ア・ニンジャ・アンド・ア・ドッグ #2

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

同刻、マウント・ジモト山頂。カンタロウ・パワーズ社の廃ジェネレータ施設内に巧妙に隠された、ヨロシサン製薬の秘密バイオ研究所にて……! 22

2014-03-09 22:06:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「キーッ!キキーッ!」ニンジャ装束を着た大型モンキーが癇癪を起こし、机の上で小回転跳躍してから、しなやかなカラテフックで研究員を殴りつけた。「グワーッ!」研究員は鼻血を吹き出し仰け反る。「「「キキーッ!」」」飼育檻のモンキー達が網を鳴らして歓声を上げる。何たる倒錯的空間か。 23

2014-03-09 22:09:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「キキーッ!」この恐るべきニンジャの名はマンモンキー。元はこの施設に持ち込まれ、非道実験により人間並の知能を得たモンキーである。だが廃ジェネレータでのテスト中に彼はバイオプールに落下。その時偶然ニンジャソウルが憑依した。彼は反逆を起こし、カラテで全てを支配下に置いたのだ。 24 

2014-03-09 22:19:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「もうやめよう、こんな事は……!」研究員は懇願した。「キキーッ!」マンモンキーは自らの左腕に装着したウェアラブルUNIXを流暢にタイプし、その画面を研究員に見せつけた。『私の目的は人類の支配です』電子マイコ音声が文章を無機質に読み上げる。「何てことだ」研究員は顔を覆った。 25 

2014-03-09 22:26:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

本来は即刻本社に連絡し、処理班の派遣を要請すべきであった。だが「いかなニンジャとはいえ、所詮はモンキー。騙し、罠にかけ、殺処分できるかもしれない。そうすれば事件を隠蔽でき、懲戒を受けずにすむ」……研究員たちのモンキーを見くびる態度、および責任逃れの連鎖が、悲劇を生んだのだ。 26

2014-03-09 22:39:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「君は人類を罰し、モンキーの理想郷を築こうと……?」「キーッ!」マンモンキーは目を剥き、再び殴りつけた。「グワーッ!」「「「キキーッ!」」」飼育檻のケロイドモンキーたちが歓声を上げる。マンモンキーはUNIXをタイプした。『他のモンキーも支配しやすいように愚かなままにします』 27

2014-03-09 22:44:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何という狡猾さだ……」『人類は愚かで無責任です。よって殴りつけて支配します』ブガーブガーブガー!突如、室内のマザーUNIXがイエローアラート警報を鳴らす。「キーッ!?」マンモンキーと研究員は、監視カメラモニタの映像を見た。施設のゲート前に、報道特派員らしき男が立っている。 28

2014-03-09 22:57:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『あれは何だ?』マンモンキーは研究員の髪を乱暴に掴み、モニタを見せつけた。「カ、カメラを持っています。撮影クルーか何かでしょう」『怪しいので殺せ。むごたらしく』「わ、解りました。大丈夫です。この施設の偽装と防衛は完璧です。万一侵入した場合、クローンヤクザが直ちに始末します」 29

2014-03-09 23:06:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「キーッ!」マンモンキーは承認を示すように研究員の髪を離すと、革張りのチェアに座り葉巻を吹かした。そして空腹を覚え、壁のボタンを押す。程なくして装甲ドアが開き、バイオインゴットを乗せた台車を押して、白衣の男たちがやってくる。他の研究員たちだろうか? 30

2014-03-09 23:18:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

否……彼らは人間ではなかった。明滅する室内灯が、彼らのおぞましき頭部を照らす!その頭は、禁断のバイオ手術によってモンキーに置換されていた。これはマンモンキーの発案と禁断のバイオ手術によって作られた忠実なる下僕にして醜悪なる人類のカリカチュア、自我無きモンキーマンたちである。 31

2014-03-09 23:24:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

モンキーマン軍団の中に一人、背の曲がった老人の肉体を持つ者がいた。そのモンキーマンは愛玩動物めいた首輪と紐をつけている。彼はバイオインゴットを恭しくマンモンキーに捧げようとし、手前で躓いて倒れた。「キキーッ!」マンモンキーは苛立ち、そのモンキーマンの背中で葉巻の火を消す。 32

2014-03-09 23:34:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「「「キキーッ!」」」天井の狭い通気口から、雨に濡れたケロイドモンキーたちが飛び込んできた。彼らは野蛮な吠え声でマンモンキーに何かを報告する。マンモンキーは椅子に座っていた研究員の肩に腕を回し、にたりと笑った。『逃げ出したヒロベ研究員はな、こいつらに突き落とされて死んだぞ』 33

