オイランドロイド・アンド・アンドロイド #2
オムラ・メディテック社は、オムラ・インダストリ社が新規事業開発のために興した、ケイレツ・カンパニーのひとつだ。彼らは十年以上前、メガロ・キモチ社やピグマリオン・コシモト兄弟カンパニー社とともに、ネコネコカワイイを開発した。 45
2014-01-16 01:04:09「ネコネコカワイイを、作ったんですか?」ユンコはこの男にどこか惹かれた。テックの息づかいに。「我々が作りました。今でも保守しています。我々にしかできないんだ」男はドリンクを飲み干す。「誇りがあります。絶対にリップシンクなどしない。実際発声します。技術です」「エッ……スゴイ」 46
2014-01-16 01:11:27本来このエリアは、上級報道パスを持っていようとも立入禁止だ。彼女は人の流れに乗り、偶然にもここへ流れ着いてしまったのだ。今回の大規模ライブに備え不眠不休の過剰労働を行ってきたこのエンジニアに、そのような判断力は残っていない。「現場に興味が?案内しましょう。ぜひ知ってほしい」 47
2014-01-16 01:22:07ガゴンプシュー。男はエンジニアパスでドアを開けユンコを長い廊下へ導く。「技術。そして誇りです。しかしムーブメントは、余りにも大きくなり過ぎました……おっと、スミマセン」「ス、スミマセン、スミマセン」ドアの向こうから休憩室へ出てきた別なエンジニアがぶつかり、過剰気味に謝る。 48
2014-01-16 01:32:43「これが……」ユンコは左右のUNIXルームに集められた数百人規模の過剰労働サラリマンを見た。メガロ・キモチやオナタカミの社員は存在しない。華々しい表舞台に立つ彼らとは対象に、ネコネコカワイイを愛する元オムラ・メディテックや傭兵エンジニアが自主的に搾取の歯車を回していたのだ。 49
2014-01-16 01:44:52ショッギョ・ムッジョ!これが、かつてこの世の春を謳歌したオムラ・メディテック社の高等サラリマンの姿か!プライドという呪縛から逃れた一部の者たちは、オナタカミ医療ドロイド部門へ吸収され、ヘルシーに儲かっている。だが忠誠心が勝った者はこのチームに残り、死の行進を続けているのだ。 50
2014-01-16 01:55:13驚くべき事に、彼らは反乱を起こさない。ネコネコカワイイの存続だけが彼らの望みだからだ。ゆえにメガロ・キモチやオナタカミは最低限の傭兵を補充し現場で鍛えながら、このチームを使い続ける。ネコネコカワイイとは即ち、巨大な力だ。そして忠誠心持つエンジニアは絶対にその力を悪用しない。 51
2014-01-16 02:01:56だが、仮に、もし……この数十万という観衆をアジテートし進歩的革命の力に利用せんと企む者が、このエンジニアルームに紛れ込んでいたとしたら……?そして彼らの革命とは、前提としての暴力を辞さないものだったとしたら……? 52
2014-01-16 02:13:19おお、見よ!誰もいない休憩室に佇む、先程の挙動不審エンジニアを!彼はネクタイを緩め、ワイシャツのボタンを外した。その下に覗くシャツは……赤い!「進歩!革命!打倒!」そして今、彼は秘密IRC端末を用い、スタジアムに潜伏するニンジャ闘士らに対して暗号スローガンを送ったのである! 53
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