#完全ノープラン艦これ与太話 【エンカウンター・ウィズ・サブピーシーズ・オブ・キメラ・ツー】　#3～#4　＋α

春魔解丼 @vespiking

ＳＨＡＡＡＡＡ！！！再び水を裂く泡の音！雷撃だ！山城は船体に鞭打ち回避しようとするが、舵が動かぬ！「アア、アアア……」「アブナイッ！」ＢＯＯＭ！水柱が上がる！山城の顔にびしゃびしゃと水が跳ねた。魚雷が直撃前に爆発したのだ。 #KZNPLN

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ＳＨＡＡＡＡ！！！再び雷撃！だが、審判めいた剛雷は山城へと辿り着くこと叶わず、次々爆発！爆発！暴発か？否！「ブルズアイ！」……魚雷である！超高速でこちらへ向かう雷霆の嵐を、正確無比な魚雷エイミングで相殺しているのだ！ #KZNPLN

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魚雷はなおも相殺を続ける……続ける！雷霆神のごとき熾烈な猛攻撃に対し、その１発１発を撃墜する魚雷連続攻撃！それを可能にする魚雷発射技術！このような芸当ができる者など、この鎮守府には１隻しかおらぬ！白い軍服が、月明かりに照らされた。「……北上！」「山城！しっかり！」 #KZNPLN

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北上はカメラと合体した大仰なソナー装置を抱え、両肩から吊り下げた大量の魚雷管から次々と魚雷を放つ！恐るべき精度！「メロンから借りたんだ。ついでにデータも取ってくれって言われてね」ＢＯＯＭＭ！ついに北上の魚雷が、審判の雷霆を上回った！「グワーッ！」霧の中より悲鳴！ #KZNPLN

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「さあ、逃げよう！立てる？」「あ、ありがとう……」山城はふらつく足をどうにか立たせ、北上に寄りかかって西へと走る。「待て……グ、グワーッ！」次いで悲鳴！霧中の影が空気の層にぶつかり、こちらへ向かってこない！「さーて羅針盤、まわすよーっ！」巨大羅針盤が北を向く！ #KZNPLN

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羅針盤の上で、栗めいた髪型の妖精が仁王立ちしている。羅針盤四天王クリタ！「クリタさん！ありがとう！」「いいんだ。先日は色々あったが、私も貴艦も帝国の軍人。我らの敵は同じ！イヤーッ！」クリタは羅針盤をテクニカル操作し、周囲の磁気嵐を調節！防壁を張り、逃げ道をつくる！ #KZNPLN

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「羅針盤……オノレ、忌々しき帝国の犬！航空主兵論の走狗め！」CVスレイヤーはジゴクめいた声で叫ぶ！閃光が走る！ＧＧＧＧＯＯＯＯＭＭ！！！次いで爆音！「グワーッ！」「クリタさんっ！」「私にかまわず行け！私はいつでも離脱できる！貴艦らが戦線離脱さえすればな！」#KZNPLN

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北上と山城は西へ走る！山城は魚雷のダメージこそ大きいが、２撃目の謎の閃光攻撃によるダメージは殆ど残っていなかった。「一瞬だけ船体の自由を奪う攻撃のようね……あの命中精度を考えても、おそらくは、対航空機用の攻撃……艦相手には効かないみたい」「主力は、魚雷か……」 #KZNPLN

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羅針盤ジャイロを主力とするクリタでは、恐らくCVスレイヤーを屠る事は叶わぬだろう。今は離脱だ。CVスレイヤーと名乗る敵は、確実に存在する。多少なりカメラに映像は記録した。これを夕張に渡し、工廠に解析を任せる。対策を立て、それからだ。 #KZNPLN

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「さっすが青葉のカメラだわ。工廠のボロカメラとは画質が違うわね」「……解析、オン……」北上の持ち帰った青葉のカメラ（無断でソナーと合体させた）から記録映像を抽出し、ＵＮＩＸで映像解析を開始する夕張と弥生。その後ろで、熊野は青い顔をしていた。 #KZNPLN

