ヒア・カムズ・ザ・サン #5

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
1
前へ 1 ・・ 3 4
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」「アバーッ!」レッドハッグは二階建て家屋の屋根から飛び降り、警戒するクローンヤクザの脳天を踏み抜いて殺すと、もう一人を振り向きざまの斬撃で殺害。身を沈め、しめやかに駆けると、空白地を隔てる金網を前にした。「風が止んだね」彼女はIRCインカムに呟いた。 70

2014-03-22 22:16:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『ようやくご入場』ナンシーの通信がすぐに返った。それまで遠景の中で不穏なパルスを散らしていた物体の存在はなく、ただ、だだっ広い闇と、その奥に光る二つの塔と、天を衝くレーザーの光だけが見えた。『でも急いで。システムダウンはじきに復旧する。そして、再度ダウンさせる事はできない』71

2014-03-22 22:22:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何分ある?」『……よしなに』「ヒッ、ヒ、了解」レッドハッグは笑った。カタナを無雑作に振るうと金網が歪な四角に切り裂かれ、人ひとり通れる口を開けた。KABOOOM……くぐもった爆発音が遠くに聞こえた。彼女が後方を振り返ると、重苦しい爆発煙が天に昇るところだった。「やってるね」72

2014-03-22 22:26:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……ルルルル……ルルルルル。レッドハッグの耳は空気の唸りの接近を感じ取る。そしてニンジャ第六感は致命的危険を。彼女はやや首を傾げるようにした。そのコンマ2秒後、咥えタバコが飛来物の衝撃余波を受けて粉々に散り砕け、頬に赤い筋が刻まれた。KBAM!そして着弾音が聴こえた。 73

2014-03-22 22:30:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼女は走り出していた。蹴った地面が爆発した。KBAM!地雷?否。飛来物がコンマ2秒前まで彼女のアキレス腱があった空間を掠め、そののち地面を抉り取ったのだ。レッドハッグは全速力で走りだす。ルルル……再び空気の唸りが接近。ルルルル!彼女は急角度で横に跳んだ。だが!「グワーッ!」74

2014-03-22 22:34:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

横跳びに跳んだレッドハッグは空中でバランスを崩し、ゴロゴロと地面を転がった。……ルルルル!空気の唸りが接近!うつ伏せから仰向けに!KBAM!地面が爆ぜる!仰向けからうつ伏せに!KBAM!地面が爆ぜる!KBAM!KBAM!「アアアア畜生!」彼女は毒づき、地を蹴って跳ね起きる!75

2014-03-22 22:38:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ナムサン……彼女の右太腿にはえぐり取られたような傷が生じ、血が滲み出していた。決して小さな傷ではない。彼女のステップは不規則軌道を描き、時には後退すら織り交ぜて、ほんの20フィート程度しか離れていない土管の陰へ飛び込んだ。KBAM!土管が抉り取られ、彼女の額を破片で傷つけた。76

2014-03-22 22:40:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ハァーッ……ハァーッ……」レッドハッグは土管の陰で身を縮め、太腿にハンカチーフを堅く縛りつけて止血した。「シャレになってない……アタシの今の居場所わかるか?二週間ぐらいありゃ、管制塔に辿り着けるだろうよ!」『テクノロジーではなさそうね』「ンなこたァ、やりあえばわかる」77

2014-03-22 22:45:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

レッドハッグは呟き、タバコを点火しようとして、思い留まった。闇夜にわざわざ照準をくれてやる事はない。ただでさえこの正確さだ。「スリケンだね。多分管制塔から……」彼女は土管から微かに頭を出した。すぐに引っ込めた。KBAM!土管が削られた。「ああ、管制塔から投げて来やがる」 78

2014-03-22 22:48:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『DAMN……プラズマ・カカシ無しで、護りきるつもりかしら』「そういう事だね。スシのデリバリーを頼んでいいか」『配達出来る人がいないわ』「言うじゃない」レッドハッグは目を閉じ、肺の空気を全て吐き出すと、思い切り吸い込んだ。そして、「イヤーッ!」側転で飛び出した。ルルルルル!79

