友野詳氏の「シャハルサーガ 第4部」 ストーリー版

友野詳(@gmtomono、連載は@syahalsaga)氏によるルナル世界を舞台にした新作Twitterノベル「シャハルサーガ 第4部」のまとめです。 こちらは「採用された物語」だけを纏めて、ストーリーを追いやすくする事を目的としたリストです。 「採用されなかった選択肢」なども含めて全てを読まれたい方は、 http://togetter.com/li/563949 をご覧下さい。 第3部 全部入り:http://togetter.com/li/488909 続きを読む
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第4部 序夜

シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

「……わかりました、おばさま。氏族の壁を越えて、あたくしを育んでくださった、ラナークお養父(とう)さまの親切に報いるためにも……おまかせください。行きますわよ、アード・サイレントウルフ!」 幼い狼を従え、キノコ帽のエルファ娘が旅に出る。  #SSG選択 #シャハル4 0‐B

2013-08-21 20:29:23

第4部 第1夜

シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

マーディール大陸の北領域には、森が広がっている。地峡砂漠を越えたあたりは、まだまだ広葉樹だが、さらに北へ向かうと針葉樹が増えてくる。最北には、一年のなかばが雪に覆われている地域もあった。 #シャハル4 1

2013-09-13 22:12:12
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

黒みを帯びた太い木々と、細い葉が、雪にくるまれた森に、ひとりの少女が姿をあらわした。人間としても小柄、エルファとしてなら、まだ幼児とも見える背丈だ。しかし、横に広がったとがった耳の形は、すでに成人しかけている年齢のもの。 #シャハル4 2

2013-09-13 22:12:27
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

防寒服でふくれあがった少女は、森の入り口で、雪の中にひとりたたずんでいる。いや、彼女の足もとに、ころころした小さな影がもうひとつ。白と灰色の毛皮につつまれた、毛むくじゃらの生き物。幼い狼だ。 #シャハル4 3

2013-09-13 22:13:20
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

 かふ、かふかふかふっ。仔狼が、森の一角に向けて吠える。 「静かにしなさい。あなたはサイレントウルフの名を継ぐ者でしょう」  かふ、かふかふっ。 「だからこそ吠える? 隠れた相手の匂いをかぎつけたくらい、自慢にはなりませんよ」 #シャハル4 4

2013-09-13 22:14:02
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

森は黒い。枝や根の上、地面に積もった雪は真っ白でなめらかだ。何か動物がそこにいる痕跡など、そこには認められない。人間の目なら。だが、ここはエルファの森だ。 #シャハル4 5

2013-09-13 22:14:24
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

この大地に三番めにあらわれた緑の月。その月に住まうのは、あらゆる動植物たちの祖霊(トーテム)たち。彼ら祖霊に学び、自然との調和を尊び、森と一体となって生きる、長身痩躯に、長くとがった耳の種族、それがエルファである。 #シャハル4 6

2013-09-13 22:14:46
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

エルファ族は、森の民である。広大な大陸北部を覆う森のほとんどは、彼らの領域であった。だが、黒い森の前にたたずむ少女は、まとう衣装は人間族のもの近く分厚く、また身体にほどこされて個人の経歴をあらわす刺青も、この大陸のエルファたちとは、微妙に異なっていた。 #シャハル4 7

2013-09-13 22:15:44
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

「我はサイスの森、西南の三本の大樫の丘の部族において、緑の守りたる偉大なる樹人ラナーク・レスティリの養い子、カアンルーバと梟を崇めるラウンドアイ(全周を見る目)にて螺旋を進める、ソフィアなり」 #シャハル4 8

2013-09-13 22:16:19
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

少女は、その小柄な体つきからは想像もつかない、朗々とした声で名乗りをあげた。木の枝のひとつから、雪が、はらはらと零れ落ちた。細い、とうてい一人の体重を支えられるとは思えない枝の上に、人影が現れる。だが、少女ソフィアへの直接の返答は、まるで異なる場所から響いた。 #シャハル4 9

