オイランドロイド・アンド・アンドロイド #6
そして、そのスキャンダルを公開するまでもなく、このブルシット法案は通らなかった。イッキ・ウチコワシによる煽動事件という想定外のXファクターが働き、暗黒メガコーポ各社の間で、何らかのパワーゲームが発生したのだろう。 92
2014-02-22 01:27:15では自分が視た光景は何だったのか、とユンコは問うた。夢か、あるいは一時的にIRCコトダマ空間認識能力が開かれ、ピグマリオンAIの自動的な挙動をそのように知覚したのか……。ナンシーにも解らない。だがドサンコでの一件でも明らかになったように、一時的な能力覚醒は起こりうる。 93
2014-02-22 01:34:05最終的にナンシーは、かの謎めいたピグマリオン・コシモト兄弟カンパニー社の陰謀を疑った。もし彼らがモーターカワイイを誘き寄せ、ネコネコカワイイと直結させるためのお膳立てを整えたとしたら?しかし何のために?スズキ・マトリックスのデータを吸収するために?……回りくどく非合理的だ。 94
2014-02-22 01:40:43…「ピボ」サイバーボーイが言い、カクテルを置いていった。「……で、そう、要するに何を言いたかったかっていうと、次のメンテの時は、少し髪の色を変えてみようかなって……」ユンコはまだ取り留めの無い話を続けている。「スタイルを変えたくないって、ずっと言ってたのに」ナンシーが驚く。 95
2014-02-22 01:48:19「もちろん、どんなに不利でもスタイルは変えない。ただ、ちょっと色を変えるだけ」復活当初ユンコは、自らの形が変わる事を極度に恐れた。「ほら、中学の頃、髪型を変えるのに失敗して、ダサくなって、死にそうになってた。ええと、つまり、自分じゃなくなった、って感じ」「ワカル、ワカル」 96
2014-02-22 01:57:26「……ネコチャンに直結した時、どんな姿だったんだっけ?」ナンシーは聞いた。「この形。服はいつもので、眉まで、完全に、同じ」「自我が強固になったんじゃないかしら」「タフになったって事?」「ま、そうね。色んな人と接すると、成長するものよ。ほら、あれって……」ナンシーは指差した。 97
2014-02-22 02:11:37「あそこ、フジサン・スライダーの所に居る二人組って、もしかして、映画俳優の……」ナンシーはティアドロップ型サングラスを外した。「セレブ!ファック、ノー!絶対、嫌な奴らだから」ユンコは顔を振って大袈裟な表情を作った。「……まあ、セレブとかと実際に話した事は、無いけど」 98
2014-02-22 02:17:57「ハッカーになりたいなら、何事も経験よ。楽しめるなら、なお良し」ナンシーが言った。「まだハッカーになるって決めてない」ユンコが苦虫を噛み潰したような顔でサイバネアイを回転させ、二人組をズーム。片方は銀髪のナイスミドル、首筋の端子もセクシー。マイコ回路が回転し、体温が上がる。 99
2014-02-22 02:23:35「そうね、ファック野郎だったら蹴り飛ばせばいい」ユンコが立ち上がった。ナンシーがヒュウと口笛を吹き、弟子と並んで勇ましく歩いた。「物理肉体は論理肉体の揺り籠、私の自我は誰にも傷つけられない」「私はこの体と生き方に誇りを持ってる、形にこだわる」「違いに敬意を払うわ」「私も」 100
2014-02-22 02:39:16