グッド・タイムズ・アー・ソー・ハード・トゥ・ファインド #4
(あらすじ:探偵ニンジャ、ディテクティヴは、女学園を蝕む何らかの陰謀を追っていた。彼は恐るべき秘密を掴み、校長を追い詰めるが、校長はニンジャだった。ピストルカラテむなしくディテクティヴは校長のカラテに敗れ去る。)
2013-10-05 10:25:16(一方、女生徒のキカは不可思議な胸騒ぎの果てに、カンオケ埋葬の場面を目撃してしまう。埋葬を指揮していたのは校長である。彼女はこの秘密の光景に執着し、学園内の探索を開始する。最優秀生徒ヤヨイの率いる闇組織ナカヨシ、怪しい退学者、キカ同様、何かを探っている臨時教師ナツイ……)
2013-10-05 10:32:09(ナツイの夜の違法探索行為を追跡したキカは、校内UNIXの深層データへのアクセスに至った。だがその時、UNIX事務室の廊下に浮かび上がる巨大な影法師!かねてより学園を騒がせていたオバケか?俺はこういう心臓に悪いシーンは嫌いさ!誰かなんとかしてくれよ!でもディテクティヴは死んだ!)
2013-10-05 10:36:56「ハァーッ……ハァーッ……」反対側の机の下でキカは息を殺し、闖入者の荒い息遣いを聴く。「ハァーッ……ハァーッ……」宙に浮く眼球でもなければ、影の主の動きを視認するなど不可能だ。彼女は少しでも聴覚情報を得ようとつとめる。 1
2013-10-05 10:44:39「ハァーッ……ハァーッ……!」影の主は荒い息を吐きながら、UNIXデッキの前(キカの隠れる机を挟んだすぐ向こうだ!)から動かない。やがて……カタカタ、バシバシという荒っぽく性急なタイピング音!デッキを操作しているのだ! 2
2013-10-05 10:55:10キカは考えを巡らせる。デッキを操作するということは、少なくとも闖入者は学園でここ数日噂されているようなテリブル・モンスターの類いでは無いということだ。目的は何だろう?情報を暴かれたことを懸念しているのか?情報を暴く側か?キカのように?とにかくこの場から離れないと……。「誰だ!」3
2013-10-05 11:15:29誰何したのは戸口に現れた新たな声である!「そこで何を……貴様!」「……!」キカは息を呑んだ。その声には聴き覚えがあった。校長だ!「ヌゥーッ……」闖入者の呻き声!そして床を蹴る音!叫び!「イヤーッ!」ゴウランガ!その者はキカ同様にUNIX机を飛び越えた。だが、ずっと高い! 4
2013-10-05 11:29:58KRAAAASH!キカは衝撃的瞬間を机の下で目の当たりにした。闖入者は机を飛び越え、窓ガラスを体当たりで破壊しながら、外へと跳んで逃げたのである!黒く巨大な翼めいて影が翻り、あっという間に窓の下へと消えた!「おのれ!」机群をこちらへ回り込んでくる足音!安心してはいられない。 5
2013-10-05 11:33:34キカは身を屈めたまま、校長とは逆側へ、机群をしめやかに回り込んだ。校長は割れ砕けた窓の下を憎々しげに見下ろした。「おのれ……どういう事だ……!」校長の懸念と注視がキカを救った。キカは振り返らず、気づかれぬままUNIX事務室から駆け出した。6
2013-10-05 11:47:21キカは廊下を全力で走った。彼女の胸は痺れるようだった。危険を乗り越えた高揚と緊張感、そして、ニンジャアトモスフィアによって!「ニンジャ……」走りながらキカは口に出して呟いた。「ニンジャだ……!ニンジャだった……!」 7
2013-10-05 11:54:14フェー。次の授業の始業を予告する笙リード音が廊下に鳴り響き、談笑していた生徒たちはやや慌て、笑いさざめきながら駆けて行った。「ほら、キミたちも急がないと。急いで」黒髪の痩せた音楽教師は数人の女生徒を優しく追い出した。彼女らが見えなくなると、音楽教師は廊下の門松飾りを見やった。 9
2013-10-05 12:17:26「……」門松飾りの付近の壁が、剥がれた。否、剥がれたのではない。それは壁ではない。壁と同色の布であった。フシギ!布をたたみながら現れたのは、赤黒装束の……ニンジャである!「ドーモ。ニンジャスレイヤー=サン」「ドーモ。フィルギア=サン」アイサツもそこそこに、彼らは教室へ入った。10