2014-03-09 23:42:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヒロベはモンキーマンにされる予定だったが、直前で施設から脱走した。だが彼も結局は、監視モンキーから逃げ切る事はできなかったのだ。「アイエエエ……」研究員は顔を覆って恐怖した。実際、彼の正気はとうの昔に失われていると言っても良かろう。モンキーマン手術を手助けしたのは彼なのだ。 34

2014-03-09 23:53:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ブガーブガーブガー!マザーUNIXがレッドアラート警報!四つの監視モニタにクローンヤクザの仰向け死体!五個目の監視モニタには、撮影を続けながら悠々と歩む男の人影!一体何が起こったのか!?「キキーッ!?」マンモンキーは怒り狂い、研究員の胸ぐらを掴んだ!「こ……こんなバカな!」 35

2014-03-10 00:04:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『何か小細工したか?ヨロシサン製薬から何か呼んだか?』マンモンキーは研究員の首を締め上げる。「ゲホッ!ゲホーッ!ち、違います!していません!それに、まだ大丈夫です!奴はまだ廃ジェネレータ施設内!研究所との連結部分は隠蔽されており、ここから電子ロックを解除しない限り絶対に…」 36

2014-03-10 00:11:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「隔壁前に来た」カメラを構えたその男は、無線IRCを送った。「そのまま進んで。ヨロシサン製薬の施設が隠されているわ」女ハッカーからノイズ混じりの返信。ガゴンプシュー。錆び果てた分厚い隔壁が、いとも簡単に開く。「……真新しい回廊が、我々の前に姿を現した」モリタ特派員は進んだ。 37

2014-03-10 00:20:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ハ……ハッキングです!ハッキングを受けています!」研究員は叫んだ。マウスが言う事を効かず、キータイプも受け付けない。代わりにUNIXコンソール画面には「攻撃下な」の赤文字が明滅する!対抗ハッキングを行うべく、研究員がキータイプを開始した途端、モニタは激しい光を放ち、爆発! 38

2014-03-10 00:25:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「キキーッ!」責任の所在を問うべく、マンモンキーは監視モンキーたちを疑い、問いつめ、殴り殺した。「キーッ!」「キキーッ!」「キキキーッ!」監視モンキーたちはナンシーを発見していたが、その報告を怠っていたのだ。この残忍な光景を見て、飼育檻の中のモンキーたちは恐怖におののいた。 39

2014-03-10 00:33:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

モリタ特派員はテレビカメラを構えたまま研究室内を進み、手術室や、モンキー飼育室や、プレゼンルームを撮影した。暗いプレゼンルーム内の映写機を作動させると、「モンキーに知性を与え安価な労働力」ヨロシサン研究員たちが本社へのプロジェクト報告に使ったと思しき映像が壁に映し出された。 40

2014-03-10 00:37:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「この愛らしく従順な小さいモンキーたちに知性を与え、人間では入り込めない場所での作業も可能にします」映像の中では、白衣の男がヘッドギアを付けたモンキーに哺乳瓶を与えている。「電磁波や磁気嵐に弱いロボットには不可能な作業にも安心して従事。例えばジェネレータ施設などに最適です」 41

2014-03-10 00:42:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「モンキーなので、事故で死んでも問題ないです。繁殖力も強く、人間やクローンヤクザより安価に生産できます」キーボードを叩く一匹のモンキーと、それを撫でる研究員の映像。無辜なる市民が見れば即座に失禁するほどのバイオ計画だ。だが強靭な精神力を持つモリタ特派員はそれを撮影し続けた。 42

2014-03-10 00:51:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ザーザザザ……映写機の映像が乱れる。「ハァーッ、ハァーッ、ハァーッ……何て事だ……何て事が起こってしまったんだ……」それまでの清潔で欺瞞的な映像は終わり、突如、血みどろのヨロシサン研究員の顔がアップで映し出された。「……タケシです、優等モンキーのタケシが……反逆を起こし…」 43

2014-03-10 00:55:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……バイオ脳細胞の移植により、UNIXで人間と意思疎通が可能なほど高い知能を得……」映像が乱れる。「事故から奇跡的に回復し……」背後から歩み寄るモンキーマンたちの姿に血みどろの研究員は気づかない。「……邪悪な知性を隠していた。インターネットで世界を知り……アイエエエエ!」 44

2014-03-10 01:05:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイエエエエ!」映像の中の研究員は、両脇をモンキーマンに抱えられながらも、なお叫ぶ。「だが、そんなはずはないのです!アニマルへのニンジャソウル憑依現象など……前例が!」「キキーッ!」唐突に、カメラを覗き込むマンモンキーの顔が大写しになり、映写機の映像プログラムは終わった。 45

2014-03-10 01:11:56