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山城は航空戦艦である。航空戦艦がCVスレイヤーのターゲットであるならば、航空巡洋艦もまた然り。否、水上機を広義の航空機と定義するのならば、『航空機』を全く運用しない艦艇など、駆逐艦か海大型潜水艦くらいのものだ。誰もがCVスレイヤーに狩られる立場にある。 #KZNPLN

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「行き過ぎた航空主兵論……わたくし達艦艇は、取り返しのつかない過ちをおかしているのかもしれない……」熊野が迷信深く呟いた。掲示板に張られた『やめよう特殊攻撃』『甲標的は安全です』『ボーキサイト節約』『対空これが大事』といった欺瞞的ポスターが、嫌でも目に入る。 #KZNPLN

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○（おしらせ： #完全ノープラン艦これ与太話 に感想用タグウーとかができました。 #KZNPLN7J タグになんかツイットニングされると作者が泣いて喜ぶので、とてもよろしくおねがいします）○ #KZNPLN

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熊野は欺瞞的ポスターから目を背け、新調した瑞雲に視線を落とす。晴嵐ほどではないが、強力な対潜・対艦爆撃能力をもった優秀な水上機だ。こと潜水艦との交戦時においては、これの有無で天地の差が生じる。自分もまた、航空機に依存する艦艇の1隻なのだ。 #KZNPLN

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艦艇は、否……人類は、どこで道を踏み外したのか。かの大国相手に奇襲をかけ、快勝せしめた真珠湾攻撃……或いは、非理法権天めいて万物を縛る重力から脱した、ライト兄弟の有人飛行……アポロ計画……バベルの塔。海と大地を蔑ろにし、天を目指した人類への報いだというのか。 #KZNPLN

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かつて天へと届く巨大な艦橋を建造した航空戦艦は、神の怒りに触れ、神は軍内にハバツ闘争をつくった。ハバツ争いは無用な計画変更を生み、右往左往の結果、前後にうねるアンバランスな艦橋となった……。古事記に記された航空戦艦の伝説だ。 #KZNPLN

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「気にする事はない」突然声をかけられ、熊野はハッと我に返る。懐かしい顔がそこにあった。「日向、教官……」「時代は航空戦艦だ。瑞雲を信じろ。タフになれ」「ですが、我々の行き過ぎた航空主兵論は、こうして破滅を……」「航空巡洋艦は過去を振り返らない。瑞雲はタフだからだ」 #KZNPLN

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「君に、これを託そう」日向は熊野の飛行甲板にそっと手をやり、年季の入った数機の瑞雲を設置した。「教官、これは……」「瑞雲だ。だが、ただの瑞雲じゃない。第六三四海軍航空隊の瑞雲。人呼んで瑞雲六三四空だ」「瑞雲、六三四空……」「そうだ。世界一タフな勇士達の、愛機だ」 #KZNPLN

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「良いのですか？こんな大切な瑞雲を……」「かれらは、どれだけ戦局が悪化しようと、自らの命を弾とする道を選ばなかった。たとえ破滅が待っていようと、最後まで生きて運命に抗う事を選んだ。海の男だ。海の男は強い。瑞雲と同じだ。お前もタフになれ。瑞雲のように」「教官……」 #KZNPLN

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新調した瑞雲と、師より託された瑞雲六三四空の上で、装備妖精が一斉に着帽敬礼した。熊野の心から迷いが消えた。日向は満足げな顔で、無言のまま去っていく。熊野は無言の脱帽敬礼で師の背を見送り、そして夕張達のほうへと歩む。ちょうど、解析が完了していた。 #KZNPLN

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「オオウ……これは……」静止した映像に映ったCVスレイヤーの影に、ワイヤフレームで輪郭が付与される。「これ、艦娘の挙動じゃないね。魚雷射出時、腕の形が変形してる。艦娘の艦霊は船体内部にあるから、何かしらの形で船体がオープンしないと、こういう動きにはならない」 #KZNPLN

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「そして、これだ」画像が切り替わる。「これが、晴嵐を撃墜した閃光の正体。当時の気候データと照らし合わせるに、せいぜい10万ボルト、ってとこかな。落雷のほぼ下位互換。誘導性は高そうだけど、艦娘を殺せる電圧じゃない」画像には、強烈な稲光が映っていた。 #KZNPLN