2013-10-05 12:20:03ナツイ先生、いや、もうよかろう……フィルギアという名のニンジャは無人の音楽教室の扉を後ろ手に閉め、薄笑いを向けた。「女の園だぜ、一人一人が美しい謎さ。怖いけど楽しくやってるよ。このまま就職しようかな……」「どこまで調べあげた?」ニンジャスレイヤーは取り合わず、本題に入る。 11
2013-10-05 12:28:06「簡単なようで難しい」とフィルギア。「笑える話は色々入ってくるんだが、セキュリティもきついな……そっちはどうだい、早速動いてンのか」「まだ何も掴めておらぬ」ニンジャスレイヤーはかぶりを振った。「だが少なくとも死体が出るまでは信じるわけにはいかぬ」「ヒヒヒ、爆発四散してたら?」12
2013-10-05 12:46:04「死体が無ければ、遺留品なりを探すだけだ。だが、そんな話はいい」ニンジャスレイヤーはフィルギアを睨んだ。「そもそも、彼の危機の話をもたらしたのはオヌシだぞ」「そう。アンタは恩に着る必要がある。俺にね」フィルギアはニンジャスレイヤーの視線を受けた。「トレード、わかるよね」 13
2013-10-05 13:16:25「……」ニンジャスレイヤーは腕組みして無言。消極的肯定である。フィルギアは話を始めた。「たまげるよ……キョートのキナ臭い動きを辿ってたら、アンタの元相棒。それから、ここの校長先生だ。俺、ブルッと来たよ。あいつ、こんな所に溶け込んで。嫌な奴だぜ、あっちは俺を知らないだろうけど」14
2013-10-05 13:30:37「どんなニンジャだ」「イヒヒ……」フィルギアは懐から古びたポートレートを取り出す。「学園の創業時かな。大正エラ。これ、初代理事長にして初代校長、創業者ね」「……」フィルギアは次に学校パンフレットの切り抜きを取り出す。「で、これが今の俺の上司だよね……今の校長先生の写真だ」15
2013-10-05 13:41:31ニンジャスレイヤーの瞼がぴくりと動いた。フィルギアは笑みを浮かべ、「よく似た血族だな?凄いよな、ヒヒヒ、それとも俺の長生きぶりを信じる材料になった?俺のロックンロールライフ……」「リアルニンジャだと……どんなジツを使う?」「俺は無害な有象無象だよ。肝心の秘密は知らないのさ」 16
2013-10-05 13:47:09「……」「俺じゃ奴を排除できない。そこでアンタのおっかないカラテの出番ってわけで」「シマナガシどもを使わんのか」「ウチの連中でこんな所に乗り込んだら大変さ」フィルギアは言った。「でも、アンタには却ってサイオーホース……俺の手に余る件だったからこそ、トレードが成立するんだよ」17
2013-10-05 13:57:22では、なぜこの男は校長を排除しようと考えるに至ったのか?ニンジャスレイヤーはフィルギアを凝視する。油断ならぬ男だ。何もかもを隠している。「ディテクティヴ=サンは何故この学園を探りに来た」「生きてると考えてンなら、本人から訊いたら……」フィルギアは笑う。「俺よりは信用がおける」18
2013-10-05 14:03:07「もう一度言っておくが」とニンジャスレイヤー。「ここでディテクティヴ=サンが消息を絶ったという情報自体、オヌシが出処だ。俺を都合よく操る偽情報の方便であったならば、オヌシを殺す」「イヒヒヒヒ、コワイ」フィルギアはホールドアップの仕草。「都合よく使いたいが、そういう嘘はねえさ」19
2013-10-05 14:22:14ニンジャスレイヤーは黙った。消極的肯定だ。「頑張ろうぜ」とフィルギア。それから思い出したように、「ああ、やらねえとは思うが、いきなり校長先生にかかっていくなよ。曲がりなりにも社会的地位のあるオッサンで、手の内もわからない。ディテクティヴ=サンの二の舞にならないようにしないと」20
2013-10-05 14:48:58「手の内がわからぬままなら、最終的にはどこかの時点で直接叩く事になる」「最終的にはな。だけど、そこらの憑依者とはわけが違う。それだけ忘れるな。ナメるのはダメだ」「当然だ」「その……強大なニンジャの中には、特別な護りを持っている奴も多くてさ……その辺の情報が欲しいんだよ」 21
2013-10-05 15:09:33