加藤典洋氏の「プルトニウム返還要求の意味」まとめ

以下のニュースについて、加藤典洋氏による背景説明と私見。 ------------------ 核物質や原子力施設を防護・保全する「核セキュリティー」を重視するオバマ米政権が日本政府に対し、冷戦時代に米国などが研究用として日本に提供した核物質プルトニウムの返還を求めていることが26日、分かった。  このプルトニウムは茨城県東海村の高速炉臨界実験装置(FCA)で使う核燃料用の約300キロ。高濃度で軍事利用に適した「兵器級プルトニウム」が大半を占め、単純計算で核兵器40~50発分程度に相当する。 続きを読む
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加藤典洋 @ten_kato

プル24 しつつ、 では保持しているプルトニウムはどうするのかへの言及がない。つまり拙速、乱暴。この問題に対し、相談に預かる権利をもつ協定相手国、さらに国際社会への責任を完全に放棄している。米から見れば、そうなる。米からは、安倍の靖国参拝以後の行動も、細川・小泉の原発ゼロもともに

2014-01-27 16:34:23
加藤典洋 @ten_kato

プル25 日米原子力協定の前提となっていた日米間の信頼を損なう政治センスの持ち主と見えるでしょう。その結果が、今回の動きで、2018年以後の日米原子力協定では、「包括同意」を外す。今回の米国のプルトニウム返還要求は、そのことに向けた警告だと私は考えています。ではなぜこれが

2014-01-27 16:34:40
加藤典洋 @ten_kato

プル26 「大ニュース」か。「包括同意」がなくなったら、日本はどうなるか。2012年10月4日に日本記者クラブで遠藤哲也が「日米原子力協定のゆくえと原発ゼロ政策」のテーマで、トークしていますが、「個別同意」ではとても六ヶ所村の再処理工場など運営できないと述べています。

2014-01-27 16:34:53
加藤典洋 @ten_kato

プル27 むろん核燃サイクルなど日本政府がやろうとしてもアメリカの拒否権のもとで、もうやりきれるものではなくなる。日本の核政策(技術抑止政策)は完全に頓挫するし、ひいては今後、日本の核技術の水準の維持は、望めなくなる、日本の原子力政策は破綻するだろう、ということです。この遠藤哲也

2014-01-27 16:35:16
加藤典洋 @ten_kato

のトークは必見です。 http://t.co/ZCezIYCOw1 私の眼には、ベストミックス論者の寺島実郎氏の考えも、この点、ほぼ遠藤氏と同様と見えますが、

2014-01-27 16:35:50
加藤典洋 @ten_kato

プル29 核燃料サイクルを保持しての原発「平和利用」プラス「核抑止」政策というこれまで数十年続いてきた日本の原子力政策は、今回の安倍政権の暴走とアメリカの返還要求決定によって、選択肢から消えようとしている、ということです。つまり、中庸の策の可能性は消えた。

2014-01-27 16:36:08
加藤典洋 @ten_kato

プル30 今後は次の二つに一つしかなくなった。一つは、私が先の本で述べた道ですが、日本は今後、核燃料サイクルを放棄し、保持しているプルトニウムは何らかのかたちで国際社会の管理へと委ねる要請を行い、はっきりと核技術抑止政策の放棄を内外に宣言して、平和国家として、脱原発社会で進む。

2014-01-27 16:36:27
加藤典洋 @ten_kato

プル31 もう一つは、アメリカとの信頼関係をなくした後、独自に、なおも核燃料サイクル、核技術抑止政策、原発維持を邁進する、孤立化の道です。前者は、細川・小泉ラインが、脱原発に、さらに平和政策の採用をも併せもつ本格的姿勢を打ち出さなければ、もはや脱原発の政策的なインテグリティ

2014-01-27 16:36:41
加藤典洋 @ten_kato

プル32 (齊一性)をとれないことを示しています。後者は、安倍ラインがこのままいけば石原慎太郎の「アメリカに『ノー』をいう」核武装へと進む可能性が強いことを示唆しています。今回の警告で、米は2018年の日米原子力交渉で「包括同意」方式の撤廃を主張する可能性が大きい。

2014-01-27 16:36:54
加藤典洋 @ten_kato

プル33 日本がこれを認めなければこれが強烈な日米対立の発火点になります。数十年後、ここで「戻れなかったか」といわれる分岐点になりかねない。これまでこんなに投資してきた核燃サイクルと再処理を断念し、放棄できるかどうか、が政治問題になる。1905年の満州鉄道の経営権問題をめぐる

2014-01-27 16:37:05
加藤典洋 @ten_kato

プル34 ハリマン(米)との対立を思わせます。つまり、今回のプルトニウム返還要求でいまや風前の灯となったのは、この二つの間の中庸のオプション、寺島実郎氏、遠藤哲也氏らがめざしてきた核抑止政策と核燃サイクルを保持し、日本の高度な核・原子技術水準、人材は確保しつつ、

