカンチェラーラ級のリヴァイアサンが生まれた」102
2013-11-06 19:11:08「君に見せよう。第一世代、《カテゴリー1》のカイジュウ誕生の瞬間を。カイジュウはPauraを苗床に、まさにこの時、この地に生まれたのだ。輪闘の鬼子として」103
2013-11-06 19:13:35......... 「フェリーチェ!fratello! 奴の様子はどうだ?」....「このタイム差ならもう奴は脅威じゃねぇ。だが奴の眼がおかしいんだ。瞳孔が開いて、あれは異教徒の狂信者の目だぞ!アリーア!バンションに構うな!シンプソンをマークしろ!奴は仕掛けてくるぞ!」 104
2013-11-06 19:18:31「仕掛けた!KOMまで後3.5キロ!」「口から泡をふいてアタックしているぞ!フレームが歪む!」「アリーア、かぶせろ!ブロック!」「....なんだ....奴の背中....」「...奴の背中が...割れた?」「....ひっ!怪物がっ!」 105
2013-11-06 19:22:06「メイデー!メイデー!UCIヘッド!シンプソンの背中から正体不明の怪物が出現した!イタリーのアシスト2名が喰われた!」「至急救助を!」「ぅぁああああっ!」 zzzZZZZZzzzzZZZZZZZZZZZ 106
2013-11-06 19:24:19........「この日、魔の山の頂上で4名がシンプソンの怪物に喰われ、13名が重傷。現場には背中が避けたシンプソンの亡骸が残された。その亡骸はサドルにまたがったまま壮絶な笑いを残していた。奴の最後の言葉だ。《みんな消えちまえ》」107
2013-11-06 19:27:44鏡は抱えていたコゼットの実存体を岩の影に横たえ、コッピに振り返って聞いた。「何故?何故オレにこの光景を見せる?何故オレなんだ?」「君じゃないと分からないと思ったからだ。《カイジュウ》が《恐怖により生まれる》という事実が。《頭》ではなく《魂の襞》でな」108
2013-11-06 19:32:02「あんたは最初、《レナード・バーンスタイン》と名乗り、そして次に《輪聖・ファウスト・コッピ》と名乗った」鏡はパイロットスーツのポケットからスキットルを取り出し、スコッチを一口飲みながら聞いた。「そろそろ三つ目の名前を名乗ったらどうだ?」 109
2013-11-06 19:34:39「インディーーーード!実はそうなんだ!」鷲のようなコッピの表情が代わり、浅黒い、そして繊細そうな若いアングロサクソンの顔になり破顔した。よく分かったね?同郷の匂いかね?」 110
2013-11-06 19:38:53男の顔を眺めながら、鏡はスキットルから最後のスコッチをあおり、そして口を拭きながらそれを谷底に投げた。「話が早い。待っていたよ。ミスタ・シンプソン。さぁ、オレとドリフトしろ。そして見せてくれ。あんたがあの時、何を見て何を感じたのかを」111
2013-11-06 19:41:43