オイランドロイド・アンド・アンドロイド #2

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『JUNKO:どうやって阻止するの』ユンコはトロ成分を補給しAIを活性化させる。『YCNAN:スキャンダルよ。今日このライブ直前に、骨抜き法案を通すための秘密工作セッタイが行われたの。ネコネコカワイイによって……正確にはメガロ・キモチ社によって。その動かぬ証拠データを盗む』 23

2014-01-15 01:53:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『JUNKO:てことは……ネコネコカワイイの制御チームが使ってるUNIXを……ハッキングする?』『YCNAN:ノープ。彼女たちの記憶データには、UNIXからは直接アクセスできない。アクセス手段は本体へのLAN直結のみ。でも、そこに潜ったハッカーは即座に発狂すると言われてる』 24

2014-01-15 02:05:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『JUNKO:待って、何か変じゃない?じゃあ記憶データはどう管理されてるの?』『YCNAN:ピグマリオン型高等AIを搭載したオイランドロイドを、バッファとして並列直結する必要があると言われてるわ。時間の猶予は無い。国会の会期を考えると直結チャンスはライブ中のみ。つまり……』 25

2014-01-15 02:25:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『JUNKO:待って、何か変じゃない?じゃあ記憶データはどう管理されてるの?』『YCNAN:ピグマリオン型高等AIを搭載したオイランドロイドを、バッファとして並列直結する必要があると言われてるわ。時間の猶予は無い。国会の会期を考えると直結チャンスはライブ中のみ。つまり……』 25

2014-01-15 22:40:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ナンシーは剛胆なる作戦を語った。その黒いサイバーサングラスで目元を隠したまま。表情ひとつ変えず。『JUNKO:……私がネコネコカワイイに擬装して……ステージに立つ!?』ユンコは驚き、バーコード眉を大げさに吊り上げて目を見開く。トロ・スシを頬張ったままソファから立ち上がる。 26

2014-01-15 22:45:41
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『YCNAN:そう、あなたの力が必要なの。ライブ中には何度か、2体のLAN直結同期演出があるわ。ステージ上の方が怪しまれない。そしてあなたのマイコ回路に搭載されたAIは、謎多きピグマリオン型を確かにエミュレートしてる。直結時の危険を、回避できる』ナンシーは事も無げに語る。 27

2014-01-15 22:53:04
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『JUNKO:もう1体はどうするの?ダンスとかは?』『YCNAN:手筈は整ってる。協力者も居る。この件についての勇気ある密告者がね』『JUNKO:無理よ』『YCNAN:聞いて。ライブ中に何回かネコネコカワイイはボディチェンジと衣装変えを行う。そこで二号機と入れ替わるのよ』 28

2014-01-15 22:58:33
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無論、ユンコでなければ実現不可能な理由がもう1個存在する。2体の完全なるユニゾンした非人間的同期ダンスと、人間の骨格では構造上不可能なネコネコカワイイ・ジャンプである。『YCNAN:ダンスパターンやMCテキストはデータを違法中継するから大丈夫。その間はAIに身を委ねれば…』 29

2014-01-15 23:04:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『JUNKO:だから無理』ユンコが拒否。『YCNAN:あなたならできるわ』ナンシーはサイバーグラスの下で制限時間を何度も気にしながら、いささか強引に進める。その原因は弟子がブリーフィングに遅刻したためだ。『JUNKO:それにアイドルの真似なんて嫌。媚びてて、ダサいし』 30

2014-01-15 23:11:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ナンシーはそれが複雑な年齢特有の殻だとも考えていた。『YCNAN:ハッカーになるなら、困難を何度も克服しなくちゃいけないわ。このまま手をこまねいていれば、法案が……』「ファック、ノー!」ユンコは思わず電子音声で喋り、ユノミを強化ガラステーブルに叩きつけた。ヒビが入っていた。 31

2014-01-15 23:16:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ユンコは自分でも驚いた。ナンシーに対してこのような反抗は初めてだった。ナンシーはよくしてくれている、好きだし、感謝もしている、でもそれとこれとは別問題で……イライラして自分でも整理がつかない。左眼の∴が混乱したように回転し、ユンコのデジタル視界内ではOSカエルが走り回る。 32