2013-09-13 22:17:17
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

「そのような森の名、聞いたこともないぞ、来訪のはらからよ」  人影が見えたのは少女の左にある木だが、声は右の高い杉から聞こえた。幹の先端から聞こえ始め、だんだんとおりてくる。だが、ところどころ雪がはりついた幹に、動く影など見当たらない。 #シャハル4 10

2013-09-13 22:18:02
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

 ソフィアの足もとで、狼が小さな声で唸った。 「……そう、魔法の気配はないのですね。体術だけで姿を隠しているということですか。これほどの手腕を持つならば、この森こそは期待できようというものです」  少女は、小さく息を吐いた。 #シャハル4 11

2013-09-13 22:18:37
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

少女から数歩の位置で、突然、雪が噴きあがった。雪煙がおさまると、そこに長身の男が立っていた。雪の中にいるのに衣服は手足がむきだしだ。あるいは手足にほどこした鱗のような刺青に、魔法的な防寒効果でもあるのかもしれない。ジャング、見張りを役目とする氏族である。 #シャハル4 12

2013-09-13 22:19:59
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

エルファは、崇める祖霊ごとに、異なる役割を持ち、同じ役割を持つものたちの集まりを氏族(クラン)と呼ぶ。あらゆる禁忌を排除するジャングの氏族は、森の外から穢れが入りこむことも防がねばならない。 #シャハル4 13

2013-09-13 22:20:18
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

「おまえの森ではどうだか知らぬが、このゼアレタの森では、偽りの名乗りは、懲罰を受けるのだ」  深い皺を刻まれた男の顔は、頑固とか狭量といった言葉を形にしたものように思えた。 #シャハル4 14

2013-09-13 22:20:38
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

膝まで届く長い両腕が、体の左右にだらりと垂れ下がっている。手の中はからっぽだが、ジャングの氏族は大蛇を祖霊としており、その身を大蛇のごとく敵に巻きつけ、締め上げて骨も砕く武術を心得ている。男からは、明確な殺気が放たれていた。仔狼が、相棒をかばって前に進み出る。 #シャハル4 15

2013-09-13 22:21:19
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

「少々、失礼させていただきますわね」  だが、ソフィアと名乗った少女は、まったく怖じけたようすもない。彼女は、ふところから、目のまわりを囲む枠だけの仮面を、顔に装着した。男が身構え、仔狼が唸る。 「……なんだ、それは?」 「眼鏡と申しますの」 #シャハル4 16

2013-09-13 22:21:48
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

「わたくし、目が悪いものですから……。せっかく、雪を噴き上げてこけおどしをしていただきましたのに、よくわかりませんでしたのよ。そのままでは失礼かと思いまして。あなたさまの、怒った顔を怖がってさしあげることもできませんし」 #シャハル4 17

2013-09-13 22:22:09
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

「こちらでは、まだ眼鏡は普及しておりませんが、わたくしが生まれ育ちました曙の大陸では、視力の矯正に使われる、安価な道具ですわ」 「曙の大陸……だと?」 「はい。一月かけて海を渡ってまいりました。我が森の名を聞かれたことがないのは、それゆえでしょう」 #シャハル4 18

2013-09-13 22:22:56
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

「わたくしの申し上げていることが嘘かどうか、わからぬ方ではないとお見受けしますが?」 #シャハル4 19

2013-09-13 22:23:21
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

  しばらく睨みあった末、この森を、外部の穢れから守る役目の老いたエルファは、ようやく、ほんのわずか態度をやわらげた。 「で、その、よその大陸の者がなんの用だ」 #シャハル4 20

2013-09-13 22:23:44

以下、現在集計中……

シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

「あなた方のフェルトレに会わせてください」  部族をまとめ導く役目の氏族との対面を、ソフィアは要求した。 「あなた方のフェルトレは、この世界を裏切っている可能性があります。必要とあれば、死んでいただかねばなりません」  冷徹な口調であった。 #SSG選択 #シャハル4 21‐A

2013-09-13 22:24:27