2014-03-22 22:52:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」レッドハッグはさらにバック転を繰り出し、飛来したスナイパースリケンを回避!そしてさらにバック転!「イヤーッ!」バック転!「イヤーッ!」バック転!「イヤーッ!」……ルルルル……移動先を読んだ更なるスリケンが飛来!アブナイ!「イヤーッ!」 80

2014-03-22 22:57:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ギュイイイ!闇夜に火花が爆ぜた。レッドハッグはバック転の最中、空中上下逆さの状態でカタナを振り抜いて、スナイパースリケンを真っ二つに叩き斬ったのだ。彼女はそのまま背中から着地、ゴロゴロと転がると、活動停止している不気味な電子カカシの陰へ走りこんだ。 81

2014-03-22 22:58:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ハァーッ……ハァーッ」レッドハッグは電子カカシの陰から首を巡らし、管制塔の冷たい光を見る。「グッドニュース。2週間の到着時間を、予定より15分ぐらい縮めることに成功」『なにか……手段を考える』「そうね」彼女は上の空で呟いた。82

2014-03-22 23:02:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

何か打開策がほしい。スリケンを斬る?今のアクロバットを二度三度と繰り返すのは至難だ。ましてあの管制塔まで行くとなると、百度以上繰り返すハメに。「管制塔じゃなきゃダメかい」『そうね。最もクリティカルなシステムがあそこに隔離されている。さっき渡したウイルスを直接撃ち込まないと』83

2014-03-22 23:07:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そうすりゃ……アー……管制塔やら、ロケット発射台やら、燃料の毒タンクやらが派手に吹っ飛んで、クローンヤクザどもの頭が爆発して、一件落着ってわけ。胸躍るね」『化合物タンクもヤクザも爆発しないけど、概ね半分ぐらいは合ってるから、それでいいわ』「ロケット……ふざけやがって」84

2014-03-22 23:12:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

あらためて彼女は管制塔を見る。塔の上には薄緑の光を放つ影が浮いている。機影か。不穏だ。そしてやや離れた発射台……目を細めて見れば、そのロケットの機体には大きく「将来性」とショドーされているのが確認できる。「アー。穴でも掘るかね」『待って。もう少し良い選択肢ができた』「あン?」85

2014-03-22 23:18:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『見える?』「だから何が」『聴こえる?』ゴゴゴゴ!レッドハッグは後方を振り返り、目を見開いた。彼女を目掛けて蛇行しながら走ってくる鋼鉄の塊有り……トラックだ!「あン?何だ!アンタの手配?ちょっと……」ギャギャギャギャギャ!タイヤが唸る!トラックが突っ込んでくる!ナムサン!86

2014-03-22 23:20:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」車内で発せられたカラテ・シャウトをレッドハッグは聴いた。助手席のドアが弾かれるように開いた。運転者が蹴り開けたか。運転者は窓から顔を出し、「乗れ!」と叫んだ。レッドハッグは手段の評価を先送りし、すぐさま動いた。「イヤーッ!」跳躍する彼女にトラックがドリフト接近!87

2014-03-22 23:24:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

レッドハッグは手を伸ばす!車内から赤黒の腕が伸び、彼女の手を掴んだ。彼女は一瞬、無重力を感じた。「イヤーッ!」レッドハッグを助手席へ引きずり込むと、ニンジャスレイヤーは再びハンドルを掴み、アクセルを踏み込んだ。KRAASH!フロントガラスを突き破り、スリケンが顔の横を掠める!88

2014-03-22 23:28:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ドーモ。奇遇だねェ。ちょうど足が欲しかったとこさ」レッドハッグは髪をかきあげ、苦笑した。「どこ行きの便だい」ニンジャスレイヤーはレッドハッグを見た。そして頷いた。「行き先は地獄だ」「じゃ、とっとと行こうじゃないか」 89

2014-03-22 23:31:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【ヒア・カムズ・ザ・サン】#5 終わり。#6 に続く

2014-03-22 23:32:11
前へ 1 ・・ 3 4