2014-01-27 16:37:17
加藤典洋 @ten_kato

プル35 国際社会に発言権を保持しながら、核の平和利用にあくまでも徹するという道なのです。私に言わせれば、そもそも、そのようなやわな弥縫策(核抑止を保持しながら平和国家としての声望をも国際社会に要求するという楽天的なよいとこ取り路線)は甘かった。平和に徹する理念とか政策思想とかは

2014-01-27 16:37:34
加藤典洋 @ten_kato

プル36 人間の顔をした冷静な「信義」に基づかなければならない。やはり私の先に述べた平和立国論しかない。ここ20年ほどの日本の政治が抱えてきた危うさを、このたびの安倍政権のネトウヨ的暴走が明らかにしたのだというのが、私の考えです。

2014-01-27 16:38:05
加藤典洋 @ten_kato

プル37 一言でいえば、日本はアジアに足場をもつ以外に生きていけない。そのためにはアジア隣国にしっかりと謝罪し、信頼を獲得する透徹した政治的な覚悟が必要です。と同時に、長期的なエネルギー政策とそれに連動するやはり長期的な経済政策(廃炉復興作業、国債問題への対処)が大事。

2014-01-27 16:38:21
加藤典洋 @ten_kato

プル38 また、米軍基地問題、原爆の投下をめぐる関係正常化を含む日米関係、それをささえる新しい外交的指針も必要となってくる。では誰がそれをやれるのか。あまり人が見あたらない。払底してしまった。しかし、今回は、細川・小泉に条件づきで、一票か。これが私の見方です。

2014-01-27 16:38:31
加藤典洋 @ten_kato

プル39 一方、米国の今回のプルトニウム返還要求の言い分はこうでしょう。安倍は暴走し危険になった。細川・小泉もあてにならない。石原、橋下、田母神は極右。翻って抑止勢力はいるか。民主はダメ、小沢はもう潰してしまった。やはり、あまり人が見あたらない。仕方がない、来る2018年の改訂に

2014-01-27 16:38:43
加藤典洋 @ten_kato

プル40 先立ち、プルトニウム返還要求という未曾有のかたちで、警告を行おう。――これは、先の「失望」よりも強い日本政治の劣化への「警告」です。しかし、NHK会長の会見を見ても日本の社会はそれを裏書きするばかり。せめて新聞メディアにしっかりしてくれ、といいたくなります。(終り)

2014-01-27 16:39:17

追記(1月28日)

加藤典洋 @ten_kato

「プルトニウム返還要求の意味」補遺1:先の連続ツィートは意外に多くの方からの反響を得ました。一点補足します。連続12ツイートです。私のツィートを「アメリカが日本からプルトニウムの回収を急いでいる」と受けとった人が、それはなぜかと問うたのに対し、内閣府原子力委員会委員長代理の

2014-01-28 17:38:54
加藤典洋 @ten_kato

プル補遺2 鈴木達冶郎氏が答えられています。「以前より米国が世界で進めている『核脅威削減イニシャティブ』の一環で、兵器転用可能な核物質の削減、利用最小化を目的としています。今回急に出てきた話ではありません。」と。また、これで核燃サイクルができなくなるのではと影響を問う質問を念頭に

2014-01-28 17:39:16
加藤典洋 @ten_kato

プル補遺3 「今回は高速炉の研究開発に使われるPuで、再処理とは直接関係がありません。既にかなりの年月がたち、所期の目的も達したもので、施設の利用計画の変更や代替燃料があれば、返還に同意することができます。核燃サイクルを無理と判断したのではありません」と。

2014-01-28 17:39:34
加藤典洋 @ten_kato

プル補遺4 これは鈴木さんがおっしゃる通りだと思います。鈴木さんはほかにも英文のツイートでNTI: Global Security Newswireの記事へのアクセスもつけています。 http://t.co/lISbUnDS1P

2014-01-28 17:39:47
加藤典洋 @ten_kato

プル補遺5 タイトルはJapan yields to U.S. on Demand for Plutonium〔日本、米プルトニウム返還要求にとうとう譲歩〕。先のツィートではこうした前段を省略したため、誤解が生まれた可能性があるので、鈴木さんに助けられ、それを補えば、

2014-01-28 17:40:08
加藤典洋 @ten_kato

プル補遺6 より正確な背景は以下のようになります。曰く、2010年前後よりアメリカのオバマ政権が「核脅威削減イニシャティブ」の一環で、諸外国への働きかけとともに日本にもこうした返還の働きかけを行ってきた。今年3月にオランダで開催予定の「核セキュリティサミット」までに合意をとりつけ

2014-01-28 17:40:28
加藤典洋 @ten_kato

プル補遺7 るべく交渉してきたが、それにこれまで返還を渋ってきた日本側がとうとう合意するところまできた。それが今回明らかになったのであると。これを見ると私が述べた安倍政権の暴走への警告という意味はないかのようです。でもやはり一つの「警告」になっているのではないか。以下がその理由…

2014-01-28 17:41:21