講談社モーニング編集長、島田英二郎氏は語る;「編集チームの考える『良い作品』と、読者にとっての『面白い作品』との乖離を、どう埋めていったらいいか?」
- Eric_Ridel
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いわゆる読者アンケートを見ています。ハガキや携帯でデータをとりますが、これの見方はなかなかむつかしいものです。すくなくともモーニングでは、ここ十数年、アンケートの上位に来るものと単行本が売れるものとの乖離が激しくなってきています。
2010-10-19 15:11:58アンケートはあまりふるわなくても単行本が売れる作品があるのです。また、アンケートがそれほど上位でないのに、連載が終了したらモーニングの売り上げに大きく影響する作品もあります。アンケートを編集方針の参考にするのもなかなかむつかしいもんだ。
2010-10-19 15:12:13でも「読者の声」にじっと耳を傾けていると、いろいろな本質が見えてくるのも確かです。アンケートは通常「面白かった作品に印をつけてください」という質問と、「雑誌に対して御意見を書いてください」という書き込み欄から構成されています。
2010-10-19 15:12:27そうすると書き込み欄である作品のことを誉めちぎってくれているのに「面白かった作品」では印をつけてくれない読者の方がけっこういる。
2010-10-19 15:12:39それともうひとつ。我々が「これはいい!」とかなりの自信をもって始めた作品がさっぱりアンケートでふるわないこともよくあるケース。作り手(作家・編集者)にとっての「いい作品」と読者の「面白い作品」との乖離は、こういう世界では永遠のテーマのひとつです。
2010-10-19 15:12:57我々は、クオリティの高い作品をいい作品と見なします。斬新なテーマがあって、緻密な構成力があって、絵が上手くて、情緒にも富んでいたらそれはクオリティの高い作品。でも、それは「面白い」ということとはまた別みたいなんだな。
2010-10-19 15:13:16「面白い」というのは「おいしい」ということとよく似ています。どんなにいい材料をつかって、繊細な味付けをしても、それを実際に「おいしい」と思うかどうかはその人次第で…
2010-10-19 15:13:31高級な料亭の料理は、立ち食いそばより「クオリティ」は高いに決まってっけど、どっちを「おいしい」と感じるかは人次第だし、同じ人でも時と場合にもよる。料理人がどんなにクオリティを力説しても「だって立ち食いのがおいしいだもん!」と思う客の気持ちは動かせない。
2010-10-19 15:13:44何をおいしいと思うかは、そのときの気分やシチュエーションで大きく左右されます。アンケートと単行本の売れ行きの乖離はそれをわかりやすくあらわしています。編集者の仕事は作品をその場その場で「おいしい」と感じてもらえるようシチュエーションを演出すること。
2010-10-19 15:13:57もうひとつ大きいのは「親しみ」という要素かもしれない。食べ慣れないと「おいしい」と感じないでしょ? 書き込み欄で誉めていて、「面白かった作品」に印をつけてくれない人は「いい料理だけどおいしいと感じるには至ってない」人が多いみたいです。
2010-10-19 15:14:33ずっと食べ続けてもらうことも重要なんだけど、やはりそこでもキャラクターが「親しみ」を感じさせる重要な要素になる気がします。キャラクターの存在感や魅力が「いい料理」を「おいしい」と感じさせる大きなきっかけになるんじゃないか?
2010-10-19 15:14:47