2014-01-15 23:23:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「確かに社会正義。反抗。そう思う。でも、私の気持ちは何処にあるの?嫌。私は確かに人権も投票権も無いけど、オイランドロイドじゃない。確かにダンスは好きだけど。ええと…違う、一緒にされたくない!私のスタイルじゃない!」ユンコが怒る。別の記者がその様子をちらりと見て、目を逸らす。 33

2014-01-15 23:30:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「あんな、リップシンクで、紛い物で、言いなりの人形とは違う。私は人間」「ごめんなさいね、そんなつもりで言ったんじゃ……」ナンシーは己の過ちを悟った。そしてユンコを優しくハグしたが、彼女はそれを押しのけて拒んだ。「ねえ、ナンシー=サン。最近なんだか、私よりよっぽど機械みたい」 34

2014-01-15 23:38:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ユンコは肩をいからせながら、控え室のドアを開けて廊下に出て行く。「アイエエエエエ!」同時に入室しようとしていたメガロ・キモチ社広報が床に倒れ、オチョコやオハギ重箱が転がった。「待って!」ナンシーが後を追う。だがすでにユンコは慌ただしく行き交うイベント関係者の波に消えていた。 35

2014-01-15 23:47:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「フゥーッ……難しいわ」ナンシーは腰に手をやり、後ろ髪を搔き上げる。今から追っても時間切れだ。「うまく行かないものね」そしてソファに戻り、ニューロンを活性化させるためにオーガニック・トロを食した。独力でもこの社会不正を暴いてみせる。彼女は決して諦めない。策を練る必要がある。 36

2014-01-15 23:56:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

それからどれだけ、怒りに任せて歩き回っただろう。二、三分か。あるいは三十分以上か。ナンシーの所に謝りに戻る気は無かった。 38

2014-01-16 00:09:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ユンコはまだ怒っていた。彼女は絶対に自己否定しないし、卑屈にもならない。行きていく上でどれだけ不利でも、スタイルを変える気はない。ファックオフだ。1回死んで機械の体。電子ノイズみたいな存在。誰も気にしない。電子的なゴースト。凄くカワイイ。人間めいた思考が混乱する。 39

2014-01-16 00:13:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

美味しい刺身ですか?ナンシー=サン嫌いじゃなかったけど、もう、ハッカー修行もこれでお終い?機械工学の勉強も?そうかも。医療します?考えればいい。理不尽を受け入れるたび魂が老いてゆくなら。年老いる事なく永遠に生きてやる。このボディで。カワイイ。大好き。父さんがその権利をくれた。40

2014-01-16 00:17:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

サイバーゴスブーツを鳴らしながら、廊下を歩き、階段を上り下りする。誰に教わったかは忘れたが、こうすると乱れた思考がまとまるメソッド。廃スシビルでの階段昇降がフィードバック。あのオイランドロイド。穏やかな記憶。混乱が徐々に静まる。気付けばドリンク休憩所。「……ここ、どこだ?」 41

2014-01-16 00:26:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……プレスの人?」バリキドリンクを補給していた、どこか陰のある四十がらみのエンジニア・サラリマンが彼女に声をかけた。上級報道バスを見てそう判断したのだろう。男のスーツやネクタイは乱れ、三日は寝ていないであろうことを容易に想像させる。 42

2014-01-16 00:38:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アッハイ」彼女は向き直った。そして思いがけず、その紋を認識した。男のネクタイを留めるタイピン。今は亡きオムラ・インダストリの紋。父が勤めていた暗黒メガコーポ。「……オムラ……?」……いや、微妙に意匠が違う。 43

2014-01-16 00:46:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ああ…なるほど。これはオムラ・メディテック社です。知ってますか?」男が彼女の視線に気づき、自分のネクタイを見て小さく笑う。男の首筋から無防備に垂れた二本のLANケーブルが、熟練の現場アトモスフィアを漂わせる。「倒産したんじゃないの?」「ハイ。でもまだ私の忠誠心はオムラだ」 44

2014-01-16 00:50:20