グッド・タイムズ・アー・ソー・ハード・トゥ・ファインド #4

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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

もうひとつの可能性、それは、校長の後ろ暗いなにかに近づこうとした人間。それこそ、退学者の件で。これも同様にあてずっぽうだ。証拠はこれから探すのだ。校長室で。「……」彼女は微かに下を見る。校長室のベランダ、窓。深呼吸をする。そして飛び降りた。 44

2013-10-12 01:16:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

体内にジワジワとアドレナリンが拡散する。手摺には補修の跡がある。キカは窓を振り返った。交換したばかりの窓なのだ。躊躇ってはいられない。ブレザーを脱ぎ、右腕にぐるぐると巻きつける。とんでもない行いだ。ユマナが見たら気絶するかもしれない。そして実際アブナイだ。 45

2013-10-12 01:20:39
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……!」腕を振り上げる。そこではたと気づき、取りやめる。窓ガラスに耳をつける。人の気配はない。ダイジョブ。ダイジョブだ。窓ガラスを割るなど、あの怪人になら、お手のものだ。事務室の窓を割ったように、校長室の窓も、あの怪人が割った。そういう事にできる。そう思わせる事ができる。46

2013-10-12 01:24:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……!」SMASH!腕を窓ガラスに叩きつける。SMASH!周囲に人はいない。SMASH!ガラスにヒビが入る。キカは深く息を吸い、歯を食いしばった。「……!」KRAAASH!ナムサン! 47

2013-10-12 01:29:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

新品のガラスが破砕!飛散防止の工夫がされたガラスが飴細工めいて歪む。それでも破片がいくつか飛び、うち一つがキカの頬に赤い筋をつくった。キカは安堵した。これくらいの傷なら誤魔化せる。割れたところから内側に手を差し入れ、サッシの鍵を外した。彼女は無人の校長室にエントリーした……。48

2013-10-12 01:32:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

書棚、ボンボリ、カーペット。黒檀の机。卓上にはフクスケ。何冊かの本。壁には「不如帰」「品の良さ」といった額縁入りのショドー。天井近くには神棚。神棚にはミニマム・トリイやマンダリンが飾られている。「どうしよう……」キカは呟き、探るべきものを探す。 49

2013-10-12 01:42:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

校長はリムジンで正門から出ていき、山を降りた。キカは注意深くそれを確かめてある。だが、今の音を聴きつけて、誰かが人を呼ぶかもしれない。確かめにくるかも。時間は無い。机……引き出し。キャビネット。開かない。鍵がいるのだ。窓と違って、壊し方がわからない。椅子に登り、神棚を探る。 50

2013-10-12 01:48:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

マンダリン、トリイ、トックリ。トックリを退けると、小さな鍵があった。ブルズアイ。こういう隠し方をする者は多い。キカは椅子から降り、キャビネットに挿しこむ。合わない。今度は引き出し。入った。鍵を捻ると、開いた。引き出しの中に更に鍵。キャビネットにそれを挿し込む。アタリだ。 51

2013-10-12 01:56:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

キャビネットには何冊かのファイルがあった。キカはここで少し逡巡する。恐ろしい考えが首をもたげる。ここに手がかりが無かったら?たとえば、どこか外の倉庫、地下室……その手の場所に隠されていたら?「今更」彼女は呟いた。それらファイルを小脇に抱えた。これはあの怪人の狼藉だ。悪い怪人。52

2013-10-12 02:04:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

卓上には写真立てがある。セピア色の写真。被写体はモンツキを着た校長である。キカは目をそらし、だがもう一度見た。「……」彼女は写真立てを手にとった。いつの写真だ?理解できぬまま、名状しがたい戦慄に首筋が粟立つ。校長はこの部屋に普段、積極的に人を入れる事はあるのだろうか? 53

2013-10-12 02:10:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

いつしかとっぷりと日が暮れ、室内の闇を見通すには目を凝らさねばならなかった。ボンボリをつければ怪しまれる。潮時だ。他に何か……彼女はもう一度室内を見渡す。「不如帰」のショドー額縁に手が届く。彼女はそれをずらした。壁には丸い穴が穿たれている。すぐに彼女はそれが銃創だと気づく。 54

2013-10-12 02:21:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

書棚には様々な背表紙。頭に入らない。何かが隠してあるかもしれない。だめだ。時間切れだ。キカは扉と窓を交互に見た。……窓だ。廊下は誰かに会うかもしれない。彼女は再び窓からベランダへ出た。手摺から顔をのぞかせ、下の、周囲の様子を伺う。誰もいない。どう降りる?梁を伝うしかないか。 55

2013-10-12 02:22:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……ザクッ……その時、キカの耳は、やや離れた下の音を拾う。ザクッ。ザクッ。「……」彼女は身を屈め、耳を凝らす。ザクッ。ザクッ。ザクッ。(俺、肉体労働は向いてないんだ。見ての通り軟弱でね)薄笑い混じりの声。(手を動かせ)ザクッ。ザクッ。彼女は思い当たった。土を掘っている! 56

2013-10-12 02:26:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

声の方向、刈り込まれた茂みの奥で、オレンジの光が閃く。携帯ボンボリを地面に当てているのだ。キカは目を凝らした。シャベルを使い、土を掘っている。おそらく二人。木々が邪魔で、動いている者達をうまく確認できない。シャベルが土をどけていく。もう、確かめなくてもわかる。何が出てくるか。57

2013-10-12 02:30:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

以前にキカが暴こうとした位置に実際近かった。彼女にはその時、土をどける手段が無かった。(ご対面!イッヒヒヒヒ!ご対面だ!)一人が、土の下から現れたものに……カンオケに、嬉々として屈みこむ!(こいつはちょっとしたスリラーだな!)その男はナツイ先生だ!蓋に手をかけ、開く……! 58

2013-10-12 02:34:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ALAS!カンオケの中には、何も無し!空っぽである!(ワーオ!それじゃ死体はどこ行った?腐って溶けちまったか?ゾンビーになっちまった?……なあ、どうしたもんだと思うね?))ナツイ先生が驚いてみせた。キカは瞬きも忘れ、校長室のベランダから、その光景を見守っていた。 59

2013-10-12 02:39:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【グッド・タイムズ・アー・ソー・ハード・トゥ・ファインド】#4 終わり。 #5 に続く

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